山岳賞ジャージを纏った坂道が表紙の14巻です。この巻の辺りの展開は、不安→払拭→驚愕、といった感じでした。やっぱり渡辺先生は凄い。


インターハイ2日目。体調不良に襲われ、なかなかスタート出来ない田所と唯一その不調を知る巻島。葛藤に苦しみながらも巻島が選択した決断は「田所を切り捨てる」こと。それは不調を訴えた田所自身の望みでもありました、しかし…。
”走れなくなった選手はお荷物”という理屈は、ロードレースを熟知した経験豊富な三年生の彼らだからこそ痛いほどに突き刺さる。一方で、その理屈を理解はできようとも納得はできない、したくないといった心持ちなのが鳴子。では、坂道は…?


小野田坂道という少年は初心者だからこそまっすぐに、ひたむきに、そして理屈抜きに走る男なのです。自転車ロードレース界の常識を知らないからこそ、それにとらわれない。仲間が望んでくれる気持ちと言葉さえあれば彼がペダルを漕ぐには十分な理由になる。そして、常識なんて彼の走りを止める理由にはならない。
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坂道が田所を助けに戻る…正直、アタマで考えると無理がある展開かもしれません。この辺りの展開は。それでも私は読んでいて、やっぱり『弱虫ペダル』が好きでしょうがない!と思いました。だって坂道は周囲の経験も常識も覆してしまうんですもの、その身と信じる心ひとつで!熱くならないわけがないじゃあないか!


しかし熱いのはそれだけに留まらなかった。後半はニヤニヤが止まりませんでしたよ本当!この展開は予想だにしなかった。たまらんです。
ラブ★ヒメテーマソングはある意味、坂道の自転車の原点ともいえるものです。一人だった時から、この歌を口ずさんでテンションを上げてきたであろう坂道。その歌に合いの手を入れてくれる人がいるという事実が、どれだけ彼を励ましてくれることでしょう。あぁ、ホントに理屈じゃないなあ。


実は、個人的には13巻のときの乙さんが書かれていたやや否定的な見方からのレビューが好きで(否定的といっても叩いているとかそういうわけじゃない、ので未読の方は「プリプリプップス : 渡辺航 / 弱虫ペダル 第13巻」をご参照)、そういった意味では紙一重ともいえる状態でもあると思っています。ただ自分はやっぱりニヤニヤしながら単行本を読んで回転イスをクルクルさせちゃうくらいにはこの漫画が大好きだなと思った秋の夜。



過去エントリ
そして彼は覚醒する 弱虫ペダル 1巻/渡辺航 - 漫画脳
気弱な少年の決意 弱虫ペダル 2巻/渡辺航 - 漫画脳
純粋という名の速度 弱虫ペダル 3巻/渡辺航 - 漫画脳
その時誰もが惹かれることを止められなかった 弱虫ペダル 4巻 - 漫画脳
上へ上へと…登るしかないっショ 『弱虫ペダル』5巻 - 漫画脳
それぞれの想い、それぞれの絆 『弱虫ペダル』6巻 - 漫画脳
全身全霊、5人のゴールスプリント 『弱虫ペダル』7巻 - 漫画脳
漫画脳:繋ぐ力、支え合う力~ほのぼのもあるよ! 『弱虫ペダル』8巻(渡辺航)
漫画脳:インターハイ開幕!疾走感、御堂筋、そして腹筋(アブ)へ… 『弱虫ペダル』9巻(渡辺航)
漫画脳:引き継がれていく熱い魂 『弱虫ペダル』10巻(渡辺航)
漫画脳:チームのために。自分のために。 『弱虫ペダル』11巻(渡辺航)
漫画脳:何者にも干渉を許されない関係がある 『弱虫ペダル』12巻(渡辺航)
漫画脳:強者の信念、三様 『弱虫ペダル』13巻(渡辺航)


『弱虫ペダル』・坂道から消えたのはオタク魂ではなくて
漫画脳:描き文字に見る、渡辺航先生イズム