『花と落雷』渡辺カナ/別冊マーガレット連載
あー本当にこの漫画すきだー。
渡辺カナ先生の『花と落雷』。
チラリホラリとは少女漫画に手を出そうとしているのですが、ここまでドストライクは久々に出逢えた気がします。2巻で完結は良いまとめ方ではありましたが、正直もっと読んでいたかった気持ちもあります。


他クラスとの合同の授業でほのかに想いを寄せていた男子とグループ分けが離ればなれになってしまい、自分だけの恋の終わりを儚んでいた海美帆。そんな彼女の前に突然あらわれ、恋の応援を名乗り出る少女が。彼女は自称・「有言実行委員会委員長」の八千代。
傷つくことを恐れるあまり、行動に出ることを恐れていた海美帆は風変わりながらポジティブで真っ直ぐな八千代の言動に突き動かされて想い人に告白するに至ります。
告白の結果は撃沈ながら、きちんと自分の想いを伝えらえられたこと、そしてやはり相手を好きになって良かったということを噛み締めて少し成長した海美帆。背中を押してくれた八千代との間に友情も芽生え、新たな日々への一歩を踏み出します。
そして自分自身も有言実行委員会として八千代と行動を共にすることを選んだ海美帆の前にあらわれたのは、長身で無口な転校生・四宮くん。多くを語らず、孤立する四宮くんのことが海美帆は気になり始めて…。


この海美帆・八千代・四宮くんが物語の中心。1巻ではとにかく、八千代のなにもおそれないようなポジティブさが他の2人にもどんどん伝染していくようです。もともと積極派ではない海美帆も、自分に自信がなくてうまく人と話せない四宮くんも常に堂々としている八千代に憧れ、八千代のように生きられたら…と思うようになります。
しかし、八千代自身には過去に一つの大きな後悔がありました。


常にポジティブに、強引にでも人の背中を押すという八千代のライフワークともいえる「有言実行委員会」。それは彼女自身が背負い続けた後悔への贖罪…でした。それまでは。
笑顔の裏で自分を責め続けてきた八千代の背中を、今度は海美帆が押す番。
罪の意識にがんじがらめにされて真実が見えなくなっていた八千代が事実と向き合って自分を赦していく…。「有言実行委員会」を続けてきたことが、単なる償いなどではなかったことを取り戻していく。
想いの連鎖が皆の心を救っていきます。


登場人物は女子も男子も(犬も)とてもチャーミングな子ばかりで、皆が善意で動いているのがよくわかります。
自分のことだけ考えるのではなく、
他人に献身するだけでもなく、
自分の為にも、他人の為にも全力を尽くせる子たちばかりなのです。皆で幸せになろうと、そう口に出しては言わないけれどお互いが想いあっているのが伝わってくるんだな。そういうふうに想いあえているからこそ、また相手にも優しくしたいと思うのでしょう。だからこんなにも温かい。
誤解や失敗をおそれず、前進していく彼らの青春がまばゆい。


誰しも何か抱えているコンプレックスや後悔を、ただ目をつむって諦めるのではなく、それを受け止めてくれる仲間といっしょに受け入れたり、赦したり、前進したり。
素敵な物語でした。
渡辺カナ先生の他の単行本も読んだのですが、どれも大好きです。犬もよくでてくるし!!
描線のやわらかさとか要所要所の小気味良いギャグもすき!!