2011年に読切で初掲載→短期連載→本格連載と順調に週チャンのレギュラーメンバーになりつつある重本ハジメ先生の初単行本がついに発売されました。
帯などでは”新人”という扱いになっていますが、重本ハジメ先生は2002年にちばてつや賞を受賞している等の情報があるので(参照:http://www.oricon.co.jp/news/music/38663/ 記事によって詳細が異なっているようなので正確な年数がわからないのですが…)かれこれ10年以上のキャリアの末ようやく単行本が発行されるに至ったということになりますね。漫画家活動の他にバンド活動もされているとのことですし、ユニークな経歴の作家さんです。
自分が楽しみにしている日には必ず雨が降る。
数年前の誕生日の旅行中に大雨が降り、土砂崩れに巻き込まれて両親を失い自分だけが助かるという事故に合った天野甲人は、
それ以来毎年の誕生日を雨に見舞われ、さらに自分が楽しみにしている日やまわりの人々が楽しみにしている日までも必ず雨が降るようになってしまい、周囲からは雨男として疎まれるようになっていました。
しかし自分は誰からも必要とされない、そう思い込んで逃げ出した先で偶然出会ったホームレスのおじいさんとその愛犬に雨を喜ばれて励まされ、甲人は笑顔を取り戻します。
それはおじいさん達にとっても久し振りの人との交流で、互いの出逢いを喜んでいたのもつかの間…甲人を疎むクラスメイトの手によって、おじいさんの住み家に火を放たれて愛犬ペロまでもが巻き込まれてしまいます。
必死に水を求めて泣き叫ぶおじいさんの前に現れたのは怪しいフード姿の男。
男から放たれた黒い水に包まれたおじいさんは、増幅された自らの負のオーラに包まれて姿を変貌させていき…。
甲人がその身に秘めたる能力を目覚めさせるのは、自分に大事なことを思い出させてくれたおじいさんとの悲しい別れと引き換えになってしまいます。
突如その手に握られた馬の姿をした”馬頭(バズ)”という名の傘…俗にいうカラカサを相棒に”天照子”としての力を覚醒させた甲人は、彼自身にしか降らせることのできない雨で、彼自身にしか出来ない戦いの場に立つこととなります。
甲人の持つ力は、妖怪”雨ふり小僧”と呼ばれるもので、他にも妖怪の能力を持つ仲間が次々現れます。
”ろくろ”の能力を持ち、身体中を伸縮させながら戦う女性、ネネや”百目”の能力で世界中の様々なものを見ることが出来る千里…。
彼ら妖怪の能力を持った仲間が集う学園に招待された甲人は、おじいさんの前に現れてその姿を変貌させたのが”妖怪赤マント”と呼ばれる者と聞かされます。
真の目的はわからないままながら、まるで面白がるだけで人間の命をもてあそぶような赤マント。
甲人自身はまだ己を取り巻く現状も飲み込めないまま、混乱したままですが、目の前で大事な人を奪われるという最悪な形で戦わなければならない状況に追い込まれていきます…。
1巻を読むだけでは少し急すぎるというか、説明不足感はあるのですが、悲しみ、喜び、そして憎悪、さらに解放といった感情表現に込められた力とどこかで聞いたことのある妖怪を人間に当て嵌めて能力化する斬新さとバトルシーンの迫力は魅せられるのに十分。
チャンピオンでの掲載作もこれまですべて鬼、百鬼夜行といったものが題材でしたし、妖怪などのモチーフに対する思い入れが重本先生は人一倍強いのだろうということは容易に推測できます。
しかし奇抜さや暗い感情だけではなく、人間らしく優しく温かい感情が根っこにあるところが素晴らしいんです。
もっとも、重本先生の描く魅力的な妖怪や鬼を見ているとそういった感情を「人間らしい」と表現すること自体が人間のエゴなのかもしれないなとすら思えてきますね。
熱い血の通った少年漫画を描く作家さんです。描けば描く程洗練されていく絵柄ながら、どこか泥臭さが残るのがチャンピオンらしいなあなんて気もします。個人的にはこのままどんどん活躍してチャンピオンの代表作家になっていってほしい!
雑食商店街3373番地:週チャン新連載ラッシュ最後の一作『鬼さんコチラ』連載開始、と作者・重本ハジメ先生の意外な活動
コメント
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。