毎週のチャンピオン感想は「チャンピオン読者向け」というゆるいスタンスで綴っているのですが、今週は久し振りに「対外向け」の記事を書きたい…書かねば!と思ってしまったので急遽更新します。今週号のチャンピオンにとにかく凄い、凄すぎる作品が掲載されました。
昨年のチャンピオン新人賞入選作『破壊症候群』で輝かしいデビューを飾り、即座に『ドラゴンスワロウ』で「日刊!浦安」WEB連載を獲得した要注目の新人作家・阿部共実先生。
キュートな絵柄、独特な表現力に早くも固定ファンを多く掴んでいる実力派の阿部先生。チャンピオン関連の場ではギャグ寄りの作品を発表されることが多かったのですが、今年の6月にご自身のブログ及びピクシブで発表された『大好きが虫はタダシくんの』という作品がネット上で大変な話題になりました。
ギャグ・コメディ作品と温度差があまりない「何気ない」導入部から中盤~終盤にかけての怒涛の展開が圧倒的としか言いようがない衝撃の作品です。人によっては強く恐怖を、また人によっては強い哀しみを受ける名作ですので未読の方は是非ご一読をオススメいたします。
話をチャンピオンに戻しますが、その阿部先生の新作が週刊少年チャンピオン38号より3号連続で掲載されています。タイトルは『空が灰色だから手をはなそう』。毎回主人公(女の子)・シチュエーションが一新される、少年誌では珍しい形式のオムニバスコメディ。第1話は極度の恥ずかしがり屋である宇佐美さんという女の子が主人公のちょっぴり哲学的なコメディでした。
そして今週、39号に掲載されている第2話。これがもう、凄まじい作品でした。
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とある高校の朝。森永さんという女子に挨拶を無視された女の子グループ。その中にいた明という女子の
「森永ってさあー ムカつかない?」
という、どこにでもある、誰にでもあるような些細な一言を皮切りに始まったお話。
女子グループの女子への悪口、妬み。よくある話です。ムカつく、嫌い、森永の行動、言動の小さなことが、何もかもが。一人の「これがムカツク」から飛び火しいて次から次へと。珍しいことではない…はずでした。
しかし、次第に明の持つ異常なまでの森永さんへの執着が剥がれ落ちていきます。
そこから先はもう、作品に読んでいる自分自身が吸い込まれそうなほどの緊迫感。矢継ぎ早に繰り出される「嫌い」が深く、強く、確実に胸に突き刺さります。こんなにも「嫌い」「大嫌い」という言葉は重かったのか…とすら思うほど。明自身の攻撃性に対して、攻撃の意思すら感じないラストシーンが何よりも残酷という最後の最後まで痛みに満ちた作品でした。
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阿部先生の作品はギャグであってもシリアスであっても「会話」が大きな意味を持っており、しかしその一方で「会話」だけの作品にはならない高い表現力・作画力が保たれています。
ポップでキュートな絵柄は崩れないまま…いや、この絵柄だからこそ人間の痛み苦しみ苦み醜さを抉り出すような描写の力。本当に物凄い作家だと思います。そして、こういった作品を掲載するという英断をしたチャンピオン編集部にも拍手を送りたい!
『タダシくん』で阿部先生を知った人にも是非注目していただきたい作品です。チャンピオンは…その、チャンピオンなので本誌を逃すと単行本がどうなるかはわかりませんし!(脅しのようだけど本当に…)『ドラゴンスワロウ』『破壊症候群』も含めた短編集のような形で単行本を出してもらえたらなあ、とは思うのですけど…。
とにかくこの『空灰』、まだ次週も掲載されますのでどういった作品が来るかも楽しみ!チャンピオンはこの才能を絶対に逃しちゃダメだ!
コメント
コメント一覧 (3)
【灰色】は好きすぎてストーカーまがいのヤンデレと化してしまった自分が嫌いという、救いがたいレベルまで追い込みをかけてたのが印象的でした。
阿部共実は、コミュニケーション不全の痛みをリアルに捉えていますね。実体験かも。
39号は【囚人リク】も痛かったなー。椿も、リクも、天野も、余りに痛みを背負いすぎている。
このハイクオリティの残酷性を掲載し、手塚治虫の真の伝記を載せ、そして岩明均のブラック・ジャックを載せる今のチャンピオン編集部はマジですごいすネ。
読むと最後にホッとするね
共感を得られる話題なのでもっと読みたい。
しかし、連載が3週間で終わってしまったので、残念!
新連載が決まって楽しみですね。個人的にはクオリティ維持するための隔週連載は有りの方向で支持します。
最近毎週木曜日のテンションが上がってます
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