『かるた』竹下けんじろう/週刊少年チャンピオン連載
『釣り屋ナガレ』の前に竹下けんじろう先生が週チャンで連載されていた作品です。今でも時々チャンピオン本スレでも話題に上がり、まだ新刊で置かれている書店もたまに見かけるので気になっていました。実際読んでみたところとても面白いし、何故打ち切られてしまったんだろう…と。チャンピオンでそういうことは一度や二度ではないですが…(涙。
主人公の軽部太一は格闘ゲームの全国大会で優勝する腕の持ち主。ある日学校で不注意から女生徒に怪我を負わせてしまいます。怪我をした彼女…小野千歳は「かるた同好会」の唯一の部員で負った怪我により一ヵ月後の大会出場を断念せざるを得ない状況だと知り、責任をとると太一はかるた大会への代理出場を申し出ます。幼なじみの大江由利子と共にかるた同好会に入部した太一は始めは軽く出来るだろうという思いを抱いていましたが、かるたの奥深さに触れ次第に熱中していきます。
太一はいかにも格闘ゲーム好きなだけに、(周りにはダサいと言われつつ)自分なりの「必殺技」を編み出してかるたに挑みます。取り方としてはレギュレーションぎりぎりのもので実戦で使う際には問題があるものですが、「かるた」という題材を「少年漫画」として描くのにこの派手さと熱さは実に活きていると思います。
その一方で派手さに飲まれず堅実にかるたという競技の奥深さが描かれていて、竹下先生の力の入り具合を感じます。派手な要素も含みつつ、根底にあるのは「かるたって奥深い、面白い!」という想いであることが読み手に伝わってくるのです。こういう方向性は、少年漫画といっても週刊少年誌よりもコロコロ系に近いものを感じます。その熱さと楽しさはそのままに、その上の層に対応した主人公たちのキャラを配置しているといった印象です。
太一たち以外にも対立する相手も含めて多くのキャラが登場しています。それぞれのキャラクタに背景やかるたに対する想いを描き、強いキャラにもそれぞれどうしても負けたくないライバルや心の葛藤が在ることをしっかり描いてあるところも素晴らしいです。しかし連載が早期終了になってしまった為各キャラのエピソードが消化されきれていないのは非常に残念なところでもあります。2巻の間だと考えると、キャラが多すぎると感じられるかもしれません。
とはいえ例えば、2巻で登場する千歳の幼馴染み・高円寺沙紗(サーシャ) は試合の際男性相手に色仕掛けを使うようになり、そのせいで千歳と仲違いしていたというエピソードがあります。
サーシャにはそこに至るまでの「千歳さんに追い付きたい」という悩みがあり、それが武器になってしまうと気付いてしまったときに心に魔が忍び込んでしまった瞬間…といった過去まで描かれているのが、ただ単純に卑怯な手に染まっていったわけではないことを示していて竹下先生がキャラクタをとても大切に描いているということの実感にも繋がります。詳細なエピソードが描かれず終わってしまったキャラもいることが非常に残念です。
太一の性格は、多少不躾で失礼な部分もありますが「勝負」に熱い真っ直ぐな男。一見するとハーレム系の作品かと見まごうほど太一の周囲には美少女がたくさん登場しますが、実際は恋愛っ気が殆ど無いところが個人的には気持ちの良いところです。勿論、この後も連載が続いていけばそういった要素も色濃く描かれていたのかもしれませんが、この浮つきの無さが熱血バカな(メガネなのにね!/関係ないか)太一のキャラクタを表しているようで痛快なのです。でももしかしたら、恋愛要素があったほうが人気は出ていたのでしょうか…?今言っても、仕方のない事ですが…。
自分が新刊購入したのはつい最近ですが、1巻は4刷目、2巻は2刷目でした。ちゃんと再版もされているのに打ち切りに合うとは、チャンピオンは本当にシビアです…。『ナガレ』も大好きですが、読み終わり今では『かるた』のほうが好きかもしれないと思っています。ナガレが円満終了→かるた第2部、とかならないのかなあ…。とりあえず宮ッチ先生はわたしが嫁にいただいていきますね!
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