『マギ』大高忍/週刊少年サンデー連載中
『すもももももも~地上最強のヨメ~』の完結後、サンデーに電撃移籍した大高忍先生の描く冒険物語『マギ』、待望の単行本が発売になりました。1・2巻同時発売ということで、かなりプッシュされているのではないかと思います。自分は新連載開始時に2回ほどサンデー本誌を買ったものの後は単行本待ちだったので…この日が来るのを首を長くして待っておりました。

 

笛から飛び出す巨大な精霊(の肉体のみ)・通称”ウーゴくん”を操る謎多き少年・アラジンと一攫千金を夢見る野望家・アリババ。旅の途中で出逢った2人の少年が繰り広げる不思議な冒険のお話です。
それぞれの目的を持った旅のさなかで2人は出逢い、世界中に突如現れたという「迷宮(ダンジョン)」のひとつに共に潜入することになった辺りで本格的にお話が動いていきます。アラビアンナイトの世界観を擁しつつ独自の設定がしっかり敷かれていて、大高先生がこの作品に賭ける思いの強さが感じられます。


主人公のアラジンは素性が一切わからない不思議な存在ですが、その愛すべきキャラクター性は疑いようのないもの。食べ物とおねいさんが大好きで、単純だけど単純だからこそ他人の心を真っ直ぐに映す、時に無邪気で時に鋭さすら感じるその言葉に誰もが本音を隠せなくなってしまう。
2009121903140000
(第1話より。アラジンの純粋さが出ていて大好きな場面です。)
悪党の心は見透かし、しがらみや何かに縛られている善き者の心を解放するアラジンのキャラクターがあえて少年漫画の王道を行こうとしている物語に魅力を添えていると思います。


話としては良くも悪くもド王道なところがあって、冒険ものといっても迷宮探索の展開などにそれほどの驚きや意外性は正直なところ感じられません。どちらかというと、冒険や出来事を通しての人の心や表情の動きの良さが光る漫画です。
2009121903150000
こういった、心が囚われているという描写の鋭さとか。
そういった要素は方向性は違えど『すもももももも』の頃から大高先生の得意とするところだったと思いますし、わたしが大高先生の作品に惹かれている大きな理由でもあります。また意外性はない…とは言いましたが退屈、というわけではありません。適度なギャグや崩し絵を交えつつシリアスな場面はしっかりと描く、「王道」が楽しく読める描き方・魅せ方が良いのだと思います。


タイトルの「マギ」…とは何か、アラジンとアリババのそれぞれの生い立ちや抱える事情はどういったものなのか…といった疑問の答えの端々が2巻には見え始め、アラジンとアリババの初めての冒険が一区切りついたところで新展開へ。そんなところで2巻が終了しており、2巻同時発売が丁度良く感じました。続きが楽しみです!
アラジン・アリババコンビもいいけどモルジアナは可愛いですね。やっぱり大高先生の描く戦う少女はいい!アクション描写は『すもも』の時よりも格好良くなっている気がしました。そしてゴルタスが泣かせる…。