ついにアニメが放送開始した『弱虫ペダル』。テレビアニメ化も勿論凄いことですが、個人的には渡辺航先生作品の単行本が30巻に到達したことが非常に感慨深いです。10巻到達で感動していた頃が懐かしい(笑)。
30巻表紙は主人公坂道ですが、内容は帰省中の鳴子と御堂筋の草レースの後半と箱学3年生追い出し走行会、と坂道の登場は殆ど無し。単にアニメ開始放送のタイミングだったので主人公を表紙に据えたということでしょうか。
大阪、突然の出会いにより始まった鳴子VS御堂筋の勝負はインターハイ終了後の2人の成長と対比が描かれています。
敗北を知った御堂筋は以前よりもさらに「速さ」を純粋に追い求めるようになっています。仲間の力を信じる総北に負けたからといって、自分のやり方は間違っていたなどとは考えを改めたりしないところが非常に御堂筋らしいと思います。むしろ、より一人で、より前に、速くという思考の鋭利さが増しているのではないでしょうか。総北と箱学でも随分と考え方は違いますが、前回のIHでは総北が総合優勝したからといって総北のやり方が正しい、とはしないところが良い。
このレースを通してさらなる進化を遂げた御堂筋ですが、昆虫の脱皮に喩えられたその描写はこれまで描かれてきた中でも最も異質で最も不気味な表現に思えました。
『弱虫ペダル』は今回描かれた御堂筋の脱皮や真波の羽根といった見るからに人間離れした描写でその能力が表されることがありますが、そういった「表現法」に関しても同じ作中とはいえキャラクターごとに大きく違うように思えます。たとえば、坂道がどんなにこの後進化し成長していったからといって、こういった描かれた方をするとは考え難い。今回の勝負では、ここまで不気味な進化が描かれた御堂筋に対して鳴子は(人間としては)実に普通、なんですよね。あまりの速さに鼻血を流し、悔しさに涙し…けれど、鳴子も確実に成長している。前に進んでいる。ひとつの強烈な表現に作品自体が引っ張られて全体が過激化することはなく、一人一人のキャラクターの身の丈に合った「表現法」が当て嵌められているところは『弱虫ペダル』の密かな魅力であると思います。
いっぽうの箱学走行会は、総北以上に個人個人の対決や想いがじっくり描かれていることが少々複雑ではあるのですが(苦笑)、やはり皆個性的で良いメンバーだなあとしみじみ感じています。決して悪い意味でなく、みんなどっかしらちょっとズレてる変な人たちが集まっているなあ、と思うんですよね。かといって、非常識といういワケでもないんですが。その変さが普通の会話だと面白いし、真剣勝負の会話だとよりアツくなる感じ。
中でも、坂道に敗北して総合優勝を逃したことで自覚が芽生えた真波が、強すぎる想いに捉われて本来の自分を見失っていたことに対する先輩たちの言葉はとても良いですね。2年(次期3年)黒田は前回の真波にその座を譲りIHメンバー入りを逃していますが、先輩としての気持ちの強さは保っていたのが頼もしい限り。そして自分自身にとっての最大の壁となる先輩・荒北に勝負を挑みさらなる成長を遂げようとしています。黒田は総北における手嶋・青八木のように次回のIHに対する意気込みも人一倍強いことでしょう。ますます楽しみが増してきます。
以前から登場していたもののIHには出場できなかった黒田のようなキャラクターの台頭や、葦木場やファビアンたち新キャラの活躍、それぞれがどのように影響し合って行くかが大変楽しみです。(※今の文章には突っ込みどころがあります)
ほんと、今の『弱虫ペダル』はまったく先が読めない、面白い!
過去エントリ
そして彼は覚醒する 弱虫ペダル 1巻/渡辺航 - 漫画脳
気弱な少年の決意 弱虫ペダル 2巻/渡辺航 - 漫画脳
純粋という名の速度 弱虫ペダル 3巻/渡辺航 - 漫画脳
その時誰もが惹かれることを止められなかった 弱虫ペダル 4巻 - 漫画脳
上へ上へと…登るしかないっショ 『弱虫ペダル』5巻 - 漫画脳
それぞれの想い、それぞれの絆 『弱虫ペダル』6巻 - 漫画脳
全身全霊、5人のゴールスプリント 『弱虫ペダル』7巻 - 漫画脳
漫画脳:繋ぐ力、支え合う力~ほのぼのもあるよ! 『弱虫ペダル』8巻(渡辺航)
漫画脳:インターハイ開幕!疾走感、御堂筋、そして腹筋(アブ)へ… 『弱虫ペダル』9巻(渡辺航)
漫画脳:引き継がれていく熱い魂 『弱虫ペダル』10巻(渡辺航)
漫画脳:チームのために。自分のために。 『弱虫ペダル』11巻(渡辺航)
漫画脳:何者にも干渉を許されない関係がある 『弱虫ペダル』12巻(渡辺航)
漫画脳:強者の信念、三様 『弱虫ペダル』13巻(渡辺航)
漫画脳:彼は理屈を欲しない 『弱虫ペダル』14巻(渡辺航)
漫画脳:心理戦の限界を超えた先に 『弱虫ペダル』15巻(渡辺航)
漫画脳:捨て行くものと信じるもの 『弱虫ペダル』16巻(渡辺航)
漫画脳:”チーム”の形は一つじゃない 『弱虫ペダル』17巻(渡辺航)
漫画脳:過去、決別、純粋な強さ 『弱虫ペダル』18巻/渡辺航
漫画脳:そしてついに出逢った2人 『弱虫ペダル』19巻(渡辺航)
漫画脳:主人公を成長させるのは 『弱虫ペダル』20巻(渡辺航)
漫画脳:一つの絆の境地 『弱虫ペダル』21巻(渡辺航)
漫画脳:総北ジャージは真の「完成形」へ 『弱虫ペダル』22巻(渡辺航)
漫画脳:誰よりド派手に赤く燃え上がれ!総北高校の”赤いマメツブ” 『弱虫ペダル』23巻(渡辺航)
漫画脳:「得体の知れない男」たちの本気の闘い 『弱虫ペダル』24巻
漫画脳:少年たちが成長するとき 『弱虫ペダル』25巻(渡辺航)
漫画脳:頂上決戦に残る者たちの本質 『弱虫ペダル』26巻(渡辺航)
雑食商店街3373番地:インターハイ、決着。そして新たなステージへ。 『弱虫ペダル』27巻
雑食商店街3373番地:凡人主将率いる、新たな時代の幕開け! 『弱虫ペダル』28巻(渡辺航)
雑食商店街3373番地:引き継がれていく魂 『弱虫ペダル』29巻(渡辺航)
『弱虫ペダル』・坂道から消えたのはオタク魂ではなくて
漫画脳:描き文字に見る、渡辺航先生イズム
『弱虫ペダル』 小野田坂道と御堂筋翔~最も近くて、最も遠い2人
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