『まじもじるるも 魔界編』渡辺航/月刊少年シリウス連載中
この数か月の間待ち焦がれ続けた『まじもじるるも 魔界編』第1巻発売の日がやってまいりました!いや~ながかった…。毎月発売予定表とにらめっこしてはウネウネしていました!
『まじもじるるも』が7巻で一旦の完結を迎え、『魔界編』として開幕した新章。表紙も今までのCG彩色からアナログ彩色に変更され、ロゴも一新。あくまでコメディ路線であった無印とはガラリと雰囲気が変わっていることが表紙からも伝わってきます。



『まじもじるるも』の主人公として描かれてきたのは高校生、柴木耕太。
彼に魔界から訪れた修行魔・るるもが渡した魔法のチケット。それはあらゆる願いを叶える夢のような代物でした。るるもの修行とは契約者である柴木にそのチケットを使い切らせること。しかし、そのチケットは柴木の命そのもの。最後まで使い切ったその時には「死」が待っている…。柴木はそれを知りながら葛藤し続け、るるもはその事実を知らず自分を優しく迎え入れてくれた相手の命を削り続けていました。
そしてるるもにとって地上最後の日。悩み続けた柴木の決断は―…。



そこまでが、『まじもじるるも』全7巻の物語です。
シリアスな設定を抱えながらも柴木とるるもの日常は常に明るく楽しい日々でした。魔界ではひとりぼっちだったるるもは柴木やその家族、学友たちに愛されて少しずつ地上の生活に打ち解けていきました。
しかし…るるもが地上で初めて知ったそんな何気ない幸せは、一瞬で決壊するのです。『魔界編』の第1話(話数カウントはリセットされてないため正確には42話ですが)は、柴木のお葬式から火葬というショッキングな場面から幕を開けます。
2011121004170000



『まじもじるるも』は異界からの来訪者である子魔女るるもによって生活が一変した主人公・柴木の物語でした。るるもは魔界から突然やってきた異質な存在でもあり、可愛い一人の女の子でもあり。柴木はその存在によって驚き、喜び、ときめきを得る一方で不器用な子魔女にとっての励ましであり続けてきました。
それが、『魔界編』に突入後はるるもが主人公の視点に変わります。それも柴木のいない世界で。若干語弊のあるたとえになるかもしれませんが、あえて分かりやすくたとえるとするのならばドラえもんがのび太を失ってひとり取り残された世界、というと想像がつきやすいかもしれません。



地上でのあまりにもつらい別れを経て、魔女となったるるもは魔界へ帰るわけですが、魔界でもるるもを待ち受けるのは過酷な現実ばかり。
るるもは、元々だまされて牢獄に入れられていた身。かつてはそれをるるもの過去として、「主人公」柴木の立場として聞かされていただけでした。しかし陰湿なイヤガラセもまた魔界へ戻った「主人公」るるもの現実として降りかかってきます。
視点の変換によって、そして過ぎ去ったものとして想像するしかなかった魔界でのるるもへの仕打ちが実際に描写されることによってその辛さは一層ふくれあがります。地上では愛されていた、愛されて然るべき存在であったるるもが何故こんな目に…しかし、その苦しさこそがこの作品のうまさを裏付けているとも思えます。



また、るるもの視点で語られることによって、るるもが柴木との出逢いによってもたらされたものの大きさが見えてきます。
それは強さであり、笑顔であり、愛情であり。かつて表情も動かさず、辛いことも受け入れるだけであったるるもが、柴木の存在を失ったことで初めて必死で何かを願い、それを取り戻したいという一心で禁忌すらも侵すように変化していきます。
それは、もはや「正しいか」どうかではなく。その切実な願いを叶えて欲しいと…ただひたすら応援したくなってしまうのです。だってこれは「頑張る女の子の物語」だから。るるもが大きな哀しみを抱いてもなお、「頑張る女の子」だから。



『魔界編』突入後は毎回が衝撃の展開の連続です。見どころを挙げようとすればキリがないほどに。
物語自体はシリアスなものになってはいますが、コメディ路線も一切無くなったわけではなく、怒涛の展開の合間に少しホッとさせられることも。魔界に舞台を移したことで新たに魔女キャラも大勢投入されて「女の子描き」としての渡辺先生の本領も十分に発揮されています。特にハルリリのとりまきーズがお笑い分も担っていい味出しています!軍事マニア・体操服元気娘・つるぺた自称お色気担当と…本当にそのキャラクター作りの引き出しの多さに驚かされるばかりです。アチャコの女豹のポーズにはやられた…やられたよ!



さらに46話「脱出」での魔女同士の魔法バトルシーンの熱さにも注目。
魔力の制限(いわゆるMPのようなものと思われます)がある中で相手の手の内を読みながらの頭脳バトル…興奮しました。これはるるも自身は殆ど関わらないものでしたが、魔女に復帰し舞台を魔界に移した以上はこういった展開もまた期待したいものです。



リスタートした『魔界編』の第1巻は哀しみや苦しみも、予測のまったく出来ない展開も、可愛い女の子も、お笑いも、熱いバトルも、失った愛しい人への切ない想いも何もかもが詰め込まれた漫画としては「豪華」の一言に尽きる1冊です。
そしてこの1巻のラストには、また誰もが想像出来なかったであろう驚きが待ち受けています。続きが気になる「1巻」としてもパーフェクトな出来と言って差し支えないと言い切ってしまっていいのではないでしょうか。
多くの人が『弱虫ペダル』しか渡辺先生の作品を知らないなんて、この『るるも』が読まれないなんて…そんな勿体ないことがあっていいものかとジタバタしっぱなしです。1年の最後に2011年最高の1冊を手にすることが出来ました。
面白い漫画はここにある!



関連記事
↓雑誌掲載時にいてもたってもいられず書いた記事です。この1巻感想よりもネタバレ色が強いです。
漫画脳:[ネタバレ注意]『まじもじるるも』魔界編から目が離せない。

過去エントリ
まじもじるるも/渡辺航 1巻 - 漫画脳
子魔女は空よりやさしいパンツの夢を見るか? まじもじるるも 2巻/渡辺航 - 漫画脳
輪は広がり、愛される子魔女 『まじもじるるも』3巻 - 漫画脳
漫画脳:ほんわか、ちょっぴりせつない、あとるるもかわいい。 『まじもじるるも』4巻
漫画脳:すべての女の子とおっぱいに幸あれ!! 『まじもじるるも』5巻(渡辺航)
漫画脳:もうひとつの”オタク少年へのエール” 『まじもじるるも』6巻(渡辺航)
漫画脳:衝撃の別離―…るるもの新たな日々の始まり 『まじもじるるも』7巻(渡辺航)