『ケルベロス』フクイタクミ/週刊少年チャンピオン連載中

1巻の品薄状態に数多くの難民が出た(っぽい)『ケルベロス』。チャンピオン読者以外からの反応も上々で、益々人気が出ることを願ってやみませんが…まずはタンコーボンを確実に入手できる状態になってほしいものです…。


その実態を知る間も悩む間も無く「狗骸」を纏って「墓守」として生きていくことになった景。彼の前に次々と困難が立ちはだかります。自分自身のものではない、墓守としての力を使うことに躊躇いを感じていた景ですが幼なじみの友恵の言葉で吹っ切れ、自分は自分として”人間”らしく強くなることを心に決めます。景の悩みの元の真実すら知らないままにその本質を揺さぶる言葉を投げかける友恵の強いこと。
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その目線は幼なじみでありながら、母親のようでもあります。強く凛々しく優しい。そしてまた、彼女をそう成長させたのも景の無鉄砲な優しさと強さであったりするのです。
この絶対の関係。そんな娘さんを”守りたい”と思う心が景自身を最も支えている部分であるということにも頷けるというもの。元々幼馴染嗜好な自分ではありますが、この2人の関係には単に「幼馴染萌え」という一言では済ませられないものを感じています。


2巻のメインは強くなる決意と覚悟を決めた景の修行。その中で、次第に「墓守」というものの真実も見えてきます。修行の厳しさは想像を絶するようなものですが、かつて墓守として生きた者たちが見守る中で”自分なりの”答えを見出していく景。弱っちい少年であるはずの景なのに、時々見せる眼差しの強さは何故か見守る者を安心させてしまう不思議な力があります。
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そうかと思えば気の抜けたときの笑顔は矢鱈と愛くるしい。なんなんでしょうねこの子は!こんなに愛される、愛されて然るべきの少年漫画主人公もそうはいないと思います。重いさだめや暗い部分を多分に含みながらも、あくまで少年の成長を中心に描いている作品だなあと。それでいて、「応援したい」を通り越して「見ていて安堵感が貰える」主人公なのが凄い。


サブキャラ勢も充実。墓守に敵意を剥き出しにする”仇喰”の壮絶な生き様も要注目。景君に修行を課す狛守神社の社司・神崎世々はその筋の方々にはたまらないドえすっぷりです。サド系女子なんて珍しくもないですが、裸足で主人公の顔を踏んづけてくる女子はそうはいまいて。何を描くにも常軌を逸している(いい意味で)漫画だぜー。
自分は景君のじいちゃんが大好きです。かっこいい大人だよ。「もしもどこかに迷惑かけていりゃあしこたまハタいて 育てた俺らが土下座すりゃあいいんだよ」。こんな気概を持って子供を育てられる大人がどれだけいることか…。良い少年漫画は大人もカッコいい。それは絶対といっていい。


それぞれの思惑が交差して目が離せない展開へと。設定や物語の面白さに加えて台詞のセンスも素晴らしく良いです。しみじみ面白い。この面白さが世界に広がるとよいです。



過去エントリ
漫画脳:グロテスクな世界で輝きを失わない少年の成長から目を背けるな。 『ケルベロス』1巻(フクイタクミ)