『弱虫ペダル』渡辺航/週刊少年チャンピオン連載中
箱学・荒北脱落から緊張感が益々増してきたIH3日目。
この最終局面に容赦なくチームを切り離し、”王者”として圧倒的な強さを見せつける箱学。それに対し6人全員が揃うことで力を発揮してきた総北はどう対抗するのか?



総北のIHメンバーは3年生3人・1年生3人という編成です。練習を積み重ね、数々の修羅場をくぐり抜けてきた3年生と1年生の実力差は歴然としたもの。しかし総北3年生たちはすぐさま1年生を置いて進むことではなく、自分たちの背中を見届けさせる…という進み方を選びます。
1年生個々の成長、そして未来の総北をも見据えたであろうその選択肢は実に「6枚のジャージが全部揃って完成形」の総北らしいと言えます。
ですが今泉・鳴子の2人は、ただ後ろで見ていろという先輩たちのその言葉に自分の実力不足を悔やみます。



しかし、そこでその2人の意識を変化させるのが坂道。
この最強の初心者は、教えを吸収することにとにかく純粋なのですね。坂道はロードレースの知識もなければ、言い方はあまりよくありませんが競技者としての「プライド」もまだ芽生る前。ゆえに、今泉・鳴子のように自分のレースが終わると嘆くようなこともないのです。そこにあるのは、まっすぐ3年生たちの背中を見つめる視線だけ。
水を与えられた植木鉢のように、ぐんぐん吸収してはしっかり伸びていく坂道はさながらアサガオのようだと思います。まったく観察し甲斐のある花です。



3年生が強さを見せ、1年生たちはそれを受け止めて今後につなげていく。そうすることで箱学との一騎打ちに入ると思われた総北ですが、主将であり、絶対的エースである金城に何とも残酷なアクシデントが訪れます。
もはや打つ手なしとすら思える状況ですが、その窮地で金城はかつて自身が発した言葉に救われることとなります。
「1人で頑張る必要はない」
「おまえが倒れたらオレが支える」
「他のヤツが倒れたらおまえが支えろ」
いままで後輩はもちろんのこと、3年生の仲間たちも支え続けてきた彼自身が、支えられるということ。「情けは人の為ならず」…ではありませんが、過酷な状況でこそその姿勢が金城自身も救うことになったのだと思います。
「6人全員」に拘り続けたことに対する答えもここに集約されていた気がします。「絶対にあきらめない」…それは、自分だけの力を信じることではなく、チームの力を信じ、仲間の力を信じるということ。



金城が1年生1人1人にかけた言葉が、誰よりも彼らの個性を理解した言葉であることに涙が堪えられませんでした…。この状況においても仲間の不安を拭い去ることに徹した金城主将の強さ。
もう1人、総北3年の”暴走の肉弾頭”田所の強さ…彼の姿も1年生の急成長を促すこととなるわけですが、この辺はまた後々の展開につながるわけでして、後日に言及したいと思います。


ちなみに現在この『弱虫ペダル』も含めた週刊少年チャンピオンのスポーツ漫画共同の「チャンピオン青春!スポ漫フェア」も開催中です。

実はスポーツ漫画の熱さに定評のあるチャンピオン…!これを機に、弱虫ペダルしか知らない方にもチャンピオンのスポーツ漫画はほかにも面白い作品がいっぱいあるということを知っていただけたらいいな~と思います。


過去エントリ
そして彼は覚醒する 弱虫ペダル 1巻/渡辺航 - 漫画脳
気弱な少年の決意 弱虫ペダル 2巻/渡辺航 - 漫画脳
純粋という名の速度 弱虫ペダル 3巻/渡辺航 - 漫画脳
その時誰もが惹かれることを止められなかった 弱虫ペダル 4巻 - 漫画脳
上へ上へと…登るしかないっショ 『弱虫ペダル』5巻 - 漫画脳
それぞれの想い、それぞれの絆 『弱虫ペダル』6巻 - 漫画脳
全身全霊、5人のゴールスプリント 『弱虫ペダル』7巻 - 漫画脳
漫画脳:繋ぐ力、支え合う力~ほのぼのもあるよ! 『弱虫ペダル』8巻(渡辺航)
漫画脳:インターハイ開幕!疾走感、御堂筋、そして腹筋(アブ)へ… 『弱虫ペダル』9巻(渡辺航)
漫画脳:引き継がれていく熱い魂 『弱虫ペダル』10巻(渡辺航)
漫画脳:チームのために。自分のために。 『弱虫ペダル』11巻(渡辺航)
漫画脳:何者にも干渉を許されない関係がある 『弱虫ペダル』12巻(渡辺航)
漫画脳:強者の信念、三様 『弱虫ペダル』13巻(渡辺航)
漫画脳:彼は理屈を欲しない 『弱虫ペダル』14巻(渡辺航)
漫画脳:心理戦の限界を超えた先に 『弱虫ペダル』15巻(渡辺航)
漫画脳:捨て行くものと信じるもの 『弱虫ペダル』16巻(渡辺航)
漫画脳:”チーム”の形は一つじゃない 『弱虫ペダル』17巻(渡辺航)
漫画脳:過去、決別、純粋な強さ 『弱虫ペダル』18巻/渡辺航
漫画脳:そしてついに出逢った2人 『弱虫ペダル』19巻(渡辺航)
漫画脳:主人公を成長させるのは  『弱虫ペダル』20巻(渡辺航)
漫画脳:一つの絆の境地 『弱虫ペダル』21巻(渡辺航)

『弱虫ペダル』・坂道から消えたのはオタク魂ではなくて
漫画脳:描き文字に見る、渡辺航先生イズム
『弱虫ペダル』 小野田坂道と御堂筋翔~最も近くて、最も遠い2人

漫画脳:【超速報】舞台「弱虫ペダル」を観に行ってきましたよ!