『シュガーレス』細川雅巳/週刊少年チャピオン連載中
誤解を恐れず初めに言っておきたいと思います。『シュガーレス』は変な漫画だと思っています。それが狙って変な漫画というわけでも、誰がどこから見ても変というわけでもないのですが、やはりどこか変なのです。しかしその”変”さが『シュガーレス』の魅力を語る上では欠かすことの出来ないエッセンスだということも確かなのです。
主人公、椎葉岳。九島高校一年生。
九島高校、通称「風車」はその異名の通り屋上に巨大な風車が廻っていて、ケンカで頂点を獲った不良は学校のシンボルでもある風車に自分の名前を刻んだ旗を掲げることが出来ます。現在、九島の頂点に立っているのは三年・荒巻至。邪魔者を拳で捻じ伏せてテッペンに立つために、学校中を敵に回すことも辞さない構えで野生さながらの牙を剥く岳。彼の波乱に満ち溢れた高校生活が始まります…。
こうやって書くと、なんともテンプレなヤンキーマンガのようですがやっぱりこの漫画は普通にはいかないのです。
まず、頂点に立つ最強の不良の通称が「シャケ」です。名字が荒巻だからシャケ、です。したがって風車でたなびく旗には「シャケ」という文字が堂々と刻まれています。
そして威勢のいい主人公の岳(おおよそ犬)ですが、1巻の大半で気絶しています。同じく一年のプロレス技を使う変わり者、丸母タイジ君にいとも簡単にのされてしまったり、啖呵切った割にビビってシャケさんにスルーされたりします。
岳となにやら縁がありそうな丸母君…その髪型から通称マリモ(※岳が呼んでるだけ)は「勉強ができない」と言いながら「コペルニクス的発想の転換」とか小難しいこと語りますし、岳に絡む2年生は「九島の上下関係は絶対だ ショートケーキの苺 生クリーム スポンジの並びみてーに絶対だ」と怖い顔しながら矢鱈可愛い例え話をしてきますし、不良の頂点獲りにランチェスター戦略を持ち出すバカもいます。
要するに、まずキャラクターの個性がクセになる面白さなのです。あんまり不良らしい不良がいない。一番解り易い不良な岳がそういったアクの強いキャラ群の中に埋没しつつある状況に読者がハラハラするとか、どういうことなの…?
と言っても決して岳はヘタレではないのです。あくまでも自分のやり方で、自分を貫いてテッペンにのし上がろうとするスタイルは気持ちが良いものなのですよ。のびてても「テッペン」と聞いた途端目を覚ます辺りも可愛いじゃないですか。
しかしマリモにはいきなり「頂点とか時代遅れだ」とバッサリ切り捨てられます。ヤンキー漫画読んでて第一回でこの切り捨て様も凄いのですが、こういった「否定」要素も『シュガーレス』の面白さなのではないかなと。というのも否定して、他人にどうこうしろというわけではないのです。兎に角どいつもこいつも”自分”が強いってことなんですよ。自分の言うことに従わせようっていうわけではないのです。ただどいつもこいつも声がデカい。この個性のぶつかり合いは非常に熱くて、爽快なんです。
そんな面々にも共通の認識があります。それが「誠実にケンカする」こと。この言葉自体はシャケが語ったものですが、基本的にはそれと同じ意識を皆が持っているように見えますしそれが出来ない者は舞台から消えていきます。
「正面から人を殴る勇気と 正面から人に殴られる度胸のある奴が 正面から殴り合って
強いほうが勝つ それが”風車”のケンカだ」
シャケは逃げも隠れもしない、それどころか全力の拳を避けることすらしない。総てを受け止めているのに誰も寄せ付けない、シャケは強いです。
変ではある、けど熱いヤンキー漫画。細川先生が今までに描かれてきた作品傾向を考えると、細川先生ご自身がヤンキー漫画を描きたかったのだろうか?と疑問を覚える部分もあることにはあるのですがこの面白さは細川先生がヤンキー漫画とは縁が無かったからこそ生まれたのではないかと思っています。多くのチャンピオン紳士層には既に愛されつつあるこの独特の魅力がもっと伝わっていってくれればいいのですが…。この漫画は、もっと伸びる!
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