『森のテグー』施川ユウキ/ヤングチャンピオン連載中。
自伝的漫画『え!?絵が下手なのに漫画家に?』と同時発売。可愛らしいキャラと哲学的な問答が素晴らしい漫画です。
森に住むネコのテグーとその友達、そして親や大人たちが繰り広げる15コマ劇場(4コマ形態のコマ割で2ページ、1コマはタイトル)です。森にネコ?という時点でファンタジーな予感はしますが、他の森の住人たちも人間、パンダ…それからよくわからない生物などさまざま。こね世界観は教育テレビの人形劇に近いものを感じます。内容はよりビターですけれども。
施川先生の『サナギさん』は子供特有の発想力が溢れる作品でしたが、『テグー』はそういった子供らしさと大人の発想・大人の事情とで成り立つ社会の縮図のような作品になってします。子供たちが言う言葉は、大人の自分の目から見ると「今の自分には言えない」と思うようなことばかりで、そしてそんな”子供の発想”が描ける施川先生は本当にスゴいなと思うわけで。
テグーたちの子供らしさは、ただ無邪気なだけではなくて、”子供でいられる時間には限りがある”とどこか気付いている子供らしさ。それなりに大人のシビアな部分も見てしまっていて、自分たちもいつまでも子供ではいられないと気がついている。だけど大人の目線に合わせられるほどは成長していない…。そんなどこか儚さすら感じさせるかけがえのない時間、その空気がもう大人になってしまっている自分には余計に魅力的に映るのではないかと思います。
作中に「虹」というお話がありまして、そこでお母さんから「子供の頃虹の根元を探して森中走り回ったコトがあった」という話を聞き、それに”子供らしさ”を感じたテグーたちは自分達も虹の根元を探して走り出します。暫く走り回った後持ち前の子供らしさのみで突っ走れることに限界を感じますが、話し合いの末「こっからはでっち上げの子供らしさで行きます!」と再び走り始めるのです。このイキオイがとても好きで。
持ち前の”子供らしさ”には限度があるけれど、でっち上げることもできる。ここが大人との違いだと思うのです。そしてそれができる時期も限りのあるもの。だからこそこんなにも輝いているし、それに本人たちもどこか気がついてもいる。だからこそ、その子供らしさを大事にしているとも言える。その雰囲気がとっくにそこを通り過ぎてしまった身としてはすごくキラキラして見えるのかなと。
と、そんな思いは抜きにしてもテグーたちはかわいいです。テグーの脳内CVは渡辺菜生子さん(プーアル声)です…そこで現代怪奇絵巻の例のAA!
それと、チポママが雨の日にチポに言った言葉がとてもステキです。その作品「雨」や前述の「虹」も含む試し読みページもありますのでゼヒゼヒご覧頂きたいです。
森のテグー
http://blog.livedoor.jp/teguu/
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