まさかのびっくり舞台化発表と同時に発売となった『弱虫ペダル』19巻!って、今こそ帯つけるとこだろ!何してんの!
などと思いつつ、意味深な表紙の19巻です。坂道と御堂筋のツーショット、というありそうでなかったカット。まっすぐに”同じ方向”を見据えた2人の眼差しが印象的です。


様々な思惑を抱えて終了したインターハイ2日目。
坂道ら1年生はいよいよもってIHの真の厳しさを知ることとなります。自分たちが闘い競っている相手は目の前にいる選手たちだけではなく、様々な犠牲を生みながらもレースは続いていくということを目の当たりにした彼らはますます強くなって行くことでしょう。これまで、『弱虫ペダル』では坂道らの所属する総北高校、王者箱根学園、そして御堂筋という最凶シンボルを抱えた京都伏見以外の学校の存在は相当薄かったといえます。なのでこうして志半ばで散っていく選手たちの無念をしっかりと刻み込む描写が組み込まれることで一層このインターハイレースの重みというものが伝わってくるようでした。
そして、3年生たちは己の限界と闘いながらインターハイ最後の走りを迎えることになります。


そして2日目の夜。レースの狭間ではありますが密かに熱い対決が繰り広げられていました。
トップを守り切れなかった失意の御堂筋と、我らが驚愕の無自覚スーパールーキー小野田坂道の邂逅。
御堂筋の過去回想を読んだときに自分が思いを馳せた、いずれはライバルと成り得る正反対の2人がこのときようやく真の意味で出逢ったと言えます。今はまだ、「興味」の段階ではありますが少なくとも御堂筋の中では何かが動きつつあることを感じさせる夜の出来事でした。そういえば、かつての御堂筋が抱いていた「幸せ」の色は、坂道の着ているジャージの色と同じでしたね。


また、ここで御堂筋が気が付いたのは坂道の本当の速さは笑いながら走っている時にこそ生み出されるということ。その真実こそ、御堂筋自身が自分に欠けているものに気付くきっかけとなるのかもしれません。
一方で坂道と同じ「登りで笑う」クライマーながらも明らかにその「笑い」が異質なものとして描かれ始めた箱学1年・真波山岳の存在にも(良くも悪くも)期待が高まります。因みに、わたしが『弱虫ペダル』で最も底が見えず恐ろしいと思っているのは彼です。



さて、いよいよインターハイ最終日の幕開けとなりますがついにダークホース的な存在が登場します。御堂筋とはまた違った不気味さを纏った主将・待宮率いる広島の呉南工業。
他人の心を操るその笑顔の裏には果たしてどんな思いがあるのか?まだまだ波乱が待ち受けていそうです。




過去エントリ
御堂筋回想時に書いた↓の記事を読んでいただけると大変ありがたいです。
『弱虫ペダル』 小野田坂道と御堂筋翔~最も近くて、最も遠い2人


そして彼は覚醒する 弱虫ペダル 1巻/渡辺航 - 漫画脳
気弱な少年の決意 弱虫ペダル 2巻/渡辺航 - 漫画脳
純粋という名の速度 弱虫ペダル 3巻/渡辺航 - 漫画脳
その時誰もが惹かれることを止められなかった 弱虫ペダル 4巻 - 漫画脳
上へ上へと…登るしかないっショ 『弱虫ペダル』5巻 - 漫画脳
それぞれの想い、それぞれの絆 『弱虫ペダル』6巻 - 漫画脳
全身全霊、5人のゴールスプリント 『弱虫ペダル』7巻 - 漫画脳
漫画脳:繋ぐ力、支え合う力~ほのぼのもあるよ! 『弱虫ペダル』8巻(渡辺航)
漫画脳:インターハイ開幕!疾走感、御堂筋、そして腹筋(アブ)へ… 『弱虫ペダル』9巻(渡辺航)
漫画脳:引き継がれていく熱い魂 『弱虫ペダル』10巻(渡辺航)
漫画脳:チームのために。自分のために。 『弱虫ペダル』11巻(渡辺航)
漫画脳:何者にも干渉を許されない関係がある 『弱虫ペダル』12巻(渡辺航)
漫画脳:強者の信念、三様 『弱虫ペダル』13巻(渡辺航)
漫画脳:彼は理屈を欲しない 『弱虫ペダル』14巻(渡辺航)
漫画脳:心理戦の限界を超えた先に 『弱虫ペダル』15巻(渡辺航)
漫画脳:捨て行くものと信じるもの 『弱虫ペダル』16巻(渡辺航)
漫画脳:”チーム”の形は一つじゃない 『弱虫ペダル』17巻(渡辺航)
漫画脳:過去、決別、純粋な強さ 『弱虫ペダル』18巻/渡辺航

『弱虫ペダル』・坂道から消えたのはオタク魂ではなくて
漫画脳:描き文字に見る、渡辺航先生イズム