『行徳魚屋浪漫スーパーバイトJ』沼田純/週刊少年チャンピオン連載中

いったいどれだけこの日を待ち望んだことか…!週刊少年チャンピオンの秘蔵っ子、蔵から一度出そうとしてまた仕舞っちゃって再度引っ張り出してきた秘蔵っ子!NJこと沼田純先生のタンコーボンが出ました!それもなんと、「実録魚屋さんアルバイト漫画」という新ジャンルでございます。週刊連載をこなしつつも(こなしていない間も)続くNJ先生のスーパー鮮魚部でのアルバイト生活。”楽じゃないけど、嫌いじゃない”まさにそんなキャッチフレーズがぴったりハマる、苦労もあれど愉快な日々が綴られている作品です。


「日記マンガがうけるらしいよ」
「そうですか」
本当にこんな淡々とした会話だったかどうかは定かではありませんが、『スーパーバイトJ』の冒頭はそんな担当編集氏とNJ先生の会話から始まっています。確かに”日記マンガ”も”漫画家マンガ”も近頃のブームといえるジャンルですが、「魚屋でアルバイトする漫画家の日記マンガ」とはもはや誰にも真似出来ないジャンル。さらに日々の出来事だけではなく、魚屋さんのお仕事ネタやおさかなメモまでそこらに挟まっていて、そんな情報量が毎話4ページ(現在連載分は5ページ)に凝縮されているからスゴい。


「日記マンガ」と聞くと個人的にはコミックエッセイを思い浮かべます。『スーパーバイトJ』がそういった日記モノと違うのは、本来ギャグ漫画家であるNJ先生の作風が如実に表れている点です。
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実際にあった(であろう)出来事を多少誇張して描くというのは基本の手法に過ぎず、イメージカットがバンバン多用されたりやたらとポージングが決まってたり…という漫画表現がこれでもかというほど詰まっています。あくまで「少年漫画」の「ギャグ」というジャンルを地で行きながら日記マンガとしても成立させているわけです。日常の中で起こった面白い出来事をその場にいなかった人に話そうとして、なかなかその面白さが伝わらない…という経験をお持ちの方は少なくないと思うのですが、この作品では「日常で起きた面白い出来事」を確実に伝えてきた上で「+α」としての「ギャグ漫画の面白さ」を叩き込んでくる。こんな漫画は見たことがなかったし、ハマると本当にのめりこみますよこの面白さは。


NJ先生以外の鮮魚部メンバーも個性抜群のツワモノばかり。やたらめったらカワイイので困っちゃうパートのおばさん、ササキさん!異様な男らしさを誇る同じくパートのおばさん、コジマさん!おじさんだけど時にシャレにならないレベルの困ったちゃんなヨシノさん!NJ先生の後輩なのにいつの間にやら追い抜いちゃったミツイシさん!そして…強面なのにときどき可愛いイナゲ主任!!…特にイナゲ主任の可愛さったら何事ですか、この破壊力は。というか、アルバイトのNJ先生が恐れる上司を漫画で可愛く描いているという事実に何だかわからないけどこっちが照れます。照れますよ。照れるでしょうが!!
作中でも描かれていますが、本当に家族のような職場。そりゃあ、本当はもっとしんどいこともあるでしょうし作中で描かれていることも実際は辛い空気だったこともあるでしょう。でもそれを感じさせず鮮魚部楽しい!と思わせてしまう空気。だってこれはひとつの漫画作品ですものね。


また、チャンピオン連載作品『ハンザスカイ』『シュガーレス』『ケルベロス』の3作品を集めた”3stars”イベントのレポートも収録されています。実際にイベントに参加した者としてはNJ先生の「事実を基にギャグ漫画として構成する力」を実感出来た回ともいえます。特に沢編集長。そっくりです。あのまんま。いや本当、素晴らしい。


まったくもって読めば読むほど味が出る、スルメのような漫画!魚屋さんだけにね!!
是非ともヒットして欲しい、週チャンにずっといて欲しい作品です。そして今度こそNJ先生の前に立ちふさがる「2巻」の壁を打ち破っていただきたい…!




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