『弱虫ペダル』渡辺航/週刊少年チャンピオン連載中
インターハイレース初日、いよいよクライマックス!いよいよ初日の優勝を目指して総北・箱学のエースがしのぎを削る展開に。さらにその背後に近付く不穏な影が…。
分かっていても凄まじい存在感です、御堂筋君。かつて自分は御堂筋を見て「渡辺先生作品で初めて悪らしい悪キャラを見た」と思っていたのですが最近になってそれも違っていたと気がつきました。別に彼は悪いことをしているキャラではないんですよね。かつて中学生の頃に今泉君に対して言ったレース中の発言などはさすがに冗談のレベルではないですが、実際のところ妨害行為らしいことは一切していない。勝利に固執するあまりせこい手段で自分自身をも貶めるような適役とは一線を画しています。
完全に自分の実力のみで圧倒的な脅威としての存在を示しているんですね。とはいっても正統派なライバルキャラというわけでもなく、表情・動作・発言といった彼を形成するもの全てに不気味さを孕んでいる。ヒールらしき行為なしでここまでの不安要素を感じられるキャラが描かれていることも凄いことだと思います。
とはいえそんな御堂筋の存在感に簡単に屈するはずもないのが金城・福富両主将。仲間を信じ己の力にすることが出来る金城、自分の弱さを恥じ悔いてからさらなる成長を遂げた福富。御堂筋は1年生だということを考えれば、その2人と対等に張り合えるだけでも相当恐ろしいのですけど…。信念も何もかもバラバラですが、3人の強者の凄みを感じます。
結果は初日ということを考えると良かったのではないかなと。無難と言ってしまうとアレですが、まだ後2日ある中で(漫画としても)楽しみが続く結果と思います。3日間あるレースを面白く描くのには、こういうところが難しいのではないかなあと思うのですが。
初日終了~2日目頭にはほのぼのとした笑いや各キャラの個性が垣間見えつつも新たな不安要素も見え隠れ。一筋縄ではいきません。中でも不安なのは今泉。初日に箱学・荒北との走りの中でついに覚醒が訪れたかと思わせつつ、再び御堂筋の手によりそれを打ち砕かれたわけで…。金城・福富のように実力で黙らせることも出来ず、言葉の棘を跳ね除ける程の固いメンタルも持たず…と何とも辛い状態。何より自分自身が今までに積んできた努力が全否定される結果が襲ったことが何よりも辛い。
坂道のあまりの逞しさと裏腹なこのメンタルの弱さに『弱虫ペダル』とは今泉を指すのではないかと指摘される声もありますが、自転車に乗り続けてきた時間の長さとエリートと呼ばれた実力故の挫折の傷の深さを誰が嗤うことが出来るのだろうと思うのです。坂道は確かに素人離れした底知れぬ力の持ち主でもありますが、始めたばかりの楽しい盛りと初めて出来た仲間への想いの強さが今はとにかく効いているということもあるのではないか…と。言わば挫折や壁を感じるほどの経験者ではないことが逆に現在の坂道の快進撃の源にあるのではないだろうか?と。…いや、これから先の『弱虫ペダル』で坂道が挫けることすら想像もつかないのも確かなのですが(苦笑)。自分としてはここまでの深い闇を見せられると、俄然今泉君の真の覚醒に期待してしまいます。
しかし13巻で一番「もっていった」感が強いのはやっぱり坂道ママだと思います(笑)。母は強い!人の話を聞いていなくても強いw
個人的には今泉君の背中をそっとささえて励ましてる青八木先輩に胸きゅんですけども…。こういう細かい描写がまた、いいなぁ。
過去エントリ
そして彼は覚醒する 弱虫ペダル 1巻/渡辺航 - 漫画脳
気弱な少年の決意 弱虫ペダル 2巻/渡辺航 - 漫画脳
純粋という名の速度 弱虫ペダル 3巻/渡辺航 - 漫画脳
その時誰もが惹かれることを止められなかった 弱虫ペダル 4巻 - 漫画脳
上へ上へと…登るしかないっショ 『弱虫ペダル』5巻 - 漫画脳
それぞれの想い、それぞれの絆 『弱虫ペダル』6巻 - 漫画脳
全身全霊、5人のゴールスプリント 『弱虫ペダル』7巻 - 漫画脳
漫画脳:繋ぐ力、支え合う力~ほのぼのもあるよ! 『弱虫ペダル』8巻(渡辺航)
漫画脳:インターハイ開幕!疾走感、御堂筋、そして腹筋(アブ)へ… 『弱虫ペダル』9巻(渡辺航)
漫画脳:引き継がれていく熱い魂 『弱虫ペダル』10巻(渡辺航)
漫画脳:チームのために。自分のために。 『弱虫ペダル』11巻(渡辺航)
漫画脳:何者にも干渉を許されない関係がある 『弱虫ペダル』12巻(渡辺航)
『弱虫ペダル』・坂道から消えたのはオタク魂ではなくて
漫画脳:描き文字に見る、渡辺航先生イズム
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