「だまされて買ってください」
この漫画、『エウリアン桃子』第1巻の帯でヒロインの桃子が訴えかけている台詞であります。
この台詞には桃子の置かれている境遇を表しているだけでなく、もっと深い意味合いがあります。


29歳にしてようやく初の就職が決まった冴えないメガネヒロイン、桃園桃子。
彼女が就職した業者は、詐欺業者でした。


ああ、なんて身もフタもない。秋葉原の街頭で通行人に声を掛け、高額な値段で絵画を売りつける悪徳業者…通称「エウリアン」。6年がかりの就職をようやく決めたドンヅマリ女・桃子にそんな仕事ができるわけもなく、失敗を繰り返し、先輩にはどやされ…。
そんなただの冴えない女として生きてきた桃子の毎日に、突然のピリオドが訪れます。そして、桃子は…地球の未来を背負う冴えない女になったのです!


桃子の就職先は、地球を守るために侵略宇宙人と闘っていました。(誇張なし) その身に秘めた未知なる可能性を期待されて、彼女はエウリアンとして採用されたのです。
超の上に超が付くような超展開についていけない桃子のことなどお構いなしに、敵も味方も変身シーンの大バーゲンで繰り広げられるバトル。いや、そもそも誰が敵で誰が味方なの?桃子に味方なんているの?その未知の力こそまだ明かされてはいませんが、とある特殊能力が備わっているお陰で作中のエロ成分とグロ成分も桃子が一手に担っています。ほんとかわいそう。


高槻ナギー先生は非常に可憐で華麗な女性キャラクターを描く作家さんで、さまざまなタイプの女の子を作中に登場させてはサービスショットもバンバン描いてくれます。
しかしこの、いわゆる「残念な美人」的な…いや、キャラクターがというよりもむしろ作品自体が、真っ当な道を歩んではくれない。女の子可愛い、エロい、萌える、で終わらせてはくれません。むしろ、エロス成分などは刺身のツマのようなもの。ドぎつい下ネタ、パロディ、グロまでも。可愛い、エロいの余韻に浸らせる隙すらない詰め込みっぷり。
だからこそ、「だまされて買ってください」と桃子は訴えてくるのです。可憐な眼鏡娘の涙にほだされて手に取った初見さんがドン引きすることすら、想定の範囲内なのだと。


それでもこの、華やかな筆致で美しいまま居てくれない世界を描き出してしまう高槻ナギー先生の作品性が私は好きなのです。理屈では説明できないから、この絵柄に心が揺れたならばいっそだまされて買ってください。
2014051702250000
えげつなさだけは保障しますけど、「本当にだまされた!」と思っても、許してにゃん(桃子つながり)。