出逢えて、よかった。　『まじもじるるも　魔界編』4巻(渡辺航) : 雑食商店街３３７３番地

『まじもじるるも　魔界編』渡辺航/月刊少年シリウス連載
2007年から月刊少年シリウスで連載された『まじもじるるも』シリーズがついに完結。一度改題を挟んで『まじもじるるも　魔界編』となって４巻目、トータル11巻という巻数ですが現段階では渡辺航先生作品の中では最長連載期間を誇ります。2008年から週刊少年チャンピオンで『弱虫ペダル』の連載が始まり、数年で舞台化・アニメ化されるほどの大ブレイクした傍らで『魔界編』移行時のひと月を除けば休載もなく『るるも』の連載も続けられてきたわけで…。すごいですよね本当に。

はじめに読切版『まじもじるるも』がスタートしたのは少年シリウスの本誌ですらなく、ギャグ作品だけを集めた別冊付録の『お笑いチビウス』でした。別冊付録とはいってもシリウス初登場の大和田秀樹先生・高遠るい先生・大島永遠先生・市川ヒロシ先生といった豪華作家陣が名を連ねて新作読切を描いている立派な企画。その中で好評だったという『まじもじるるも』はシリウス本誌への読切再掲載を経て本連載化されました。どの程度の評判があったのかはわかりませんが、この待遇は異例だったのではないかと思います。本連載化に際しての裏話は今回のあとがきで触れられていますが、本連載とはいっても元は２巻までの予定だったとのこと。『魔界編』のシリアス展開どころか、無印全７巻で楽しんだ数々のコメディ回にももしかしたら出逢えていなかったのかもしれない…そう思うと、どんなに大変でも『弱虫ペダル』『まじもじるるも』の同時連載という偉業をこなされた渡辺先生には頭が下がる思いです。

わたくし自身は、何度も言っていますが『制服ぬいだら♪』からの渡辺先生のファンです。かれこれ数えると約１０年になるわけですが、この『まじもじるるも』の完結ではじめて「打ち切りではない」渡辺先生作品の完結を経験することになりました。
自分の記憶にある限りでは、『制服ぬいだら♪』は『電車男』のコミカライズのために終了し、その『電車男』も当初の予定よりも早期の終了となったと聞いています。その後の『ゴーゴー♪こちら私立華咲探偵事務所。』も単行本売上がふるわず打ち切り…そんな苦い時代を経験してきたファンとしては、渡辺先生の描く「円満終了」がどういったものになるのか正直なところ少し不安な思いもありました。
しかしまさにそんな思いは杞憂でしかなく、『まじもじるるも』は本当に心の底から祝福できるハッピーエンドを迎えました。ラストはベタといえばベタかもしれない。けれど、『魔界編』１巻のるるもの孤独を、苦労を、悲しみを想えばこれは迎えるべくして迎えられた幸せというものです。

『まじもじるるも』という作品について、頑張る女の子の物語が描きたかった、と渡辺先生はおっしゃっていました。
そう、るるもは本当に頑張ってきたんです。想い人を自分との契約で亡くしてしまったという悲しみを抱いて、帰る家と家族を失った孤独を背負って…。渡辺先生が描きたかった「頑張る女の子」はたくさんの悲しみに屈せずに戦う女の子。…それだけではなく、そんな押しつぶされそうなつらい時期を乗り越えた先に、頑張りがむくわれて「幸せになる女の子」だったのでしょうね。
頑張って、色々なものを乗り越えてむくわれる物語。長い苦労と努力の末に現在の評価を得た渡辺航先生という作家が描くからこその説得力があるといっても過言ではないはずです。

完結巻ということを抜きにしても、想像を絶する姿の魔王のさらに想像を絶するカリスマ性だとか、もちろん見どころはもりだくさんです。
というか、『魔界編』突入後の展開の早さは本当に凄かった！全４巻に詰め込めるだけ詰め込んだといった感じ。恋もバトルもお色気もお笑いも。ああ、贅沢な漫画だったなあ！

物語的には「黒幕」となるキャラにもほのぼのオチをつけるオマケ４コマも含めて、誰かを傷つけない大団円。渡辺先生の自作キャラに対する愛情とか優しさを感じます。ミミちゃんのあきらめの悪さも救いにすら思えちゃう。
本当ならば、このままゆるやかに戻った日常をもっとずっと読んでいたいとすら思います。でも…『まじもじるるも』という素晴らしい作品と共に過ごせた時間にいまはひたすら感謝の気持ちです。

…ほんとに！『まじもじるるも』という作品に対する想いはこんなんじゃ全然語りきれていないくらいなんですが…！
しばらくはこの「大団円」をかみしめていたいと思います。この結末を見送れてこそ、本当に「この作品に出逢えてよかった」と思えたのですから。

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出逢えて、よかった。　『まじもじるるも　魔界編』4巻(渡辺航)

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