『嫁姑の拳』函岬誉/エレガンスイブ連載中
面白いです。本当に面白い作品です。既に秋田書店フリーク等、一部の人々には知られている作品ですが一般的な認知度はまだまだ低いと思われます。一言で言うと、秋田書店は婦人向け雑誌すら普通じゃなかった!その秋田書店公式サイトのトップにずっと表紙画像があるくらいなのでかなりプッシュされていると思われます。秋田はもうちょっとWEBでの販促を頑張ってもいいんじゃないかとは思いますがそれはまた別の話ということで…。
はい、『嫁姑の拳』の話です。『Ⅰ』は今年の4月に発売、10月に『Ⅱ』が発刊されました。タイトルだけでただならぬ違和感を感じられた方、正解です。誤解を恐れずに言いますがこの漫画はおかしいです。色々と。だけどそこがいい、それがいい。
一見普通の家庭、羽場さん家のお嫁さん・風音さんとお姑さんの梨々依さん。嫁姑関係の2人の日頃の衝突のきっかけ自体は、たまご焼きの作り方だとか古いせっけんをくっつけるなとかもったいないとか、実にありふれた些細な出来事ばかり。しかしその衝突の仕方がちょっとばかり常軌を逸しているのです。風音さんはマーシャルアーツを始めとした様々な格闘技の資格を持つジムのインストラクター。お姑さんは合気道の師範。互いに頑固で譲れない2人は、今日も熱い拳を交し合います…。
どうしてこうなったとしか言いようがない設定です。すさまじい。女性向けの漫画での女性同士の闘い、とりわけ嫁と姑の確執というとドロドロとしたものに描かれがちな印象がありますが、『嫁姑の拳』は正反対の作品。風音さんとお姑さんの言いたいことをズバッと言って正面からぶつかる姿勢はありえないし笑っちゃうけどどこか清々しさがあります。また、いざというときはお互いを心配し合いピンチの時には絶妙のコンビネーションを見せる嫁姑関係は実は非常に良好といえます。腹の底から本音を言い合えているおかげですね。本音以上に手が出て足が出ているのは問題ではありますがw温厚ながらしっかり者の夫の武さんと可愛くてとても良い子の一人娘爽ちゃんの4人家族の光景は心和みます。
また、ありえないのは羽場さん宅だけではありません。
シングルマザーで、いくつもの仕事を掛け持ちしながら子育てをする爽ちゃんの幼稚園のクラスメイト・有村良くんのママ
お姑さんのライバル・生涯バレエ一筋の早乙女先生
そして嫁姑関係に悩み羽場家に相談に来た今鹿さん家のお姑さん。
・・・なんだ・・・この町は・・・。どうやったら次から次へとこんな発想が出てくるんでしょうか。それぞれのエピソードは心温まるお話も多いはずなのに、涙していいのか笑っていいのかどうにもわからなくなってきます。
表現・見せ方も豪快で、見開きの使い方には毎回目を見張るものがあります。
下着ドロのおっさんに蹴りを入れる場面を見開き3連続(!!)で描くある種の潔さ、さらに顔芸の類に惜しみなく見開きを使う大胆さが読み手を魅了して止みません。
風音さんもお姑さんも真っ直ぐな性格で、よくトラブルに巻き込まれはしますが(むしろ自分達でトラブルを巻き起こしてもいますが)精神が曲がった奴らには容赦なくその拳で鉄槌を下します。少年誌から青年誌に至るまで男性コミック誌には年齢層やジャンル問わずに存在する系統だと思いますし、女性向けでも少女誌であれば多少は存在すると思いますが、掲載誌の対象となる読者層はこういうわかりやすく「悪を倒す」タイプの漫画から本来いちばん遠い層なのではないでしょうか。でも、女性誌に大笑いできたり、読んで逆にスッキリするくらい無茶苦茶な漫画があったっておかしくない。『嫁姑の拳』の「ありえね~!」は今後の女性向けコミック誌の可能性を示したと言っても過言ではないと思います。そりゃそうですよね、女性だって少年誌や青年誌の漫画を読む人は大勢いるんだもの。こういう要素が女性向け雑誌にあったっておかしくないはずです。
『Ⅱ』では慣れて筆がノッてきたのか、益々面白さに磨きがかかっていました。このままの姿勢でどんどんやっていただきたいです。
また、『Ⅱ』発売を記念してCOMIC ZINではエレガンスイブ誌上で『花のズボラ飯』の作画を担当されているうさく…じゃなかった水沢悦子先生の応援イラストカードが配布されています!ZIN、GJすぎる。エレガンスイブの本来の読者層はコミック専門店とかイラストカードのオマケに縁がなさそうな気もしますが…よくやってくれたと思うよ、コレ。
しかしイラストカードに「爽ちゃんが深刻にかわいいです。どうしよう!!」って、うさ…水沢悦子先生、本性出しすぎじゃないですか、だいじょうぶですか。でも爽ちゃんが深刻に可愛いのは同意せざるを得ません。普通の可愛らしい女の子で彼女は別に格闘技などはやっていないはずなのですが、よく見るとパパよりも大盛りのごはんを食べている辺り将来は有望そうです。いやぁ、細かいところまで面白いよなぁ~。
(ZIN詳細はこちら↓)
http://www.comiczin.jp/info/item/2009/10/25_04.html
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