『弱虫ペダル』渡辺航/週刊少年チャンピオン連載中
2ヶ月連続刊行!「このマンガがすごい!」で10位にランクイン!と、話題性も事欠かず勢い十分な『弱虫ペダル』。もう9巻ですねえ。
8巻から引き続き1年前の回想から始まる9巻。王者に君臨しながらも弱さを露呈した福富と、レースには敗れながらも確固たる強さを見せ付けた金城。このときから、それぞれが1年後に目指すべき頂きは既に見えていた気がします。


それぞれの思惑を乗せ、いよいよインターハイの開幕。王者箱根学園を筆頭に全国津々浦々の猛者たちが集います。そこにはとうとう、今泉の倒すべき相手として名前だけは第一話から登場していた京都伏見高校の御堂筋の姿も。
あまりのインパクトに、チャンピオン本誌掲載時にも紹介記事を書いたのですが単行本で見返してもやっぱりスゴイ…。兎に角、今までのペダルの中ではひときわ異色の存在感です。巻島先輩なんかも独特の雰囲気を持っているわけですが御堂筋はビジュアル、言動、立ち振る舞い、全てが異色中の異色。
2009120902430000
寧ろ渡辺先生の作品でここまで”悪役”に徹したキャラを見たことがなかったので驚いています。その性格はそれこそまさに外道なわけですが、不気味さと妙な可笑しさのせいで腹立たしさはあまり感じないところが渡辺先生の手腕なのではないかと思います。ただでさえ個性的な面々が勢ぞろいな作品ではありますが、まったくとんでもないキャラが出て来たもんですよ、9巻目にして。まさにモンスター。
御堂筋は1年生にして京都伏見高を完全に仕切っており、キャラクターとしてのアクの強さだけでなく実力も確かなものだと伺えます。御堂筋に従うしかない京都伏見の2・3年生には常に重苦しい空気が付きまといます。もはや恐怖政治の世界。


―・・・そういう意味でも対照的なのが我らが総北高校です。
初めてのレース、インターハイの空気に完全に飲まれてアワアワする坂道ですが、そこにいるだけで落ち着ける総北メンバーの安心感。スタート直前に、全員で拳をぶつける場面があるのですよ。その瞬間、誰も目線を拳の位置には合わせていないんです。
2009120902430001
見なくてもわかるんですよね、全員の拳が合わさる場所が。この絶対の信頼感がたまらない。
そして今泉君・鳴子君との約束が坂道にさらなる勇気を与えます。仲間として、友達として深いところで繋がった絆。それこそかつての坂道が一番欲していたはずのものなのです。インターハイに今泉・鳴子コンビも一緒に行くと聞いたときの坂道母の「それは安心だね」という一言がとても好きです。自転車レース云々にはあまり興味が無さそうなお母さんですが、大切な友達が出来た息子の変化には気付いているのでしょうね。良いお母さんだと思います。
総北高校自転車競技部のメンバーは、未だロードレーサーに乗り始めて日が浅く、想定外の事態に発揮される力以外はまだ未熟である坂道をいっさい上からの目線では見ていません。かつて金城主将が「おまえが辛くなったらオレたちがいる オレたちが辛そうになったらおまえが全力で助けろ」と言ったように、一人一人の力を認めその集合でチームが成り立っているという考えが総北にはあります。この温かみすら感じる誇り高さが坂道の安心感にも繋がっているのではないかと思うのです。


その安心感も本格的にレースが始まってからは暫しなりを潜め、本気の闘争心のぶつかり合いが繰り広げられます。50kmもの平坦区間に飛び出したのは田所・鳴子のスプリンターコンビ。相手が仲間であろうが”スプリンター”として負けられないのは同じ。(文字通り)ぶつかり合いながらの激走、さらにその競争に名乗りをあげたのは…箱学の泉田!
彼がまた…なんといいますか…誰も予想しないようなキャラでした。びっくりしたよ…普通の人だと思っていたよ…。彼の武器は鍛え上げた筋肉。…こう書くと普通なんですが…このインパクトはもう、未読の方には読んでいただくしかないですね。「アブ アブ アブ!!腹筋(アブ)!!」「ボク自身が筋肉になるんですよ!!」とかもう名言しかない。単行本派の方はここで一気に御堂筋と泉田のダブルインパクトに襲われるわけですね。まったくうらやましい!


壮絶なインターハイの幕開け。まさに加速する一方の展開に目が離せません。
そして…北陸の疾風こと金沢三崎の柴田君の次回作にご期待ください。



過去エントリ

そして彼は覚醒する 弱虫ペダル 1巻/渡辺航 - 漫画脳
気弱な少年の決意 弱虫ペダル 2巻/渡辺航 - 漫画脳
純粋という名の速度 弱虫ペダル 3巻/渡辺航 - 漫画脳
その時誰もが惹かれることを止められなかった 弱虫ペダル 4巻 - 漫画脳
上へ上へと…登るしかないっショ 『弱虫ペダル』5巻 - 漫画脳
それぞれの想い、それぞれの絆 『弱虫ペダル』6巻 - 漫画脳
全身全霊、5人のゴールスプリント 『弱虫ペダル』7巻
漫画脳:繋ぐ力、支え合う力~ほのぼのもあるよ! 『弱虫ペダル』8巻(渡辺航)

『弱虫ペダル』・坂道から消えたのはオタク魂ではなくて