本屋さんの心のバイブルとして名高い、久世番子先生の『暴れん坊本屋さん』の完全版が「平台の巻」「棚の巻」の上下巻編成となって刊行されました。日販通信(取次の日販が発行している書店員向け小冊子、わたしもあまり目にしたことがありません)に掲載された『本販通信』、新書館の注文書に掲載された『暴れん坊営業さん』、そして描き下ろしも収録されている豪華完全版。これを読んで書店員以外の人は笑って、書店員の人はキズをえぐられればいいと思います。おそらく完全版の赤を基調とした装丁は書店員の血の色ですね。



…うん。「なんで娯楽のためにマンガ読んでるはずなのにこんなに痛々しい気持ちになってるんだろう…☆ミ」と思いながらも読んでしまう書店員はわたしだけではないはず。まあ好きで書店で働こうなんていう人は大半がドMといっても過言ではないですからね。あるある言いながら傷口を広げられるのもまた楽し…または、「ああ、こんな思いしてるのアタシだけじゃないんだ…!」と心の拠り所にするにももってこいです。…どちらにしてもあまり前向きに聞こえないのは何故だろう!



「マンガだから大袈裟に描いてるんでしょう?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、この『暴れん坊本屋さん』は恐ろしいほど現実的と捉えていただいて差支えないと思います。店の大小や地域等で当然多少の違いはありますが、都内の駅ナカ店と街の中小規模書店を経験している自分が「だいたいこんなもん」と思うのだからだいたいこんなもんです。久世番子先生が書店でアルバイトをされていたのが2000~2006年とのことですが、現在との大きな違いは「図書券」が発行されていないことやネット注文が主流になってきていることくらいではないでしょうか?そう考えると出版業界って少なくともここ10年大して進歩していな…(省略されました



勢いのあるギャグ漫画調で描かれてはいるものの、細部の描写は実に細かく丁寧なんですよね。
新刊梱包の結束による表紙(カバー)の傷みとか、リアルすぎて(見覚えがありすぎて)泣けてきますね…!このリアルさが書店員の心をつかんで離さない理由のひとつだと思います。「こんな部分までこんなにちゃんと描いて、世間に知らしめてくれていた人がいたんだ…!」というかんじで。痛々しくも嬉しい。(嬉しいけど痛い)



世の中にラクな仕事なんてない…というのは重々承知の上ですが、書店員にしか理解し得ない苦労も少なくはないもので…。出版業界独特のルールや用語もわかりやすく描かれている『暴本』の功績は大きい、と思います。未読の方には是非読んでもらいたい!そして…少しでも書店員の憂いをご理解いただけたら、贅沢は言わないのでお問い合わせの際には正確な本のタイトルもしくはISBNコードをですね…(血涙)。
これから書店で働いてみたいと思ってる人もぜひ『暴本』を読んで心を鍛えてから挑んでください☆!