『実は私は』増田英二/週刊少年チャンピオン連載
…いきなりタイトルで重大なネタバレをしてしまいましたが!この『実は私は』という漫画について語るには「白神さんかわいい」という事実を避けては通れません。
『さくらDISCORD』で熱い青春ど真ん中ストーリーを描いた増田英二先生の新作は、『さくらDISCORD』よりもだいぶギャグ色強め、ストーリー色軽めになったラブコメディです。


思っていることが何でも表情や態度に出てしまい、隠し事が出来ないことを揶揄されて周囲から「アナザル(=穴の開いたザル)」というあだ名で呼ばれている主人公の黒峰朝陽。
彼はクラスメイトの女子・白神葉子さんに恋をしています。
他人と馴れ合わず学校生活を送るミステリアスな美少女、白神さん。そんな彼女に密かに想いを寄せることだけは他人に知られまいとひた隠しにしていたつもり…の朝陽でしたがしかし、そこは「アナザル」の異名を持つだけあって周囲の悪友にはバレバレ。しかし想いを寄せる当の本人…白神さんにだけはその気持ちがバレてしまう前に自分から告白をしたいと、朝陽は意を決して彼女が残っている教室に向かいます。
ところが決意と共に教室に入った朝陽の目の前に、なんと白神さんが羽を伸ばした(比喩的な意味ではなく)姿が…!


白神さんの正体はなんと吸血鬼。正体がバレたら父親に学校を辞めさせられてしまうために普段は羽根を仕舞い、キバを見られない為に必要以上に他人と喋ったりしないようにしていたのです。
一人で残っていたとはいえ、正体を隠して学校に通っているというのに教室で羽根を広げてしまう程度にはウッカリな白神さん。しかも、いつもは敬語で殆ど他人と接しないのに実は関西弁で結構おしゃべり。羽根を見られて超赤面。それまで抱いていた”ミステリアス”というイメージは崩壊してしまったけれど、目の前でコロコロと表情を変える白神さんのキュートさに、朝陽はますます惹かれてしまいます。…まさかの事態に、告白どころではなくなってしまったわけですが。
というわけで、白神さんが学校を辞めずに済むよう、「隠し事ができない」にも関わらず大きな秘密を抱えて過ごすことになったアナザルこと朝陽。そしてそんなわかりやす~い男に惚れられているのにまったく気づかない超ドンカンな白神さん。おかしな2人の秘密共有生活が始まります。


彼らの学校生活には朝陽の幼馴染みでゴシップまみれの校内新聞を作成する通称”外道クイーン”朱美みかんの襲撃など様々な妨害もあって、秘密を守る道のりは決して平坦ではありません。毎度アクシデントに見舞われつつも、朝陽はどうにかこうにか白神さんの秘密を守っていきます。
しかしそんな中、朝陽が以前まで想いを寄せていた相手、クラス委員長の藍澤渚さんも大きな「秘密」を持っていたことが発覚し…『実は私は』というタイトルは白神さんだけにかかっているわけじゃなかった!
そろいもそろってヒロインたちは皆可愛いし魅力的なのにどっかしらおバカな面があって、それが益々可愛おもしろい。一人一人の事情は結構シリアスな部分を持ち合わせているのに、秘密に秘密が重なるとどんどん騒がしくなっていってしまう不思議!「重大な秘密」を抱えたキャラクターたちのどんちゃん騒ぎといった感じの日々です。


人間じゃない系ヒロインが集っているものの彼女たちは実は結構ふつうな、等身大な高校生たち。
秘密を持った自分自身のことだけではなく、人間(?)関係や恋について考えたり、悩んだり、ぶつかったり。題材は非現実寄りですが、そういった青春のぶつかり合いは『さくらDISCORD』で描かれてきたことと通じる部分があると思います。
『さくらDISCORD』でもそれこそ登場人物たちはそれぞれの悩みや秘密を抱えていたわけです。恋の悩み、家族の問題。事件らしい事件がない日々であっても瞬間瞬間の熱量が物凄い作品でした。それが熱烈なファンを生み出す魅力でもあったのですが、『実は私は』は各キャラクターが持つ悩みや秘密という部分を「実は私は人間じゃなくて、」というマンガっぽいテーマにして、さらにコメディ色を強くすることで広く一般層にも受け入れやすい作品になったのではないかなと思います。なのでコアファンにはちょっぴり物足りなく感じる人もいるのかもしれません。


でもそこはそれで、作品で描かれているもののバランスをいじっただけで、増田先生作品の魅力というものはまったく衰えていないとおもってます。あと何よりも白神さんが可愛い!!やっぱりそこに行き着きました。
それまでは正体がバレないように大人しく静かにしていただけで、素の白神さんは表情豊か、感情豊か。そして朝陽に匹敵するくらいわかりやすい。
~ババヌキで一喜一憂する白神さんをご覧ください~
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あああぁ~可愛い。「おっ」の顔ちょうかわいい。こんな顔されたらババだってわかっててもひいてしまいそう!
こんな可愛い白神さんの表情が全篇わたって楽しめるだけでも十二分に素晴らしいということですよ。チャンピオンには珍しいタイプの作品ですが、とても楽しいラブコメです。


過去エントリ
雑食商店街3373番地:本気で変えるつもりじゃなきゃ、世界は変わってくれない。 『さくらDISCORD』1巻(増田英二)