『それでも町は廻っている』石黒正数/月刊ヤングキングアワーズ連載中
前々から面白そうだなあとは思っていました。表紙買い候補のひとつでした。しかしこれという決め手やきっかけがないままズルズルと。そんな時に決め手でありきっかけでもある存在が向こうからやってきてくれたのです。二足歩行でニャーと言いながら。
毎週『木曜日のフルット』を読んでいてその面白さが身に沁みてきて、「これはこの人の描く他の漫画も面白くないわけないな!」という結論に至るまでは…やっぱり随分かかってしまった気はします。何が言いたいかというと、めちゃくちゃ面白くていままで読んでなかったことを反省しています。なんでもうちょっと早く手が出せなかったのかー!と。


主人公・嵐山歩鳥は商店街のメイド喫茶(後付け)「シーサイド」でバイトする高校生。世間一般で言うところのメイド喫茶とはちょっと…かなり違ったお店と商店街に見守られていく歩鳥たちのゆかいで時々不思議な日々。
1巻を読み始めて数話の段階ではそこまでの破壊力はないかな…?と思ってしまっていたのですが、4話で歩鳥が森秋先生からの問題を解き明かした辺りから一気に引き込まれました。2009112502130001
そんなミステリー好きの歩鳥らしい小粋な謎解き要素も面白さを手伝っていますが、毎回ちゃんとそれが入ってくるわけでもないところが適度に肩の力が抜けていてそれはそれで楽しい。


ミステリ要素やSFっぽい要素と様々なおもしろ要素を贅沢に取り入れてはいますが、基本的には「町」であり、そこに行き交う「人」が核となる部分。
非現実的な要素が漫画の面白味になることは当たり前といえば当たり前ですが、それと同時に日常レベルの偶然の産物が混在しているところが凄い。我々の生きる現実世界においても、日常の中に突如発生するプチ奇跡が予想だにしない笑いに発展することは少なからずあるわけで。その「たまたま、偶然、なんでこうなっちゃったの?」って感じがそのまま漫画になっているところ、そしてそれが非日常レベルのハプニングと同じ温度で描かれているところが凄いと思うのです。


トラブルや失敗や衝突…といったマイナスな出来事もありますし、これでもかってくらいのインパクトをお持ちの顔面のキャラもいます。けれども嫌な感じがしないのは、それら全てが善意と好意によって描かれているような印象を受けるからです。歩鳥や、まわりの個性的なキャラクタたちを、町すべてが抱擁しているかのような温かさ。なんて居心地が良いのだろう。


2巻に収録されているエピソード、そのタイトルもずばり「それでも町は廻っている」は歩鳥が(読んで字のごとく)天国に行ってしまうお話で、やはりここでも歩鳥はいつもの調子で天国の案内人とも仲良くなってユルユルと進行していくわけですが途中で一気に現実と悲しみを叩きつけてくる(当然、それも優しさと温かみをもって)展開には完全にやられた!と思いました。
2009112502130000
作品の最終回間際にでも入りそうなエピソードなのに、初期の段階でこんなにサラッと後味よく描かれてしまうとは。脱帽しっぱなしです。


片想いどうどうめぐりなところもツボなんですが、取りあえず2巻まで読んだところでは真田君を応援しています。なのでランデブーのお話は大好きです!幼なじみ主義者だし。でもみんなかわいらしいなあ。みんな応援したくなるなあ。端的に言うと会話のセンスも絵も何もかもスキです。どうして今まで…(エンドレス)。うぅ。
あとジョセフィーヌがかわゆすぎる。歩鳥の夢に出てきた二足立ちジョセフィーヌはフルットに出てきそうだなあ。