連載が開始した昨年は同時期にスタートした『ハンザスカイ』『ケルベロス』と共に”チャンピオン3stars”として大プッシュされ、今年になってからはこの”悪ガキフェスタ”での展開&単独サイン会が決定とノリに乗っている『シュガーレス』。ただプッシュされているだけではなく、手前の記事ではございますが、先日行った「チャンピオン読者が選ぶ!このマンガが面白いぞっ☆2011週チャン編」でも並みいる強豪を抑えて4位にランクインとチャンピオン読者人気も非常に高水準安定の作品といえます。
いわゆるヤンキーマンガでありながらその魅力は非常に独特なもの。今回は悪ガキフェスタに乗っかりつつ、改めて『シュガーレス』の面白さについて考えてみようと思います。


『シュガーレス』の舞台は屋上に巨大な風車を持つ九島高校。頂点に立つ者は風車に名前を入れた旗を掲げることが出来る…というのが九島のルール。主人公である椎葉岳は、九島の頂点に立つシャケ(荒巻至、通称シャケ)を倒し自分が頂点に立つべく暴れる日々…。
こうして大雑把にあらすじを紹介すると、オーソドックスなヤンキーマンガと思えてしまう不思議。そもそも『シュガーレス』においてそうしたあらすじや物語性はほぼ無意味とすら言えます。


それでは何が面白いのか。それを説明する際にいわゆる細川節と呼ばれるキャラクター達の台詞回しを外すことは出来ません。
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一歩間違えば回りくどいとすら思われかねないポエム寸前の台詞たち。そこにはキャラそれぞれの美学が含まれています。
頂点であるシャケの持論は特にそれを体現するものであり、「殴られるのがイヤなら最初からケンカしなきゃいいんだよ」等の台詞は連載開始間もない頃に私の心を掴むには十分すぎるものでした。


一方でケンカの最中にまでそういった長台詞が存在するのに展開が遅くは感じないのは何故か。私はそこに物語性の排除という部分がかかってくると思っています。
排除と呼ぶと聞こえが悪いかもしれませんが、『シュガーレス』にとって最も大事なことは岳をはじめとするそれぞれが自分の足で立ち、拳を握り、九島の頂点を目指すということだけです。当然それぞれの事情を書く場面や章も存在してはいますが、それが重要な情報かといえばそうでもない。それでもキャラクターはきちんと魅力的です。それはバックグラウンドが描かれていなくとも、各々が自分自身をしっかりと持っていることが”台詞”で分かるからです。
一歩間違えればただまわりくどいものになりかねない「状況説明」「キャラクター紹介」すらも前述の細川節によって読ませてしまうので、説明臭さやダルさがありません。どこかしらポエムらしくてクサくなりかねないキャラクターの想いも巧みな会話によって成り立たせているというのが凄いところです。


決して歩みを止めることなく、生き様を語りながらも前進し続けるのが『シュガーレス』の素晴らしいところです。寧ろ時には細川先生が何を考えているかすらサッパリ分からず苦悩することもありますが(風車組は何処へ…!)それすらひっくるめて結局のところ読んでみればスゲー面白い!というのが私のシュガーレスに対する想いです。兎に角、細かいところを気にしないで読める方になら面白い漫画だと思うんですよね。実は(自分の観測範囲内では)チャンピオン新規読者がハマる率も高い漫画みたいですヨ!