『弱虫ペダル』渡辺航/週刊少年チャンピオン連載中
満を持して金城主将が単独表紙に登場、の『弱虫ペダル』17巻です。…いつになったら表紙に登場するのかやきもきしてましたよ!青色基調ロゴの爽やかさと熱さが合わさった表紙がステキです。


IH2日目終盤。京都伏見の独走状態も束の間に、それを追いかける状況でありながらも風格すら漂わせる王者箱根学園と決して折れることなく全員が力を合わせて追い上げるチーム総北との三つ巴状態に突入。
苛立ちを見せる御堂筋とは逆に、己のチームへの絶大な信頼感を持つと共にお互いの実力を認め合っているのが金城・福富両主将。目的も方法も全く違う者たちが同じトップを目指して競っていることにえもいわれぬ熱さを感じます。


最も大きく違うことのひとつに、他校の選手の存在が金城や福富らにとっては決して「敵」ではなく、御堂筋にとっては疎ましい「敵」であるということが挙げられると思います。特に兼ねてからライバルの関係である金城と福富は自分たちと闘う場所に相手が立っていることに喜びすら感じている。その好敵手同士の絆とも呼べる関係の前では御堂筋の存在はことさら異質です。


京都伏見3年の石垣は16巻の感想でも書きましたが本来、金城や福富に近い考えを持った熱い男。仲間を大事にする彼は御堂筋のやり方に葛藤を抱き続けてきました。しかしそんな葛藤と疑問が払拭される時が来ます。
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同じジャージを纏う者の想いが必ずしも同じである必要はない。目指すものが同じで、その為に力を合わせることが出来ればそれは「チーム」となのだ…と。
チームメイトを誰よりも強く思いやる石垣自身にとっても御堂筋は異端の存在でした。転倒しそうになった瞬間、彼は卒業した先輩とレース中に切り捨てざるを得なかった後輩たちに心の中で詫びた…その中に御堂筋は居なかったのです。そう、彼自身が御堂筋をどこかでチームメイトとは認識しきれていなかった。しかしこの瞬間、京都伏見はいびつながらも漸くひとつの「チーム」となったのです。そんな展開、痺れないわけがありません!


全体を通しては選手それぞれの個性が活かされるめまぐるしい展開で、この辺りは単行本で纏めて読んだほうが楽しめるというのが率直な感想でした。正直なところ、このIH2日目の展開には色々と思うところもあったのですが、こうして読んでいるとやっぱり熱いしやっぱり弱虫ペダルが好きだなあ…と実感します。



過去エントリ
漫画脳:『弱虫ペダル』 小野田坂道と御堂筋翔~最も近くて、最も遠い2人
『弱虫ペダル』・坂道から消えたのはオタク魂ではなくて
漫画脳:描き文字に見る、渡辺航先生イズム


そして彼は覚醒する 弱虫ペダル 1巻/渡辺航 - 漫画脳
気弱な少年の決意 弱虫ペダル 2巻/渡辺航 - 漫画脳
純粋という名の速度 弱虫ペダル 3巻/渡辺航 - 漫画脳
その時誰もが惹かれることを止められなかった 弱虫ペダル 4巻 - 漫画脳
上へ上へと…登るしかないっショ 『弱虫ペダル』5巻 - 漫画脳
それぞれの想い、それぞれの絆 『弱虫ペダル』6巻 - 漫画脳
全身全霊、5人のゴールスプリント 『弱虫ペダル』7巻 - 漫画脳
漫画脳:繋ぐ力、支え合う力~ほのぼのもあるよ! 『弱虫ペダル』8巻(渡辺航)
漫画脳:インターハイ開幕!疾走感、御堂筋、そして腹筋(アブ)へ… 『弱虫ペダル』9巻(渡辺航)
漫画脳:引き継がれていく熱い魂 『弱虫ペダル』10巻(渡辺航)
漫画脳:チームのために。自分のために。 『弱虫ペダル』11巻(渡辺航)
漫画脳:何者にも干渉を許されない関係がある 『弱虫ペダル』12巻(渡辺航)
漫画脳:強者の信念、三様 『弱虫ペダル』13巻(渡辺航)
漫画脳:彼は理屈を欲しない 『弱虫ペダル』14巻(渡辺航)
漫画脳:心理戦の限界を超えた先に 『弱虫ペダル』15巻(渡辺航)
漫画脳:捨て行くものと信じるもの 『弱虫ペダル』16巻(渡辺航)