『モメンタム』濱口裕司/週刊少年チャンピオン連載中
チャンピオン2011年新連載陣より感想2つ目、チャンピオン新人賞出身の濱口先生初の連載作となるバスケットボール漫画『モメンタム』です。以前に掲載されていた『Can you?(勧誘)』という前後編の読み切りが好きだったので本格連載の開始をとても嬉しく思っています。
最初から言うのも何ですが画にも作風にもクセがあり、何かとご新規さんにはとっつきづらい漫画であることは否定できません。でもこうして感想を書くのはやっぱり私自身がこの漫画面白いっ!と思うからに他ならないワケです。


ルールを覚えていない、という理由で中学のバスケ部の試合に出させてもらえずにいた名和菊苗。たまたま彼の無茶苦茶なプレーに出逢った泉福寺高校バスケ部・泉宗介は「来年ウチで一緒にやろうよ」と声をかけます。
一年後。泉福寺高校に入学しバスケ部を訪れた名和に告げられたのは”宗介は去年、試合中に亡くなった”という事実。宗介と共にバスケ部を立ち上げたキャプテン・南は宗介のいないバスケ部は無意味と部を終わらせようとしていました。そこに乱入した名和は果たして、宗介が言っていたような”モメンタム”…良い流れをバスケ部に呼び寄せることができるのか。


ずっと共にプレーしてきた南と、一度会っただけでも強い影響を植え付けられた名和。宗介の存在によって引きつけられた奇妙な縁。それぞれの宗介の記憶は違った形ではあるものの、だからこそ名和は南たちが縛られていたしがらみを壊すことが出来たのでしょう。ルール無用にもほどがある想像のつかないプレーや言動が、綺麗な形でとは言えないものの良い流れを招いているのは事実。
この滅茶苦茶な名和のキャラクター自体が、濱口先生のキャラクターと作風にどこか重なる部分があると感じています。一筋縄でいかないその流れは、それでも確実に良い方向へ向かっていると思うのですよ。


雑誌掲載時は入部、即練習試合という展開に戸惑いがありましたが読んでいくうちにその展開の意味も理解できました。1巻のラスト、この場面を引きに持ってくるところがニクいです。主要人物の死が大々的に描かれている反面、泥臭いほどに「生」を強く意識した作品でもありますね。宗介も彼自身が繋いだ縁の中で生きている。


良くも悪くもアクが強いという印象の作風なのですが、常に新しい試みを取り入れていく方向性は間違っていないと思うんです。最近の本誌掲載分ではまたかなり驚かされた場面もありました。
アクが強いということは即ち非凡ということで、研ぎ澄ますことによっていくらでも強い武器になるものです。カンペキではないからこそこれからにも期待したい作家です、濱口先生。個人的には言語センスが大スキだなあ。