ついにこの時がやってきました。
『弱虫ペダル』、インターハイ決着の時。
渡辺先生が今巻では珍しく作品について語る後書きを書かれていますが(普段は自転車についての豆知識などがメインですね)、なんと9巻から始まって19巻分もまるまるIH編だったのですね。現時点での作品の大半を占めるIH編…その決着の時。『弱虫ペダル』にとってひとつの大きな節目であることは間違いありません。


坂道と真波、一年生同士の一騎打ち。
いままでひたすら得体の知れない、底が見えない…一言でいえばつかみどころがないキャラクターだった真波山岳。いよいよ彼が自転車に乗るきっかけとなった過去の出来事が回想シーンとして描かれました。
いやしかし、まさかそれが真波自身の回想ではなく彼の幼なじみの女子、「委員長」の視点からのものだとは誰が想像したでしょうか。
山岳少年の「生」を実感することへの強い執着と自転車に対する想いの原点を見せつつも、委員長視点で描かれることで彼の特徴ともいえる「つかみどころのなさ」は打ち消されない絶妙さ。
その上ヒロイン不在とすら言われるこの作品で、(わたしから言わせてもらえば渡辺先生の真骨頂といっても過言ではない)恋する乙女の可憐なモノローグをあえてこの”インターハイの決着寸前”という最重要場面にぶちこんできたという。…すごい。あえて一言で言うならば、とにかく渡辺先生は絶好調だと思います。
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委員長が山岳に対し長年積み重ねてきた想いの結晶をぶつける。一方、何の因果かそこに居合わせた坂道のお母さん。坂道が自転車競技について何度説明しても理解出来なかったマイペース母さんですが、目の前で全力の闘いを繰り広げる自分の息子の姿を見て、理由や状況などをすべて超越した部分でその姿勢を理解してたった一言言葉を投げかけます。委員長の視点からの山岳の過去がじっくり描かれているのに対してその間はまさに3ページ。だけど、この場面は「瞬間」だからこそ最高なんだと思います。


…正直なところ、一度チャンピオンで読んでいるはずなのにこの27巻は初っ端から読んでいて泣きっぱなしでした。冷静に感想文とか提出できるような状態じゃないっすよ!
こうしてIH決着が着く時がやってきて、色々な想いがあります。坂道はすっかり強いのかと思うとやはりそうではなくて、このIH結果によってまた戸惑う時や悩ませられるときも訪れることでしょう。そもそも彼の強さは、「友達」「仲間」への想いが強いからこそ生まれ出でるもの。総北3年生が退くこの後坂道が強くなるための支えとなるものは何なのか?
かつて合宿のレースで1年生たちに敗北を喫し苦汁をなめさせられた2年生コンビ、手嶋・青八木の急成長の兆し。これが今後の展開のヒントでした。この2人が元々大好きな自分としては、これからの展開に期待が止まりません。『弱虫ペダル』はいまこそ本当に始まったのではないかとすら思っています。
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…さらに熱いIHが終わった後のアキバ回がこれまた最高で。
坂道が3年生3人にそれぞれ自分なりに考えたグッズをプレゼントするという回なのですが…考えてもみたら、「電車賃を浮かせてガチャガチャを回すために」自転車でアキバに通っていた坂道が。3人にこうして(若干ズレているとしても)プレゼントを選んで購入して渡すために自分のお小遣いをどれだけ節約していたのかと考えるとなんだかもうそれだけでまた涙が出てきそうになります。泣きすぎなのはわかっているんですが!


一つの節目でもあり、一つの始まりでもある27巻。
わたしはやっぱり心の底から渡辺航先生の描かれる漫画が大好きなんだなあ、と改めて実感させられました。そう実感するのも、何度目かわかりませんけど(笑)



過去エントリ
そして彼は覚醒する 弱虫ペダル 1巻/渡辺航 - 漫画脳
気弱な少年の決意 弱虫ペダル 2巻/渡辺航 - 漫画脳
純粋という名の速度 弱虫ペダル 3巻/渡辺航 - 漫画脳
その時誰もが惹かれることを止められなかった 弱虫ペダル 4巻 - 漫画脳
上へ上へと…登るしかないっショ 『弱虫ペダル』5巻 - 漫画脳
それぞれの想い、それぞれの絆 『弱虫ペダル』6巻 - 漫画脳
全身全霊、5人のゴールスプリント 『弱虫ペダル』7巻 - 漫画脳
漫画脳:繋ぐ力、支え合う力~ほのぼのもあるよ! 『弱虫ペダル』8巻(渡辺航)
漫画脳:インターハイ開幕!疾走感、御堂筋、そして腹筋(アブ)へ… 『弱虫ペダル』9巻(渡辺航)
漫画脳:引き継がれていく熱い魂 『弱虫ペダル』10巻(渡辺航)
漫画脳:チームのために。自分のために。 『弱虫ペダル』11巻(渡辺航)
漫画脳:何者にも干渉を許されない関係がある 『弱虫ペダル』12巻(渡辺航)
漫画脳:強者の信念、三様 『弱虫ペダル』13巻(渡辺航)
漫画脳:彼は理屈を欲しない 『弱虫ペダル』14巻(渡辺航)
漫画脳:心理戦の限界を超えた先に 『弱虫ペダル』15巻(渡辺航)
漫画脳:捨て行くものと信じるもの 『弱虫ペダル』16巻(渡辺航)
漫画脳:”チーム”の形は一つじゃない 『弱虫ペダル』17巻(渡辺航)
漫画脳:過去、決別、純粋な強さ 『弱虫ペダル』18巻/渡辺航
漫画脳:そしてついに出逢った2人 『弱虫ペダル』19巻(渡辺航)
漫画脳:主人公を成長させるのは  『弱虫ペダル』20巻(渡辺航)
漫画脳:一つの絆の境地 『弱虫ペダル』21巻(渡辺航)
漫画脳:総北ジャージは真の「完成形」へ 『弱虫ペダル』22巻(渡辺航)
漫画脳:誰よりド派手に赤く燃え上がれ!総北高校の”赤いマメツブ” 『弱虫ペダル』23巻(渡辺航)
漫画脳:「得体の知れない男」たちの本気の闘い 『弱虫ペダル』24巻
漫画脳:少年たちが成長するとき 『弱虫ペダル』25巻(渡辺航)
漫画脳:頂上決戦に残る者たちの本質 『弱虫ペダル』26巻(渡辺航)

『弱虫ペダル』・坂道から消えたのはオタク魂ではなくて
漫画脳:描き文字に見る、渡辺航先生イズム
『弱虫ペダル』 小野田坂道と御堂筋翔~最も近くて、最も遠い2人

漫画脳:【超速報】舞台「弱虫ペダル」を観に行ってきましたよ!