『囚人リク』瀬口忍/週刊少年チャンピオン連載中
2011年チャンピオン新連載ラッシュ、一気に3作品の単行本が発売となりました。なんと既に3作品とも2巻の刊行が決定しているという秋田書店にあるまじき快挙(なんだかバカにしているようですが本当に快挙)!というわけで、先ずは2011新連載組3作品の中で個人的に最もプッシュしたいと思っている『囚人リク』のことから書かせていただきます。
普段週チャン感想は週チャン感想として纏めて書くことに決めている自分が第1話掲載時に個別記事を書いてしまうほどの衝撃を受けたこの作品。その衝撃は薄れることなく、回を重ねるごとに益々大きな衝撃と感動を与えてくれます。


舞台は近未来の日本。隕石によって壊滅した東京のスラム街で身寄りを無くしながらも一人で逞しく生きてきた主人公・栗田陸、13歳。苦しい中でも優しさや仁義を忘れない少年。しかし彼の生活…そして人生はある事件を境に激変することになります。
荒みきった街で好き勝手な行いをする警察たちの中で只一人優しくリクの成長を見守ってくれていた交番のおじさん。そんな、まるで父親のような存在であった唯一無二の大切な人が他者を救うための正義を貫き通した結果不条理な悪意によって目の前で殺害され、リク自身がその罪を被せられるという余りにも酷な仕打ちを食らわされます。「警官殺し」の罪を着せられたリクは「極楽島特級刑務所」という地獄のような場所に放り込まれることに…。『囚人リク』はそんな絶望の果てで生き抜くこと、そしてそこを脱獄して最大最凶の敵であるおじさんの仇の元へ辿り着くことを誓うリク少年の壮絶な物語です。


兎に角…絵の力、コマ割り、線の力強さ、言葉の持つ力…すべてが熱く響いてくる漫画です。端的に言うと「漫画力」が物凄く強いと思うのです。トータルで。1ページに詰め込まれたコマ密度が基本的に多くそれによって熱量を強く感じさせ、だからこそ時々入る大ゴマや見開きのインパクトは絶大。見せ方、そして魅せ方が非常に巧い!
物語の展開自体に大きな意外性などがあるとは言えません。しかし王道たる物語を力強く、そして”漫画ならでは”の演出によって描く完成度の高さ。毎回、毎回、確実に。心が揺さぶられます。


そしてやはり何より感じるのは主人公・リクの芯の通ったキャラクターと、1話で亡くなった「おじさん」の存在感です。
リクたちを、本来大人によって守られるべき子供たちを守るために巨悪に独り立ち向かったおじさん。おじさんへの想いと憧れの強さはリクの中で生き続けています。そして刑務所の中で理不尽な仕打ちに屈することなく己を貫くリクの姿は、彼が憧れていたおじさんの姿勢そのもの。この熱が伝染していく2巻以降の展開も実に痛快ですよ!

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強烈な悪意も真っ直ぐに描かれているので辛い場面も多々ありますが、それでいて適度な笑いや安心できる要素もあります。読んでいて疲れさせないバランスがいい。これぞ「少年漫画」と言えるパワー溢れる漫画です。帯に書かれた堂々たる「アンケート1位獲得」の文字は伊達じゃない!個人的には『バチバチ』『ケルベロス』級に「キてる」作品です。どういった経緯があったかはわかりませんが、チャンピオンに来てくれた瀬口先生に感謝!



過去記事
漫画脳:週刊少年チャンピオン新連載:絶望に屈さぬ少年の脱獄記が始まる 『囚人リク』第1話(瀬口忍)