※注意!※
現時点での週刊少年チャンピオン最新号(2013年41号)までのネタバレを含みますのでコミックス派の方はご注意ください!
長かったインターハイの決着もついて坂道たちは2年生に進級。強く頼もしかった先輩たちも卒業し、総北高校自転車競技部を取り巻く環境は大きく変化しつつあります。インターハイ優勝校ということで入部希望者の数も昨年より大幅に増えていますし、その中にも既にかなりの実力を持った新入生が名を連ねています。
そこで今年も行われるのが、坂道たちも闘った一年生ウェルカムレース。入部早々にある程度の実力を振り分けてしまう厳しいルールのこのレースにただ一人、異例中の異例となる二年生が参加していました。
杉元照文。
彼の初登場は2巻収録「RIDE.15 ボクに可能性があるなら」。
教室で自転車についての会話をしていた坂道と鳴子の元に颯爽と現れて、(聞かれてもないのに)乗りはじめて3年にはなるというロードレーサーについて語り始める…というファーストインパクトからウザキャラの匂いが強かった彼。自転車競技部入部後も、実力は大したことがないのに事あるごとに「経験者」という事を強調しては周囲に絡む『ウザいけどなんとなく憎めないキャラ』としての地位を確立しつつありました。
特に自転車初心者の坂道に対しては自分が「経験者」であることが強調しやすいようで何かにつけて話しかけていましたが、基本的に嫌味をいうキャラではなく、結果的に坂道にプレッシャーを与えてしまう言動もいくらか見受けられたものの純粋に「初心者である小野田に対し、経験者の自分がアドバイスをしてやろう」という気持ちが強かったように思えます。
いつもそんな調子なので他の部員たちからはスルーされ気味な杉元でしたが、坂道は坂道で素直すぎる性格でもあるためそんな「経験者」のアドバイスを割と真剣に聞いたりしていて、それはそれでどことなくバランスがとれた組み合わせでもありました。
しかし、規格外の初心者・小野田坂道は合宿で2年生たちに打ち勝ち、今泉・鳴子と共にインターハイのメンバー入りを果たします。一方で杉元はといえば、1000km走破がノルマの合宿においては出だしこそ快調と思われつつも結果は650kmでの途中リタイア。インターハイでは2年生らと共にレースのサポートに回ることになります。
「経験者」であることが自慢のはずが、後から自転車を始めた初心者にすら実力で追い抜かれてしまった杉元。しかしそんなことでメゲるような彼ではなく、本人曰く「選手の目」で状況を解説する等の活躍(?)を見せていました。チームの状況によってはすぐ弱音を吐くという一面もありましたが、チームが調子を盛り返せばすぐまた調子に乗るという、ある意味では鋼のメンタルの持ち主。そしてそれは、坂道がインターハイで優勝しても変わりません。
インターハイでの(裏方)仕事にそれはそれは強い自信を持ち、その自分を含めた総北を「王者」であると胸を張る杉元。坂道に対しての接し方も変わらず、数学の宿題に悩むところに声をかけてやるなど自転車方面以外でも面倒見がいい一面を覗かせていました。また、3年田所先輩の最後の公式レースには杉元自身にとって初めてとなる「インターハイジャージ」に袖を通しての出場。浮き足だつ杉元を置いてスプリンター3人(田所・青八木・鳴子)が表彰台を独占するという結果ではありましたが、その時の彼は自分がレギュラーメンバーと同じジャージでレースに出場する事を”生涯の誉れ”とすら思っていたのです。
その時の杉元も、「来年のインターハイの6人目はボクだってことですね!!」と意気込んではいましたが、誰の目から見ても、読者から見てもそれはいつもの「経験者」視点のホラのようなものにしか感じられなかったはずです。しかし、坂道の優勝を目の当たりにし、インターハイジャージを実際に身に纏って…杉元の意識は徐々に、しかし確実に前を向いていたようです。
今泉に頭を下げ、練習法を聞き出し地道に地道に練習を続けて来た杉元はついに「1年生ウェルカムレース」にもう一度参加させてほしいと新部長である手嶋に申し出たのです。
杉元の真摯な申し出を受けて、手嶋はその異例な「2年生のウェルカムレース参加」を承諾。通常1年生の中に2年生が一人参加するのであれば勝利して当然、というプレッシャーの中で杉元はついに本当に「インターハイの6人目」となるべく走り出します。
レース序盤では血気盛んな1年生の”追い越し禁止区間から飛び出して協力しよう”という誘いや煽りにも屈せず、「どんなことがあってもボクはルールだけはやぶらない」と一蹴するなど、単に経験者風を吹かせているだけではなく良い意味での真面目さを持っていることを見せる一方で、このレースを獲るという意気込みは誰よりも強い杉元。そんな彼に一年屈指の実力者コンビ、鏑木と段竹が勝負を仕掛けてきます。
社会人のいるチームで培った確かな実力と既にお互いをよく知る絶妙なコンビネーションで走る鏑木&段竹に対し、杉元は元から強い選手ではありません。いよいよ差を引き離され、挫けそうになりますが絶望の間際にいた杉元の前に一人の救世主が駆け付けます。
杉元の実弟である新一年生の杉元定時。一度入学前に総北メンバーと共に走った時には、全く実力がない頃の兄の走りを参考にして居た為にフラフラな走りをしていましたが、定時の隠れた能力は他人の走りと瞬時にシンクロ出来ること。兄を慕い、兄と共に走りたい一心で追い上げてきた弟・定時は実力をつけた兄・照文の走りと見事なシンクロを果たし再び鏑木&段竹を追い詰めます。そして今、ゴールライン寸前。果たして、結果は…。
…と、ここまでが最新号までの状況です。
杉元がここまでの活躍を、ファイトを見せるキャラクターになる事。いったい誰が想像していたことでしょうか。今までは「名脇役」的ポジションで、どちらかというと作中でもレースの合間に登場することばかりでした。実力の伴わない「経験者」発言がキャラクターとしてのアイデンティティ的な部分もあり、この急激な台頭で今までの杉元像がぶち壊される可能性すらあるでしょう。しかしそんな違和感よりも「ついに来た!」という燃え上がりを感じているのは私だけではないハズ。
坂道に経験者視点でウザいくらいにアドバイスをしたり、時々勉強を教えてあげたりしていたのは素直で実直な弟の世話を幼い頃から焼いてきた面倒見の良さの表れでしょうし、周囲の急成長にいじけたりはせずに常に自分に出来ることを不器用ながらもこなしてきたのが杉元照文という男なのです。その変化は急激なようで、実は全て繋がっているのだと思います。愛車を「コルナゴちゃん」と呼び、自転車を愛する気持ちも人一倍強いのが彼でしたね。
今までは周りからひたすらスルーされてきた印象がありますが、練習法をアドバイスした今泉をはじめとして総北メンバーも杉元のことをただないがしろにしているわけではない…ということがこのレースを通して分かるのも嬉しい演出です。
なんやかんや言っても、もうすぐレースの結果が出てしまいます。個人的にはどうしても杉元に勝ってほしい…!去年のインターハイではボトル運びなどの仕事にも誇りを持っていたけれど、今年のインターハイではきっとそれでは彼自身が満足できないことでしょう。同じ一年生たちの成長と残してきた結果を誰よりも近くで感じてきた杉元照文。今後の『弱虫ペダル』の鍵を握るのは彼だ!…と思いたい!
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