『アベックパンチ』タイム涼介/コミックビーム連載中
毎月面白い面白いと言いながらようやく単行本レビュー。遅くてスイマセン…。でも、本当に面白いです。


主人公「イサキ」と悪友「ヒラマサ」2人の不良。(ヤンキー、というより「不良」)幼い頃のとある出来事をきっかけにつるんで以来、喧嘩や悪事三昧の日々を送っていた最悪の2人が、「アベック」というスポーツに出逢い、駆け出す物語。
「アベック」とは…ペアを組んだ男女が手を繋いだまま戦う(離したら負け)という格闘技。きっかけはたまたま通りすがりで絡んだ相手が「アベック」のチャンピオンだったということに過ぎませんが、その強さとプライドに触れて単なるロクデナシだった2人の心に火がついていきます。アベック自体はスポーツ格闘技ですが、女性パートナーを必要とする競技。それまで女性に縁などなかった2人じゃそのパートナーを見つけ出すのにもてんやわんやの大騒ぎ。そしてやはりそこはそれ、パートナー問題抜きにしても”女”にまつわるあらゆることに2人は振り回されるのですがそれも青春時代ど真ん中ということで…。


不良がスポーツに目覚めたり女性に惑わされたりするという風に書いてしまえば王道中の王道のようなのですが、”スポーツ”と”異性”を直接結び付けてしまったのがアベックパンチ。だから物凄く単純だけど、物凄く繊細。なにより主人公たちがとびきりのバカですもの。余計に迷走してばかり。だからこそ熱い。
矢鱈とポエミィな演出とモノローグ、そしてなかなかアベックを始めない1巻にしびれをきらしてしまう方がいるかもしれませんがそれはヒラマサがパートナーを組むことになる異国人の女性コルビーナに出逢ってからのジェットコースター展開の序曲に過ぎません。一歩間違うと恥ずかしいようなポエム調のモノローグと泥っ臭いアクションシーンが絶妙に合っていて、しっかりしてないと読んでるこっちがのされそうになるほど面白いよ!


言葉選びや会話のセンスがいちいち洒落ていて痺れます。本当はお前ら頭良いんじゃないかって言いたくなるくらいw 
そして登場する女の子たちがみんな強くて美しいんだ!強いといっても、実際アベックをするキャラばかりではありませんが、芯の強さが光ります。
アベックという競技について投げかけたイサキの疑問に対しての同級生・ヒイラギさん(格闘なんかはしない”フツーの”女子高生)の返しなんか逸品です。

「男にとって 女って殴るモノじゃなくて 守るモノじゃないのか?」
「う~…ん~ でもイサキ君 おんなってモノではないよ」

言葉でも目が覚めるようなパンチが飛んでくる漫画です。

 

しかし難なのが、2008年5月に2巻が発売されて以来続刊が刊行されていないという点。自分が読み始めたのはもっと後からですが、現在の連載分に至るまで震えが来るくらい面白いのに…。早いところ3巻の発売を熱望します。