『ガキ教室』小沢としお/週刊少年チャンピオン連載中
2012年1月。総計33巻に及ぶヤンキー大河『ナンバ』シリーズ完結から約5か月、小沢としお先生の新連載が週刊少年チャンピオン誌上で開始されました。
『ナンバ』では主人公・剛の家族譲りのヤンキー/普通の高校生活という二重生活の決着を描ききる纏め方で、近年のチャンピオンでは珍しいとすら思えるストーリーを「完走」させての大団円。その力量を見せつけられた読者としては、小沢先生がチャンピオンに帰還される日を心待ちにしていました。



さて新連載の気になるジャンルは教師もの。
その名も『ガキ教室』!
『ナンバ』シリーズはチャンピオンのヤンキー作品フェア『悪ガキフェスタ』にも名を連ねていましたが、今回は悪ガキではなくクソガキ。まだまだ子供とはいえそれぞれが深い思惑を抱えた複雑な年頃である中学生。そんな生徒たちが何十人と詰まった学級を受け持つことになったのは…元ホストという経歴を持つチャラすぎる新米教師・片桐晶25歳!生徒もクソガキならば、教師も問題児…。熱血でもない、真っ直ぐでもない。けれどもその代わりに綺麗事もない、新感覚のスクールコメディです。



主人公の晶は25歳にして波乱の職業遍歴を持ち、それまではホストクラブの雇われ店長として働いていたもののオーナーに騙されて多額の借金を背負う人生の崖っぷちに立たされていました。
そこに手を差し伸べたのは、かつて晶の里親だった華沢という女性。教員免許を取得しているにも関わらず、何故か「教師」になることだけは拒み続けた晶ですが、ホテルグループの代表でありながら中学校の民間人校長も勤める恩師・華沢校長の薦めと、”教師として働くならば借金の肩代わりをする”という言葉に押されてついに新任の数学教師として中学校に勤めることになります。



受け持つことになった1年3組は前担任のベテラン教師の手にも負えなかった崩壊寸前のクラス。若くて軽い新任教師をナメてかかる生徒たちを前に、初日から
「ガキが大っ嫌いなんだよ!特にお前らみたいな中坊!!」
「ぜーったいオレに面倒かけんなよ!!」
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と断言する晶。これはある種の宣戦布告みたいなものです。当然、波乱が起きないわけがない。



教師の器量を見定めながら態度を決める子供たちにとって、事なかれ主義で通そうとする晶のやり方は大不評。
しかし、次々襲いかかる生徒や保護者たちのトラブルに直面したときの晶はその教師らしからぬ考え方や人生経験が功を奏して危機を切り抜けていきます。
授業を荒らす問題児を抱えるヤンキー家族への家庭訪問ではたまたま『クローズ』を愛読していたことから父親と意気投合、ホスト仕込みの話術で盛り上げて調子を合わせる…とまったく教師らしくない展開に。
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しかしその流れの中でも父親の「コイツ…最強にして最高な男…なれるかな?」という問いに対する核心を突いた返答は見事な物でした。
実際事なかれ主義な考え方であることは確かで、かなり行き当たりばったりなやり方ですが若くして豊富な人生経験がものを言うのか、人を見る目や物事の本質を見極める目は備わっているようです。毎回ギリギリのところで切り抜ける晶先生の仕事ぶりに不思議な痛快さを感じます。教師主人公の漫画としては新感覚の読み心地なのではないでしょうか。

 

因みに晶と校長の関係や、晶自身の過去、そして何故ここまで「教師」を拒んでいたのかなど未だ明かされない部分も多いです。それらが明かされる時はまたこの作品の面白さが増すのではないかと期待しています。
ギャグメインからスタートしてドがつくシリアス路線へ転がった驚愕のストーリー漫画でもある『ナンバ』シリーズの後ということで期待度は必然的に高かったわけですが、小沢先生の漫画力の高さは確かでした!『ガキ教室』はコメディ路線ですが微妙な年頃の中学生たちを中心とする悩みも心の闇もしっかり描いてくれています。


あと、作中でギャグとしてツッコミまで描かれている部分以外の面白さがやっぱりうまいんですよねえ。シノケン(晶のクラスの生徒)がエロ本を万引きして一悶着あったときに本屋の店長に対して「ボクを…タイホしてください」と両手を差し出す場面とか、まったく周囲からのツッコミないんですがそんなこと言われても店長は逮捕できないからなあ、こいつアホだなあって読んでて妙に笑えるんですよ。こういう本編とも大きな関わりのない部分のうまさが総合的に「読んでて面白い漫画」を形成していると思えます。やっぱりチャンピオンに小沢先生は必要だなあ。ドラマ化狙えるんじゃないかしら?大人にもオススメ出来る作品です。


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