『鉄ヲタ少女』久寿川なるお/コミックビーム不定期連載中
コミックビームに不定期でシリーズ連載されている”鉄子”な女子高生が主人公の漫画です。ビームのシリーズ連載というと『テルマエ・ロマエ』が超ヒットになったばかりなので、是非後に続いて欲しいものです。


主人公・”十河ひびき”は容姿端麗で勉強も運動もそつなくこなす優等生。しかしちょっぴり普通の女子高生と違った趣味を持っていました。それは「鉄道が大好き」ということ。足しげく駅へ通っては”彼”と呼びつつ電気機関車を待ったり、鉄道模型店に足を運んだりしつつも「鉄ヲタ」と呼ばれると全否定する、複雑なお年頃。そんな彼女が、少しずつ同級生の鉄友を増やし成長していく青春ストーリーです。


ひびきは小さな頃からいとこの「スギウラ」という真性鉄ヲタの男性に鉄道知識を叩き込まれていた影響で立派な鉄子になってしまったのですが、むしろひびき自身はオタクの嫌な面丸出しなスギウラを嫌っていて「自分と同じ女子の鉄友達が欲しい」と強く願っていました。なかなか女子で鉄ヲタ…という条件を持った仲間は見つかりませんが、男子の鉄道好き同級生と友達になったり、旅先で出逢った女子と(なかなか打ち解けられないながらも)次第に友達になっていったり…とtu 「輪」が広がって行きます。
鉄道自体への愛情や細部の知識もたっぷり楽しめますが、ニッチな趣味を持った青春時代を過ごしたことがある人であればその仲間を欲する気持ちや出逢いの喜びは強く理解が出来るハズ。


中でも素晴らしいと思うのは、喜びの部分だけでなくオタクにありがちな暴走行動や愛ゆえのネガティブな言動もしっかりと描かれていること。そして、仲間同士の意見のぶつかり合い等を経て反省したり、理解しあっていく姿が描かれていることです。
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「オタク」としても、また青春真っ只中な少年少女としても成長していくそのさまがキラキラ輝いていて素敵なのです。オタクだって思春期!オタクだって青春!そんな描かれ方は久寿川先生の「鉄道」だけでなく「鉄ヲタ」という人たちへの愛情にも思えます。鉄道に執心している「オタク」だって、案外普通に悩んで普通に成長していく少年少女たちなんだよ、という。


というわけでして、「鉄道モノ」としてだけでなく「青春群像劇」として非常に良作だと思っております。どちらの要素も絶妙なバランスで描かれている感じですね。特定のジャンルの漫画となると、雑誌で読んでいる層を除きそのジャンルに興味がある人以外には手に取られにくいのかなと思うのですが内容は万人向けと言えます。こういう漫画がサラッと載っているのがビームのよさでもあると思うのですよね。