『弱虫ペダル』34巻が発売されました。表紙には京都伏見の新一年生・岸神小鞠君。うぅ…またも青八木先輩初表紙ならず。まさか彼に先を越されるとは思いませんでした。今回本編での小鞠君の出番は僅かではありますが、その分インパクトが強すぎるのである意味今回のメインは彼なのかもしれません…。


さてこの34巻、合宿での手嶋・古賀のインターハイメンバー入りを賭けた勝負がいよいよ決着の時を迎えます。凡人中の凡人である手嶋、天才でありながら怪我との長い戦いの時間を過ごしてきた古賀。両者とも高校3年生、インターハイに出場する最後のチャンスです。
手嶋先輩は、青八木先輩とコンビを組むことで平凡ながら著しく成長を見せてきましたが、レースで良い成績を収められるのは青八木先輩ばかりで、自分自身はいままでに一度もゴール前で競り勝ったことがないという弱点を抱えてきていました。凡人で周囲からは期待されず、唯一面倒を見てくれた田所先輩の期待に応えることも出来ず、自分の事すら諦めかけていた手嶋先輩。しかし、先ず才能などなくても本気で頑張ってもがいて闘わなければ誰にも期待などされないというひとつの結論を胸に、これまで成し遂げたことが無かった勝利を掴みとるため限界の勝負を挑みます。


片や、一年生の時にインターハイ出場を果たすも怪我で長い間苦汁を舐め続けてきた古賀先輩。彼の場合は一度出場しているからこそ最後のチャンスに賭ける思いも強いと言えるでしょう。手嶋先輩とは真逆。たった一つの枠を賭けて「天才」と「凡人」が全力でぶつかりあうこのギリギリの勝負は「最後は気持ちが強い方が勝つ」というような言葉で片付けたくはありません。その気持ちにどちらが上ということも、ましてや優劣があるはずも無いからです。
そも、「気持ち」だけで勝利が掴めるのだったらウェルカムレースで杉元が勝利していてもおかしくはなかったはず。気持ちが強いのは当たり前で、実力・努力・集中力…様々なものが重なり合った純粋な結果がそこにあったように思えます。何かが少しでもズレたら結果も違っていたような、けれどもこうして決着ははっきりとついているわけで、メンバーに選ばれた者はその分戦った相手の思いも背負っていくことになるのでしょう。見守るメンバー達の心をも揺さぶるような勝負でした。


特に、「チーム2人」として共に成長してきた青八木先輩は誰よりも真剣な眼差しをその勝負に向けていました。いままで結果として好成績を残せていたのは自分ばかりという事実には青八木先輩も歯痒い思いをしていたに違いなく、この勝負の行方はもはや彼にとっても他人のことではなかったといって過言ではないでしょう。
本気の勝負を超えて、結果ははっきりと明暗を分けてしまったけれど手嶋先輩、古賀先輩、そして青八木先輩がどこかすっきりとした顔つきで向かい合えた場面にはホッとしました。いままで彼らのどこかにわだかまりがあったのだとしたら、この勝負を経てそれは解消されたことでしょう。チーム総北はより結束を固め、充実した合宿となったと言えると思います。


そんな合宿に不穏な人影がふたつ…。偵察にやって来た京都伏見の御堂筋、そして岸神小鞠の2人です。
御堂筋君はそこまで新一年生の小鞠君を買っているのでしょうか…どこまで信頼しているのか、小鞠君のほうも御堂筋君のことをどう思っているのかいまいちわからないですし。というか、関係性以上に小鞠君という人がいまのところ全然わからん…今までにはいなかったキャラですよね…。強力すぎる…。何が恐ろしいってついこの間まで彼が中学生だったことですよ…。


主人公周辺があまり目立たない感じが続いてますが、いよいよインターハイ編に突入してまた長い闘いが始まりそうです。杉元も後輩たちにしっかり慕われているようで何より。新生箱学も揃い、今年も色々な事が起こりそうです。