『弱虫ペダル』渡辺航/週刊少年チャンピオン連載中
現在チャンピオン誌上では怒涛の6週連続祭が開催中とその勢いは留まることを知らない『弱虫ペダル』。インターハイ初日のレースもいよいよ後半。またここで、新たなるドラマが生まれていきます。
集団落車に巻き込まれ、最下位にまで落ち込んだ坂道が目指す”100人抜き”の前に最後に立ちはだかったのは今泉の宿敵でもある御堂筋。いまだ底知れぬ実力を秘めた御堂筋の不気味な走りに圧倒されつつも、「仲間のために」という最大にして唯一ともいえる原動力を糧に坂道はとうとう100人抜きを達成します。初のインターハイにして凄まじい偉業。御堂筋が本気を出していなかったにしても(この時点では汗一つかいていないというのも恐ろしい)、このプレッシャーに臆することなく進むことが出来たのは坂道にとっては大きな成長の証でもあります。思えば1巻の頃、体育教師の大声とプレッシャーに立ちすくんで何も出来なかったのがこの小野田坂道という少年なのです。人を信じる力を得たことで、人の圧力に屈しない強さをも得たと言えましょう。その走りには目が奪われますが、心の成長も強く感じます。
そんな坂道自身も気がついていなかったような底知れぬ力をただ一人、信じていたのが巻島先輩でした。
同じクライマーとして、期待などという感情的なこと以上に通じるものがあったのでしょう。駆け上がってきた坂道と、走り出して勝負に出た巻島先輩の間には言葉も、影が交差することすらなかったけれど確かに繋がる見えないバトンのようなものがありました。仲間を信じることが愚直なまでの走りに繋がるのであれば、自分自身に出来うる限りの走りで勝負に挑むことがまた最大の労いでもあり礼儀でもある。彼らはまさに、最高のチームだと思います。
そして…近付くのはまさしく”頂上決戦”の時。
箱根学園・東堂VS総北高校・巻島…否、東堂尽八VS巻島裕介という2人のクライマーによる対決の時が訪れます。
孤独にトップをひた走る東堂には何の輝きも無く、ただトップを獲るという義務感だけが彼を動かしていたに過ぎませんでした。しかしチームの為に勝負を諦めざるを得ないと思われた巻島先輩が彼の前に姿を表した瞬間。この瞬間が2人にとってのスタートだったのかもしれません。仲間によって繋いだ走りが実を結び、勝負の場に並んで立てたという喜びだけでも計り知れない重みがあります。
”好き””嫌い””親友””ライバル”…。人間の関係や、相手に対する感情を表現する言葉は幾つあるのだろう。そして東堂と巻島、この2人を既存の言葉を当てはめることに何の意味を持つだろう…などと考えてしまいます。
「こいつには負けられない」という思いだけが生み出す感情は誰にも至れない領域の絆。相手がいるから限界を超えることすら可能になった。ある意味では絶大な信頼とも呼べる闘争心が火花を散らすクライマー決戦。これから先、『弱虫ペダル』に名場面が幾つ生まれても語り続けられるであろう名場面と断言しても良いです。ここは結末も含めて是非とも実際に読んでいただきたい場面です。
クライマー対決の決着がつき、初日のゴールが近付いてきますが箱根学園と総北高校の一騎打ちと思われるところに不穏な陰が。…坂道の反応を見てもそれが誰かはすぐにわかりそうなものですね。
東堂VS巻島対決が凄まじすぎて、エース対決が若干大人しくも見えるのですが初日ということを考えると丁度良い熱量のバランスのような気もしますね。アブだとかさーんーそーが飛び出した時はほんのちょっぴりだけ、イロモノ路線化を懸念してしまいましたがそれもレースの中の一場面を演出する要素に過ぎませんでした。渡辺先生は凄い…本当に凄い。仕事量のことばかり言及されがちですが、それ以上にこんなにも面白い漫画を描けるということが一番凄いと思うのです。
この凄まじさを見ていると、もっともっと広まって然るべき漫画だと思います。本当に、素直にそう思う…。
過去エントリ
そして彼は覚醒する 弱虫ペダル 1巻/渡辺航 - 漫画脳
気弱な少年の決意 弱虫ペダル 2巻/渡辺航 - 漫画脳
純粋という名の速度 弱虫ペダル 3巻/渡辺航 - 漫画脳
その時誰もが惹かれることを止められなかった 弱虫ペダル 4巻 - 漫画脳
上へ上へと…登るしかないっショ 『弱虫ペダル』5巻 - 漫画脳
それぞれの想い、それぞれの絆 『弱虫ペダル』6巻 - 漫画脳
全身全霊、5人のゴールスプリント 『弱虫ペダル』7巻 - 漫画脳
漫画脳:繋ぐ力、支え合う力~ほのぼのもあるよ! 『弱虫ペダル』8巻(渡辺航)
漫画脳:インターハイ開幕!疾走感、御堂筋、そして腹筋(アブ)へ… 『弱虫ペダル』9巻(渡辺航)
漫画脳:引き継がれていく熱い魂 『弱虫ペダル』10巻(渡辺航)
漫画脳:チームのために。自分のために。 『弱虫ペダル』11巻(渡辺航)
『弱虫ペダル』・坂道から消えたのはオタク魂ではなくて
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