『週刊少年チャンピオン40th』創刊40周年記念特別編集
”週刊少年チャンピオン”が創刊して40周年という記念すべき年だったのが昨年、2009年。チャンピオン誌上では、40年の間に連載されてきた幾多の人気作品の中から選りすぐられた名作の描き下ろし新作読みきりが発表されていました。チャンピオンのみならず漫画の歴史を語る上でも欠かすことが出来ないビッグタイトル・巨匠の先生方の渾身の読みきりが毎週読めるという夢のような日々を送っていたわけですが、ついにそれらの作品が一冊の本にまとまりました。『マカロニほうれん荘』のピンナップ、『ブラック・ジャック』第1話のオールカラーバージョンが巻頭を飾り、手塚治虫先生の知られざる一面を描いた『ブラック・ジャック創作秘話』も含めると24本の描き下ろし漫画が収録されています。
本誌掲載時の作品紹介記事と巻末目次コメントまでしっかり再録の嬉しい仕様。オールカラー袋とじだった『覚悟のススメ2009~往生のススメ~』がモノクロ掲載になってしまった点は残念ですね。あと個人的には、柱と煽りはあったほうが嬉しかったなあ…。


いずれも完結して何年~何十年と経っている作品ばかりですのでここで突然”読み切り”として描くことになるとは各先生方も全く思われてはいなかったようですが、それぞれ異なった形で作品とキャラクターの”いま”を切り取って描かれています。
作品掲載当時のままの設定のものもあれば、成長したキャラたちの”その後”を描いているものもあり。「40周年記念」の”お祭り”ということで、その要素をコミカルに取り入れているものもあります。もしくは設定は当時のままでありながら細部に現代っぽさを織り交ぜている作品もあり、それも面白かったりします。


わたしはチャンピオンを読み始めて漸く2年になるというヒヨッコですので、今回の掲載作は当時のものを知らないものばかりです。しかしそれでも心の底から楽しめたのは、いずれも単独の「読み切り作品」として、要するに「漫画として」素直に面白いものばかりだったからです。そしていずれも長い間を越えての掲載でも違和感がないくらいに「チャンピオン作品」だったから、だと思うのです。いまの「週刊少年チャンピオン」に載っていても浮くどころか完全に馴染んでしまう。それがチャンピオンという雑誌の強いイズムであり、それぞれの作品の高い完成度を表してもいるのでしょう。


『花のよたろう』『すくらっぷ・ブック』『三四郎2』は素直に感動させてくれましたし、『がきデカ』『らんぽう』『クルクルくりんfeaturingるんるんカンパニー』といったギャグ漫画陣は古さを感じさせないキレ味がありましたし、『キューティーハニーVSあばしり一家』はムチャクチャだけどお祭りらしいオチで纏まっていて楽しいし、『1と2』は青春群像劇とオッサン好きの自分には2度おいしいしw…と挙げればきりがありませんが本当にどれもこれも面白い!
さらに2009年のチャンピオン紳士淑女界隈ムーブメントを語る上でも欠かせないこれらのコマも。
2010020703330000
「くそっガンガー・ラームをぶっ殺すしかないっ」(エコエコアザラク2009)
2010020703340000
「タイマンはったらダチじゃああっ!!」(Let'sダチ公)
これらの名台詞は日夜チャンピオン紳士の間で交わされたといいます。ウソですが。…でもかなり見かけましたね。まったく凄いエネルギーが溢れるキャラ、台詞、漫画ばかりです。


そんな作品を描ききってくださった各先生方が凄いのは当然として、この企画を成功させるにあたって沢編集長をはじめとしたチャンピオン編集の皆さんの尽力があったことも忘れてはいけませんね。
菊之助の掲載時期決定。|瀬口たかひろのBlog
瀬口たかひろ先生のこちらのブログの記事を読んでいただくとわかりますが、沢編集長と担当編集の方はわざわざ福岡の瀬口先生を訪ねていかれたそうです。凄まじい熱意、誠意。沢編集長は心から漫画を、チャンピオンを愛しているのだと思い知らされます。ただのぶちゅれろの人じゃないんだよ!


その熱は『ブラック・ジャック創作秘話』に描かれている当時の壁村編集長たちの熱意からも通じているチャンピオンの伝統であると思います。
納得のいく原稿を渡すために8時間で20枚の原稿を一から描き直した手塚先生、当時の担当青木氏の苛立ちと困惑、そしてただでさえギリギリだったところさらに8時間押しを通した壁村編集長の固い信念と信頼…。
2010020703350000
こんな手塚神見たことなかった(色んな意味で)!
名作『ブラック・ジャック』、そしてチャンピオンの歴史はこの熱い男達の存在があってこそのものでしょう。


チャンピオンを愛する読者だけでなく、漫画好きという人には是非読んでいただきたい一冊です。厚くて、それ以上に熱い!チャンピオンを創ってきた人々に最大級の敬意を。
そして2010年のチャンピオンも新連載陣の当たりっぷりが凄まじいわ連載陣はどれも絶好調だわでおそろしいくらい面白いのでぜひよんでください!いまチャンピオンが読めて、幸せだ!