『地球の放課後』吉富昭仁/チャンピオンRED連載中
自分はREDを読まなくなってもう何年も経ってしまいましたが、吉富先生がREDに帰ってきたと聞いたときは何故だか嬉しかったです。と言っても雑誌のほうに手を出すわけでもなくじっと単行本化を待っておりました。意地というわけでもないんですけれども…まあそれは別の話です。


『地球の放課後』は突如出現した生命体…と呼んでいいかも不明な存在”ファントム”により次々と人間が姿を消されていった地球で、最後に残された正史、早苗、八重子、杏南という4人の少年少女がたくましくもゆるやかに生きていくお話です。ファントムの存在、その目的、消えた人々の行方…と大きな謎と闇を孕んでいるにも関わらず非常におだやかに、そして特に筋と呼べる筋もなく進んでいくのが不思議に心地よい第1巻。
4人の少年少女はまったくの他人で、元々面識があったわけでもないようす。広い日本でこの4人が出逢うだけでも途方も無い確率のように思えますが、彼らが出逢った詳しい経緯などは語られず。といいますか、彼らの過去や生い立ちについても多くが謎に包まれています。今後語られていくのか、このままなのかは分かりませんが後者であっても別にいいかなと思ってしまいます。そんな説明がなくとも4人が十分に魅力的だということも大きいです。女子はみんな可愛いし。特にフリーダム幼女の杏南ちゃんが強烈です。
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元々どういう暮らしをしていてこう育ったのかは気にはなりますがw


しかしこの設定は魅力的です。「箱」的なものに数人の人間が放り込まれるものとは違って、4人ぼっちに舞台は無限大。なんだってできるし、どこにでも行ける。1人じゃもてあますだけの自由で、2人くらいじゃまだきっと寂しいけど、4人なら楽しめちゃうんです。
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そこに「異性の目」というものもあって、小さな小さな社会として成立してるというか。作中でも八重子が「正史がいなかったら1日中素っ裸で過ごす」と言っていますが、4人で寄り添う中でも「他人」であり「異性」である緊張感が残っているのがゆるやかな中でも魅力的な部分であるとも思うのです。


所々に残る人が居た地球の面影に時に切なさを抱きながら4人はしたたかに生きています。これから消えた人々は戻ってくるのか、それともこのままなのか、どこかに他に人間は存在しているのか…。謎が多すぎる故に、これからの展開にも様々な可能性が残されています。不安要素も多いけれど、もう暫くは彼らのおだやかな生活を見ていたいなとも思っています。


個人的に印象的なのは人間が徐々に消えていく中でテレビから流れるニュースキャスターの言葉でした。形式的なものから、最期が近付くにつれて寂しさを帯びていくところが…。人が居なくなって、大衆を欺く必要も煽る必要もなくなったら、テレビもこうなるんだろうか。「一瞬で人類が滅亡」するよりずっとずっと寂しい光景だな…と思います。