ロボットがアシスタントをしながら紙とペンで漫画を描くという、デジタルとアナログが捩れた近未来のような異世界。少女漫画家のヤコとネコ型アシスタントロボットのポコはふたりで漫画を描いて暮らしています。
日常生活にロボットが密接に関係するこの世界には、「「かんぺきモード」「てきとうモード」「ダメモード」の3タイプのロボットがいて、一度設定したモードは改めることができません。仕事でロボットを使う人はほとんど「かんぺきモード」を選ぶ中で、ヤコは漫画の新人賞で貰ったアシスタントロボットのポコを「てきとうモード」に設定していました。
「てきとう」といってもポコはあからさまに力を抜いたり、雑な仕事をするわけではありません。それでもしょっちゅうスクリーントーンを貼りまちがえたり、ベタを塗り忘れたりと仕事のできはやっぱり「てきとう」そのもの。
おそらくポコには欲というものがほとんどありません。少食で燃費もよいし、はじめてヤコに首輪を選んでもらったときにも「安いのでいいです」と言っていたくらい、自分からあまり多くを求めない。
それゆえに、強い向上心もない。おそらくポコ自身にできうる限りの努力はしているけれど、人間に個体差があるように、あらかじめ「てきとうモード」として設定されているポコは一定以上のレベルにはなれません。
そんなポコがただひとつ、心から願い、叶えたいと思っているのがヤコの幸せ。
とあるきっかけで手にした”ゆっこペン”という変な色の名前をしたペン。それらの色は「ゆっこさん」というイラストレーターの思い出の色で、ゆっこさんの思い出の色と自分の思い出の色が同じだったら幸せになれる…といううわさがあって流行した旧いペンでした。
すでに製造を終了し、メーカーも倒産。新品はもはや入手困難ながら、街のあちこちで眠っているゆっこペンを捜し始めるポコ。なんでもない毎日の中のちょっとした宝捜し…それはヤコの幸せのため。その姿は、かんぺきじゃないからこそいじらしく、愛おしい。

ヤコが何を思ってポコを「てきとうモード」にしたのか、深いところは少なくとも1巻の時点では語られていません。ただ、どうやらヤコ自身もあまり多くを求めるタイプではないようです。
ポコへの愛情の注ぎ方さえ不器用で、ヤコもまた「かんぺき」とは遠い。それでもポコはヤコから受け取る小さな愛情のかけらを大切に胸にしまいながら、笑顔でその後ろをついてゆきます。
少女漫画家とネコ型ロボットアシスタントのいびつな二人三脚。思い出の色と、未来の幸せに思いを馳せながらふたりのなんでもない毎日はつづいてゆくのです。
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