『なずなのねいろ』ナヲコ/コミックリュウ連載中
ナヲコ先生が描く、ちょっとビターな青春三味線コミック第2巻です。爽やかな表紙とポップな帯のコピーと裏腹に、なずなの過去が描かれている今巻はちょっぴり暗め。


なずなが三味線を弾いていることを姉である花梨をはじめ、誰にも言っていなかった理由の根っこの部分はなずなの生い立ちにまで遡ります。花梨となずなは腹違いの姉妹。ある日突然独りぼっちになり、音羽家に引き取られたなずな。父親との大切な記憶である三味線を音羽家で本格的に学ぶことになったなずなが、寂しさと辛さに耐えていたときに心の拠り所となっていたのが優しい花梨の存在でした。
ところが、なずなが奏でる三味線の音に父親との微かな記憶を重ねてしまった花梨は、なずなを傷つけてしまいます。
まさに魔が差した瞬間。幸い傷は大事には至らなかったものの、幼いなずなは花梨を責めるかわりに自らの三味線を封じて、心を閉ざしてしまいます。
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父親から離れて育った花梨が、父親と育ったなずなの面倒を見るにはまだ幼すぎたのでしょう。その葛藤を責めるのは酷かもしれません。しかし両親に棄てられたなずなから、唯一父親から残された”音色”すら奪ってしまうのはあまりにも残酷なことです。それを理解していても、花梨には償いすらできない。自分の音を止めることもできない。三味線を諦め、家族を手に入れることすら諦めようとしていたなずなの心を再び動かすことが出来たのは、第三者である眞でした。ただし、なずなの身体の成長と引き換えに…。


なずなが時間を止めてしまった一方で花梨は大人になっていく。でも”姉妹”の時間は動かない。なずなは知らないだけで、ほんとうは花梨はなずなが三味線を弾いていることを知っている。そんな大人のズルさも花梨は持っている。でもなずながそれを口に出さない以上は知っていても、きっと同じこと。
余談ですが花梨と眞のかつての関係を描く上で、いちばん生々しいなあと思ったのはお風呂のシーンでした。ベッドとかじゃなくてお風呂っていうのがえぐい感じがしてしまう。なずなが悩んでいる陰にも、知らないことがいっぱいある。そんな事実すらも痛々しく。


でもすれ違いと遠回りの時間を経て、ようやく動き出した時間。花梨にはつとめて明るく振舞うことと、待つことしか出来なかったけれど、たのもしくて、まっすぐで、せっかちな”仲間”が出来て動き出すことが出来たなずなはようやく花梨に本音を伝えることができました。…まだなずなが「三味線」と言うことすらできなかった幼い頃からだったのだから、もしかしたら花梨がなずなの口から「三味線」という言葉を聞くことすら初めてだったのかもしれません。
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止まってしまった家族を繋げる音色がもういちど鳴り始める。大きな壁を乗り越えたなずなの音色は、きっとこれまで以上に人の心に響き渡る。


2巻を読んで、どんどん面白くなっていっていることを確信しました。読んでない人が読み始めるならいまのうち!
ナヲコ先生の描く表情の動きはいいなあ、特に泣き顔がとても好きです。



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共鳴の段階 なずなのねいろ/ナヲコ