『弱虫ペダル』渡辺航/週刊少年チャンピオン連載中
ものすごいインパクトを放つ御堂筋君が表紙の『弱虫ペダル』25巻が発売になりました。帯をかけたときのことを全く想定していない構図が素敵です(今回、新刊発売時は帯なしでしたが舞台告知やフェア等で帯が付くことはありうると思うので…)。


先頭を行く今泉に追いついた坂道。2人となった総北を御堂筋が抑えつけようとするもエースとして覚醒した今泉は簡単には折れない、屈しない。ギリギリの闘いを繰り広げる因縁の2人の対決、勝者となるのは…?



御堂筋本人が作品に登場するずっと前から「打倒・御堂筋」を掲げて練習し続けた今泉。エリート故にメンタルが弱い部分もあり、インターハイ中挫けそうになったことも何度もありました。しかしこのIH3日目という状況で主将でありエースでもあった金城や盟友・鳴子の魂を引き継ぎ、己が「総北のエース」であるという自覚が芽生えてからというもの圧倒的な強さを見せつけてきました。
しかし本当に今泉が強くなったと言い切るには「御堂筋越え」は絶対的に必要なこと。そしてこの巻は”今泉が真に覚醒する瞬間”を捉えた巻でした。


そんな限界越えバトルが繰り広げられている一方で、ゴール付近ではたまたま富士山を見に来たのにバスを乗り間違えてIH会場付近に来てしまった坂道のお母さんと箱学・真波を応援しに来た委員長がひょんなことで知り合ってしまいます。
自転車のレースというものがまったくわかっていないお母さんと一生懸命説明する委員長のやりとりや委員長の言動だけで真波へ抱く彼女の想いを見抜いてしまうお母さんの鋭さは微笑ましくも可笑しくて、激しいレースの最中に一服の清涼剤ともなっているのですが、ふと会話中にお母さんが我が子を思ってこんな言葉を漏らしています。
「大きな… 何か
皆の役に立つような
大きな役割を
まかされるといいのよね
男の子って
そういう時に成長するものでしょう?」
妙なところは鈍いのに妙なところでは鋭い、母親という存在もまたそういうものなのかもしれませんが、まさに坂道はその時、チームの責任を背負って走るという大きな役割をまかされて急成長を遂げている最中でした。



しかし、この言葉をまさに体現していたのは今泉のほうであったと単行本で読んで気づかされます。
投げ捨ててしまおうとすら考えたレースでも自分の事を必要としてくれた仲間がいたこと、その仲間に力を与えられたことを実感し、だからこそそれらをすべて背負ってトップを獲ると決意すること…。本当の意味での強さを得て成長を遂げたといえます。
しかし御堂筋のやり方を否定するかといえばそうではありません。御堂筋も強かった。「仲間」を信じるのは甘いと言い切るような彼を「一人だから弱い」とは切り捨てないのが『弱虫ペダル』の素晴らしいところです。そんな御堂筋を信じ、彼を変えようなどとは決してしなかった京都伏見の石垣の発した言葉が光ります。



御堂筋を制し、単独首位に立った今泉。あとは独走しゴールに突っ込むまで…と思われたところで彼を襲うのは予想外の相手。予想外に対抗できるのは予想外のみ!…というわけで、ゴール直前、真の最終決戦が幕を開けつつあります。どうする?どうなる!


過去エントリ
そして彼は覚醒する 弱虫ペダル 1巻/渡辺航 - 漫画脳
気弱な少年の決意 弱虫ペダル 2巻/渡辺航 - 漫画脳
純粋という名の速度 弱虫ペダル 3巻/渡辺航 - 漫画脳
その時誰もが惹かれることを止められなかった 弱虫ペダル 4巻 - 漫画脳
上へ上へと…登るしかないっショ 『弱虫ペダル』5巻 - 漫画脳
それぞれの想い、それぞれの絆 『弱虫ペダル』6巻 - 漫画脳
全身全霊、5人のゴールスプリント 『弱虫ペダル』7巻 - 漫画脳
漫画脳:繋ぐ力、支え合う力~ほのぼのもあるよ! 『弱虫ペダル』8巻(渡辺航)
漫画脳:インターハイ開幕!疾走感、御堂筋、そして腹筋(アブ)へ… 『弱虫ペダル』9巻(渡辺航)
漫画脳:引き継がれていく熱い魂 『弱虫ペダル』10巻(渡辺航)
漫画脳:チームのために。自分のために。 『弱虫ペダル』11巻(渡辺航)
漫画脳:何者にも干渉を許されない関係がある 『弱虫ペダル』12巻(渡辺航)
漫画脳:強者の信念、三様 『弱虫ペダル』13巻(渡辺航)
漫画脳:彼は理屈を欲しない 『弱虫ペダル』14巻(渡辺航)
漫画脳:心理戦の限界を超えた先に 『弱虫ペダル』15巻(渡辺航)
漫画脳:捨て行くものと信じるもの 『弱虫ペダル』16巻(渡辺航)
漫画脳:”チーム”の形は一つじゃない 『弱虫ペダル』17巻(渡辺航)
漫画脳:過去、決別、純粋な強さ 『弱虫ペダル』18巻/渡辺航
漫画脳:そしてついに出逢った2人 『弱虫ペダル』19巻(渡辺航)
漫画脳:主人公を成長させるのは  『弱虫ペダル』20巻(渡辺航)
漫画脳:一つの絆の境地 『弱虫ペダル』21巻(渡辺航)
漫画脳:総北ジャージは真の「完成形」へ 『弱虫ペダル』22巻(渡辺航)
漫画脳:誰よりド派手に赤く燃え上がれ!総北高校の”赤いマメツブ” 『弱虫ペダル』23巻(渡辺航)
漫画脳:「得体の知れない男」たちの本気の闘い 『弱虫ペダル』24巻

『弱虫ペダル』・坂道から消えたのはオタク魂ではなくて
漫画脳:描き文字に見る、渡辺航先生イズム
『弱虫ペダル』 小野田坂道と御堂筋翔~最も近くて、最も遠い2人

漫画脳:【超速報】舞台「弱虫ペダル」を観に行ってきましたよ!