『ラノベ王子☆聖也』さかもと麻乃/コミックジーン連載中
毎月幾多ものラノベが出版されるラノベ戦国時代…この作品は、萌えるラノベを世に送り出すために日夜闘う男たちの物語(ただしイケメンに限る)である…!
「ただしイケメンに限る」の用法としては間違っていますが細かいことは置いておいて。「漫画編集者」「ラノベ作家」を描く漫画はいくつか見かけた記憶がありますが、自分の観測範囲では「ラノベ編集者」をモチーフにした作品は初めて見かけた気がします。しかも全員イケメンって!設定だけを見ると萌えに傾倒する残念イケメン系のギャグを想像しがちですが、ところがどっこいめちゃくちゃ熱い作品なのです。
有名ラノベレーベル「ジーンファクトリー・文庫G編集部」でアルバイトをすることになったラノベ大好き高校生・伊吹総司。彼が編集部で目の当たりにしたのは謎のイケメンが作家志望の青年に熱弁をふるう姿。
はじめはチャラい上にイタい妙なイケメンに見えたものの、ラノベに対する情熱は確かに伝わってくる人物・その人こそが文庫G編集部の編集長・佐久間聖也。これは編集長を筆頭にイケメンだらけのラノベ編集部の愛と苦悩の物語!なのである。
「もっと萌えるハートを熱くしろ!」
聖也さんはイケメンかつ凄腕の編集者、けれど何よりも強力なのはそのラノベ(そして萌え)に対するパッション。
「萌えで世界を奪おう!!萌えない世界に意味はない!!」
こんな台詞を叫んで女性たちを見惚れさせられるのは確かにイケメンだからこそなせる業ではありますが…聖也さんが恰好良いのは容姿だけではありません。
ラノベを読む量も仕事量も規格外。バイト初日の伊吹君がバイク便に原稿を渡し間違えてしまったときは道行く人から自転車を買い取って追いかけてまで原稿を受け渡すムチャっぷり。しかし微塵も苦労を伺わせない。いくら好きだからってそこまで出来る人はそうはいないです。口先だけでなく態度で示すラノベ愛。部下からの信頼の厚さもうなずけます。
萌えに傾倒している=残念、じゃなく萌えに情熱を注いでいるからこその恰好良さ。これって別に「ラノベ」「萌え」に限った話ではなくて。世間的に大きな声でハッキリ言いづらい趣味や好みがあると自覚がある人は聖也さんが貫く萌えへの熱意を受けて背筋が伸びる部分があるんじゃないかなと思います。周囲にどう見られるかなんて気にせず「好き」を貫き通せる人ってやっぱりカッコイイ。
そんな聖也さんを中心に据えた文庫G編集部の仕事の様子はというと意外とリアル。ラノベ編集の現場を見てきたことがあるわけではないので言い切るのは難しいですが、「連絡のつかないイラストレーターさんの落書きが画像投稿サイトにアップされた」とか「敏腕だけれどどこかラノベを馬鹿にしていて”商品”と言いきっちゃう営業」とかありそうすぎて想像しただけでこっちの胃が痛くなりそうです。見た目(イケメン揃い)や演出がファンタジーがかっているだけで内容は堅実な編集部漫画しているのが面白い。
(↑ファンタジーすぎる演出の例)
この漫画の出版元でもあるメディアファクトリーのラノベレーベルをモデルにしているだけあって、作中では見たことがあるタイトルや表紙が細かくパロディされています。自分はラノベ担当書店員でもあるので思いっきり見覚えのあるような表紙がいっぱい出てきてニヤニヤしてしまいました!
イケメン揃い、だけどイケメンさで補正をかける必要がない熱さと面白さです。見た目で判断せず男性にも読んでもらいたいな~これは。とてもオススメ。
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