もりしげ先生、約一年ぶりとなる単行本!
そして、少チャンマーク付のチャンピオン少年誌ブランドからの単行本は『花右京メイド隊』最終巻以来なのでなんと5年以上ぶりになるんですねえ…時の流れるのは早いものです。
昨年創刊された週刊少年チャンピオンの兄弟誌「別冊少年チャンピオン」で連載中のこの作品、『サクラサクラ』は超少子化時代となった近未来が舞台のお話です。
少子化が極限に達したのが物語の15年前。
その後子供たちは再び生まれるようになったものの、何故かこの年に生まれた子供たちは「最後の世代(ラストジェネレーション)」と呼ばれていました。
ドラマやネットの中で知った「昭和」の文化を愛する草食系少年、花咲春。
国を駄目にした立場でありながらのうのうと長生きして今も裏で国を牛耳る「御老人」たちを忌み嫌う武闘派少女、姫城桜子。
そして無機質な表情と人間離れした身体能力を持つ謎だらけの銀髪無口美少女、敷島桜花。
たった3人で昔ながらの学園ドラマのような学校生活を送ることになった「最後の世代」たちがこの物語の主人公。
貴重な子供たちとしてある意味では大切にされながらも、しかしまたある意味では研究対象として常に監視されているという息苦しい生活を送る子供たち。
生まれも育ちもバラバラで、周囲に同世代の子供も殆どいなかった環境で育った「最後の世代」たちが集まって共に過ごす中でそれぞれが他人との絆を得ていきます。
何はなくとも思春期の男女が共に生活(夜も同じアパートでほぼ丸一日一緒に暮らしている状態)しているわけなので、喧嘩もあれば仲直りもあり、そしてほのかなエロトラブルもある一見ベタにわかりやすい青春ラブコメなのですが、
その背景には国の危機であったり、御老人たちの思惑であったりと非常に黒いものが渦巻いています。
「異常」が「当たり前」となった国で、でもやはりそれが「異常」であると気づいている子供たちが「平凡」を装って暮らしている。
絶滅危惧種となった人間たちが在りし日の「学園ラブコメ」をなぞる儚さ。
そんな作品の雰囲気全体が、どこか美しくも儚い桜の花と重なる気がします。
「最後の世代」3人の様子はというと、懐古主義でぼんやり草食系の春くんと大人を憎んで周囲との距離を縮めようとしてこなかった姫城さんのイザコザの間に無口で謎だらけの敷島さんを配することで不思議なまとまりが出ています。
敷島さんは無口無表情だけれど、他人とのコミュニケーションを渇望している少女。
そんな彼女の不器用さ(身体能力はずばぬけて超人的ですが)を見守るような形で、ツンツンな姫城さんもトゲを抜かれていくような。ベタベタ仲良ししてるわけじゃないけど、温かい関係です。
3人の学校の教師はちょっぴり何を考えているかわからない男性教師、唯野先生とロリバ…幼い見た目の体育教師、橘先生。
唯野先生はこの学校にまつわる裏事情を知りつつもはぐらかし、しかし「最後の世代」を優しく見守ります。
橘先生は国の貴重な「最後の世代」たちに対して本気で挑戦する大人げなさですが、その大人げなさが腫れものを触るように育てられてきた子供たちにとっては刺激となる存在。
この2人の個性的な教師たちも美しく儚い「学園ラブコメ」の世界に彩りを添えています。
彼らがこの生活を通して成長していったとして、この国の先には何があるのかすらまだ見えてこないのが現状。
そんな脆く儚くて世界の中で煌めく彼らから、目が離せません。
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