『さくらDISCORD』増田英二/週刊少年チャンピオン連載中
明けまして2012年、チャンピオンコミックスで今年初の「1巻」はこの作品でした!
作者である増田英二先生にとっても初のコミックスでめでたいづくしですね。増田先生は2010年に短期集中連載された『透明人間の作り方』で高い評価を得て、2011年にこの『さくらDISCORD』の連載でチャンピオン誌上に復活。わたしの観察範囲内では万人受けというよりは一部で熱烈な支持を受けている印象です。わたしは当然こうやって感想を書いている時点でおわかりとは思いますが、この漫画が大好きなクチですよ!!


舞台は兵庫県姫路市、瀬尾見という架空の街。(「瀬尾見」という地名自体は架空のようですが実際にある街がモデルとなっているようです)
主人公・作楽康介(さくら こうすけ)が小学生の頃まで過ごしていたこの街へ4年ぶりに帰ってきたところから物語がはじまります。
康介の転入してきたクラスには康介と小学生時代を共に過ごしていた幼なじみの「桜ヶ丘奏」、「桜島裕太」、「桜ノ宮さくら」の3人と、他人とつるむのを嫌う「住吉さくら」、謎多き少女「芽吹さくら」という5人の「さくら」が在籍。何の因果か巡り合った6人のバラバラな「さくら」たちが奏でる「DISCORD(不協和音)」の音色はいかなるものなのでしょうか。


この漫画に「軸となるストーリー」はほとんどありません。
大きな事件が起こるわけでもなく、男女6人のさくら達の中で誰かと誰かがくっつく、とかいう展開もいまのところありません。
では何をしているかというと、高2の青春を全力で生きているだけ。
なぜならそれが彼らのすべてだからです。


主人公の康介は中学時代に所属していた野球部での悔しい記憶から、「何かに全力で挑む」ことが出来なくなっていました。
しかし、桜ノ宮さくら…通称ノ宮とふたたび出逢い、止まっていた彼の青春はふたたび動き始めます。
ノ宮は康介を励ますとか、元気づけるとか、そういうことはしません。ただ満開の笑顔でこう言い放ちます。
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「ダッサ」と。
康介が心のどこかで望んでいるのは優しい言葉なんかではないから…ということを、ノ宮自身がわかってやっているのかはいまいちわかりません。でも、「全力」を忘れかけていた康介を奮い立たせるには何よりもそれが効くというのは事実。


「さくら」達の言葉や行動のぶつかり合いは見ようによってはとても大袈裟に描かれています。
だけどそれは誇張ではなく、彼らにとっては目の前に広がる世界が、周囲にいる人間たちがすべてだからなんです。学生の頃の「世界」のすべてなんてそんなものだったはずです。
でもその小さな世界すらも、どこかでバランスを崩してしまうのが怖くてなかなか変えようなんて思えなかった。そういう記憶がある人は少なくないと思います。
この漫画の登場人物たちは時に相手が本当に痛がる言葉をあえて選んで、刺して、えぐって、ぶつけていきます。そして自分自身も相手にそれをぶつけることによる相応の痛みを受け入れています。
薄い皮一枚の「一見」平穏な日々を剥がして、その先にある真実に辿り着こうとしている。


わたしにはそれが本当に眩しくて、羨ましく見えるんです。
全力でぶつかれる、ぶつけ合える青春が。大人になるにつれて、どんどん難しくなっていくそういった真の相互理解が。
狭い世界だからこそ、人ひとりが本気で突っ込んで来たらその光景はガラリと変わってしまう。それをしてくれる仲間がいることも、それを行動に移せる勇気も心底羨ましいと思ってしまいます。そんな青春が輝かしすぎて、読んでいてちょっとむずがゆいときもあるけれど(笑)、そこがいいんです。


「部活」「恋愛」なんかをメインにしてそういう側面を描く漫画は多いと思いますが、『さくらDICORD』は本っ当に「人間関係」自体がメインの漫画。だからどこがどう面白くて…と読んでいない人に説明するのは難しく、読んでいてもピンとこない人にはとことん分からない漫画ではあると思っています。
ただ、そういう仲間たちと過ごす青春というものに何かしら思うところがある方ならば是非読んでみていただきたいなあ、と思うのであります。
「何気ない学生生活をユルユルすごす」漫画があるなら「何気ない学生生活を全力ですごす」漫画があったっていーじゃない。