『花もて語れ』片山ユキヲ/月刊スピリッツ連載中
自分にとって、2010年の漫画の出会いの中で最大の衝撃だったと言っても過言ではない『花もて語れ』の2巻が発売になりました。改めて、やはりこの漫画は素晴らしいです。地道に訴えていた甲斐あってか、自分の周囲でも興味を持ってくれた方が多く、またそうして手に取ってくれた方が悉く絶賛していたのが嬉しくて嬉しくて。一口に「好きな漫画」といっても色々な形がありますが『花もて語れ』は多くの人に伝わっていって欲しい作品です。
この巻の前半…即ち1巻から続く『やまなし』編の後半に当たる部分ははじめ職場で読んでいて、「どうして涙は鼻水みたいに啜れないんだ!」と思いつつ泣くのを堪えるのに精一杯でした。ハナの朗読が映し出す光景が、そしてそれに呼応するように動き出す親子の関係が…重く熱く心に響きます。
そう、『花もて語れ』は朗読表現の描写自体も大変素晴らしいのですが、そこに纏わるキャラクターがそれまで送ってきた人生の部分まで丁寧に描かれているところも作品を形成する重要な魅力であるといえます。
朗読の場面においては詩などの内容だけではなく、その人物だからこそその言葉に込めることが出来るそれぞれの想いまで描いている。同じ詩だとしても、朗読するキャラクターが違えばまるで違う描写になることでしょう。どこまでも深い作品です。
「朗読」がテーマの作品といっても、当然そればかりではなくハナを取り巻く環境や生活の動きからも目が離せません。あらためて言うのも変ですが物語自体が大変面白い作品なのです。そして日々の中、さまざまな場面での鍵となっていくのが「朗読」。そういった場面での「朗読」の位置づけはスポーツ漫画ならスポーツで、バトル漫画ならバトルで解決するようなノリに近い部分があります。そこに用いられる手段が「朗読」である斬新さ、そしてキャラクターたちのリアルと詩や短編の内容がリンクする痛快さ。今までになかった可能性を見せ付けてくれます。
それと…個人的な好みの問題もあるとは思いますがハナと満里子さんが友達でありライバルになっていく展開が幸せでたまりません。片山先生の前作『空色動画』でも主人公トリオのデコボコさが魅力的でしたが、『花もて語れ』でも年齢も育ちもまったく違う女の子2人が”朗読”を通じて心を通わせていく姿がとてもステキ。また片山先生の描かれる女の子っていわゆる美少女という感じではないんですがたいへん可愛らしいんですよね。ほっぺたがふにふにでつつきたい!
熱くなって、涙して、ほんわかして、最後の最後では「こうくるか!」という展開。続きが気になるヒキでニクいばかりです。超インドアな題材なのに熱いんだ!もっともっとこの素晴らしい漫画が広まっていきますように…元気が貰えることうけあいです。
過去記事
漫画脳:目から感じる、「朗読」の力 『花もて語れ』1巻(片山ユキヲ)
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