『弱虫ペダル』渡辺航/週刊少年チャンピオン連載中
舞台も大成功をおさめ、ますます勢いを増している『弱虫ペダル』の21巻が発売されました!
どうなることかと思った舞台化ですが、作り手の皆様が原作を愛していることが伝わってくる最高の結果となり、いちファンとしてとても幸せでございます。舞台レポートはこちらからどうぞ~!
IH3日目、ついに広島呉南・待宮と箱根学園・荒北の闘いに決着の時が訪れます。
20巻のラストで明らかになった待宮の過去、それは昨年のIH・広島大会でのこと。地元開催で期待のかかるなか2年生エースとして出場していた待宮は第2ステージの真っ只中にボトルが割れて水を失ってしまうというアクシデントに見舞われていました。その時前を走っていたのは箱学・福富。待宮は困窮し福富にボトルを譲ってもらえないかと声をかけるも、それを断られていたのでした。そして、そのまま失速した呉南は第2ステージの表彰台を逃し、以来待宮は箱学への強烈な恨みを抱いてきたというのが前回に描かれた回想の内容です。
それに対して21巻では荒北の過去が描かれます。
多くのキャラクターの回想シーンが描かれてきた中でいまだその素性が謎のままだった荒北。口の悪い彼が福富に絶大な信頼を寄せる理由がついに明かされます。
IH編に入ってからというもの各キャラクターの回想シーンが多く、それ自体には賛否分かれるところではあります。
では何故それだけ回想シーンが多く描かれているかと考えると、この『弱虫ペダル』においての個々の強さにはそれぞれが背負っているものや信じているものが大きく関係しているから、という意味が持たされているのではないかとわたしは考えます。
はじめに待宮の回想シーンを読んだとき、漠然とした違和感を抱いたのを覚えています。いままでに描かれてきた数々のキャラクターの回想シーンに比べるとどこか薄い。地元開催のIHに賭けてきた思いも悔しさも理解できる。けれども、それ以来箱学に抱き続けてきた感情は逆恨みそのもの…。
この漠然とした違和感の正体は荒北の過去、そしてこの闘いの結果を見届けることで理解出来ました。この過去回想に感じた薄さこそが待宮の弱さであったと。
かつて「過去に捕われていた」者であった荒北を救ったのは、他でもない福富。福富に、そしてロードレースに出逢ってからというもの速さを、強さをただ純粋に追い求めてきたのが現在の荒北。
回想シーンが多い現在の『弱虫ペダル』だからこそ、それによってキャラクターの位置付け、重要度を描き分けていたのではないか…と感じました。たとえば昨年のIHで悔しい思いをしたという点では総北の金城主将は待宮以上に恨みを抱いてもおかしくないはず。しかし金城は箱学や福富に恨みを抱くことなく己を磨き続けてきた…それが強さに繋がっていったのです。どれだけ強さに純粋か、どれだけ前を向いているか。あえて「過去」を描くことで「過去に捕われない強さ」を表現しているんですね。
しかし、福富はずいぶん色んな人に影響を与えているんだなあ(笑)良くも悪くも。
荒北と福富の信頼関係というのは…何とも一言では言い表せないものがあります。
あまり詳細を語るのもネタバレになりますが、誰よりも早く荒北の加速の意図に気づき、またそれ故に仲間の中でただ一人「振り返らなかった」ことこそ何よりも大きな信頼の証だった…と言えるでしょう。つくづく『弱虫ペダル』はそれぞれの絆の形に熱くさせられる漫画です。
いよいよIH3日目、ゴールに近づき空気が変わってきています。個人的には、大変アツい展開が続いていると思っています!3年生にとっては最後のIH、またこのメンバーで走る最後のレースをどう描ききってくれるのか楽しみでなりません。
ちなみに若干本筋と離れる部分ではありますが、この21巻でもっとも好きな場面は総北・箱学のメンバーがそれぞれ全員揃う瞬間の会話だったりします。ここの場面、小さなフキダシが幾つも重なっているのに誰がどの台詞を発しているか一瞬で解るのが凄いなあと思います。一言一言の台詞をとってもキャラクターがしっかり立っているなあ…と。渡辺先生のキャラクターメイクは素晴らしいの一言です。
過去エントリ
そして彼は覚醒する 弱虫ペダル 1巻/渡辺航 - 漫画脳
気弱な少年の決意 弱虫ペダル 2巻/渡辺航 - 漫画脳
純粋という名の速度 弱虫ペダル 3巻/渡辺航 - 漫画脳
その時誰もが惹かれることを止められなかった 弱虫ペダル 4巻 - 漫画脳
上へ上へと…登るしかないっショ 『弱虫ペダル』5巻 - 漫画脳
それぞれの想い、それぞれの絆 『弱虫ペダル』6巻 - 漫画脳
全身全霊、5人のゴールスプリント 『弱虫ペダル』7巻 - 漫画脳
漫画脳:繋ぐ力、支え合う力~ほのぼのもあるよ! 『弱虫ペダル』8巻(渡辺航)
漫画脳:インターハイ開幕!疾走感、御堂筋、そして腹筋(アブ)へ… 『弱虫ペダル』9巻(渡辺航)
漫画脳:引き継がれていく熱い魂 『弱虫ペダル』10巻(渡辺航)
漫画脳:チームのために。自分のために。 『弱虫ペダル』11巻(渡辺航)
漫画脳:何者にも干渉を許されない関係がある 『弱虫ペダル』12巻(渡辺航)
漫画脳:強者の信念、三様 『弱虫ペダル』13巻(渡辺航)
漫画脳:彼は理屈を欲しない 『弱虫ペダル』14巻(渡辺航)
漫画脳:心理戦の限界を超えた先に 『弱虫ペダル』15巻(渡辺航)
漫画脳:捨て行くものと信じるもの 『弱虫ペダル』16巻(渡辺航)
漫画脳:”チーム”の形は一つじゃない 『弱虫ペダル』17巻(渡辺航)
漫画脳:過去、決別、純粋な強さ 『弱虫ペダル』18巻/渡辺航
漫画脳:そしてついに出逢った2人 『弱虫ペダル』19巻(渡辺航)
漫画脳:主人公を成長させるのは 『弱虫ペダル』20巻(渡辺航)
『弱虫ペダル』・坂道から消えたのはオタク魂ではなくて
漫画脳:描き文字に見る、渡辺航先生イズム
『弱虫ペダル』 小野田坂道と御堂筋翔~最も近くて、最も遠い2人
漫画脳:【超速報】舞台「弱虫ペダル」を観に行ってきましたよ!
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