『弱虫ペダル』が徐々に人気を獲得しつつあった数年前。『月刊連載の『まじもじるるも 魔界編』と並行しての週刊連載に加え、カラーや増ページの連発…。それでも自転車には乗っている渡辺先生の姿に対し、ネット上では同名の主人公とかけて『いけない!ルナ先生』の名台詞「わたるが死んじゃう~!!」という心配とネタ半々の声が上がる時期がありました。



そして現在。
数年前のチャンピオン読者たちに言いたい。
「しんじゃうどころかもう一本週刊連載はじまったよ」と…!



というわけで、今週発売のチャンピオンから本編とのW連載『弱虫ペダル SPARE BIKE』がスタートしました。
予告ではどんな内容になるかがまったくわからなかったのですがW連載ということなのでショートかな?などと想像していました。ところがフタ開けてみてびっくり、初回はカラー3ページ+16ページと本編レベルのページ数ですよ…。
気になる内容はというと、本編では引退間近の3年生キャラたちの過去の物語とのことで見開きカラーには総北・箱学・京伏・呉南の3年生キャラたち総勢10名が描かれています。


ある日鳴子が見つけた部室の壁にぽっかり開いた大きな穴。
その穴を開けたのは意外なことに巻島先輩だといいます。
そこから幕を開ける第一回は、総北に入学したての頃の巻島先輩が主役となるエピソード。
それまでずっと一人で自転車に乗っていた巻島さんは自転車競技部のある総北に入学してすっかり浮かれ気味。
2012081701140000
こんな具合に異様なオーラの笑顔をふりまき学校に向かいますが、そこに待っていたのは予想以上に厳しい高校生活の現実…。
やはり昔からどこか異端ともいえる存在感を放っていた巻島さんに、飛びぬけた個性は抑えられがちの学校生活は窮屈なもの。
それでも自分には自転車がある、活躍して認められれば世界は変わると自転車競技部へ向かいます。
しかしさらに待ち受けていたのはつらい現実。



本編でも坂道と初めて共に坂を登ったときに語られていましたが、巻島さんの完全な自己流のダンシングを見た先輩たちは爆笑しながら「基本からやり直した方がいい」「フォーム直してやる」と口々にそのやり方を否定するのでした。
「自転車は自由」
という唯一の希望をもがれた巻島さんはすっかり傷心し、これからも1人で走ることを決意します。
2012081701150000
一方部室には既に競技者として名が知られている金城、その名を聞いて部室の隅で一人反応する田所の姿がありました。
そして当時のキャプテン、寒咲さんはもう一人居たはずの緑髪の一年を気にかけているようですが…。



こうして見ていると、坂道と巻島さんはクライマーという特性だけでなくずいぶん似ているところがあったのだなあ…と思いました。
方向性は違えど、ずっと1人で過ごしてきて高校入学を境に部活で世界を変えようと希望を抱いていたところで挫折…と改めて文字にしてみると本当によく似ていますね。
自転車競技に出逢う前の坂道が体育教師の言葉に傷ついたように、”悪気はない、むしろ気遣ったつもりの言葉”の無意識な刃に傷つけられていた巻島さん。その独特のダンシングを「かっこいい」と言い、真似までしようとした坂道に照れていたのは本当にそれまでその走りを批判こそされても褒められることが無かったからなのだろうなあ、と改めて感じます。



『弱虫ペダル』は小野田坂道が主人公であって彼が総北高校に入学してから始まった物語ですが、個性的かつ魅力的な先輩キャラクターが背負うものも度々レースの最中に過去回想シーンといて描かれてきました。
回想シーンが多すぎるとも言えるのですが、どのキャラクターにもこのインターハイに対して抱く想いがあるしそれが3年生…最後のインターハイとなれば尚更。
それでも回想シーンとして描くには限界もありますので『SPARE BIKE』の連載で補うというのは良い形かもしれません。
さらに言い方はあまり良くないかもしれませんが、ここまでキャラクター人気が高まってしまうと現在本編に登場する大多数のキャラクターが引退してしまうインターハイ後がどうなってしまうのか少々不安ではあるのです。
もしかしたらこれから先『弱虫ペダル』本編には現3年生が殆ど登場しなくなり、『SPARE BIKE』では3年生たちの過去が描かれる…ということになるのかもしれないですね。



渡辺先生はこれだけの仕事量になっても描けることは描ける、という人だと思うのです。
ただここのところまた『まじもじるるも 魔界編』の方の作画が少々荒れているように感じていたこともあって週刊連載2本立ての告知は正直なところ不安が強かったというのが本音でした。
チャンピオンの一愛読者として思えば連載枠がこれで消費されるのは他の作家さんのチャンスをつぶしてしまうことにもなりかねないわけですし、実際に読んだ後でも手放しに大歓迎!とは思えない自分ではあるのですが…
しかし。もしも「原作が渡辺先生で、作画が別の作家の弱虫ペダル外伝」だったらと考えるとそれはそれはもう、悪寒がするくらいありえないなとも思ったのです。
「道路もキャラクター」と考えているという渡辺先生。ゆえにペン入れも背景含めてすべて自分でしていると語られていたこともありました。
複雑な部分はあっても、渡辺先生が生み出したキャラクター達が渡辺先生の手でまた違った一面を見せてくれる幸せをいまは楽しんでいきたいと思います。



いったいどれくらいこの『SPARE BIKE』の連載が続くかはまったくもってわかりませんが、単行本がいつ出るかもわからないのでチャンピオン買うならいまだぜ!!!!!(強引)
ほかにも面白い漫画がいっぱい載っていますのぜ!あと『まじもじるるも 魔界編』もヨロシクね!!