実はとらのあなの告知を真に受けて7日に一度アキバまで足を運んだらポスターの日付が修正されて「8日」になってました!!おかしいとは思ったけどじっとしてられなかったんだよ!ゆっくりできなかった結果がこれだよ!!!そして気を取り直して本日。
改めてコミックスで読んでみてその熱さを再確認しました。いや、再確認なんていうレベルじゃない。すべてチャンピオン本誌で読んでいるにも関わらず、ページを捲るたびに熱気が伝わってくる。この漫画における「熱さ」というものが、物語をなぞる事によって生じる熱と描写や表現から生じる熱の両方から成るものなのだと実感させられる。


物語の主人公、高校に入学したばかり。名前は「小野田坂道(おのだ さかみち)」。
アニメやオモチャを愛する典型的なオタク。中学時代に自分がオタクであるとカミングアウトすることも出来ず、趣味を分かち合う友に出会うことも出来なかった彼は高校でアニメ研究部に入部して、同じ趣味を持つ友達に出会い楽しい高校生活を送るというささやかな夢を持つだけの気弱な少年。
しかし彼の前に絶対的な壁が立ち塞がります。「人数が足りないため、アニ研は活動休止中」であるという非情な現実。肩を落としながらも、アニ研復活の僅かな希望を抱きながら部室を離れた坂道はその日、学校からあるところに向かおうとします。
そこは彼にとっての聖地・秋葉原。
欲しいものが何でも揃うアキバをこよなく愛する坂道。そして限られた小遣いでそれらを購入するために坂道がしていたこと。それは「電車は使わずに自転車でアキバまで行く」ことでした。
彼にとってはそれだけのことであり、自転車はその為の手段に過ぎなかった、はずでした。そう、今まで友達のいない坂道にはそれを客観的に観る存在が居なかったのです。
しかしそれがこの日を境に変わろうとしていました。そのきっかけとなったのは、自転車ロードレースに全てを賭ける同級生「今泉俊輔(いまいずみ しゅんすけ)」、そして自転車オタク少女「寒咲幹(かんざき みき)」との出逢い。
坂道は「アキバへの往復90kmの道のりをママチャリで通い」、「斜度20%を越える裏門の激坂を鼻歌交じりで登る」という驚くべきことを平然とやっていたのです。

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激坂を登る坂道を目撃した今泉は驚愕し、アキバへ自転車で行ったという話を聞いた幹は心躍らせます。そして自分だけの世界に居た坂道の周囲が目まぐるしく回りはじめるのです。
ここまでがおおよそ1話+αの内容です。


そして坂道にとって初めての大きな動きがやってきます。「どうやってママチャリで裏門坂を登ったのか」を確かめようとする今泉に自転車での競争を申し込まれるのです。
坂道は自分が特別なことをしていると思っていませんし、自分が速く走れるとも微塵も思っていません。運動も、運動部の人間も苦手な坂道は必死にそれを拒みますが、今泉の一言で大きく揺らぎます。

「入ってやるよ オレが負けたらこのアニ研」

部員を一人でも集めたい坂道にとって、この一言は何よりも嬉しく、魅力的な言葉でした。「15分のハンデつき」という条件と共に、彼はこの勝負を引き受けます。
それまでの坂道にとって自転車に乗ることが「アキバへお金を使わずに行く手段」であったように、このレース自体も「部員を増やすための手段」であるはずでした。
しかしこの競争で坂道に二つの「自覚」が芽生えることになるのです。それがこの1巻の大きなポイントになっています。


一つ目の「自覚」。
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まず、「自分が自転車で速く走れている」ということに気付きます。
今泉が貸してくれたサイクルコンピューターを気にしたり、そういった状況で周囲を気にするということで今まで無自覚だった自分の速さに気付くことになるのです。
このままいけば本当に勝てるのではないか、そんな気持ちを抱きながら坂道は自転車を走らせます。
しかし今泉のスタートから10分も経たない内に坂道は追い抜かれてしまいます。
一瞬の出来事で坂道の心は折れかけますが、タクシーで追いかけてきた幹の機転により立ち直り再び自転車を走らせ始めます。そこでもう一つの自覚が芽生えます。

二つ目の「自覚」。
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レースの開始直後から、坂道の頭には「勝って部員を増やすこと」しかありませんでした。
しかしこの頃にはもうアニ研のことは次第に頭を過ぎらなくなります。
引き離される度に心に生まれてくる何か。
「なんでだボク…」
「頭の中はまっ白なのに 体は…苦しいのに」
「ボクは今…」
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「どうしても今泉くんに追いつきたい!!」

自転車は単なる「手段」ではないこと。
手段が目的に変わる。それこそが二つ目の自覚。
毎日乗っている身近な乗り物であった自転車に乗りながら生まれる今までの人生で知り得なかった感覚。
こうして坂道が覚醒していく姿が熱くて、痛快でたまらないのです。


このレースの後、また新たなる感情の芽生えがあるのですがそれはまた次の巻のときにでもお話しするとして。
渡辺先生の描写は表情や自転車で走る姿の迫力ある表現も抜群で、視覚からもその熱さがじりじりと伝わってきます。また、自転車オタクの幹をヒロイン的な立ち位置に配置することで解説もわかりやすく、私のような専門的な知識が皆無な人間にもとても読みやすい。そして解説が熱さの邪魔をすることもないのです。
とにかく良い意味で少年漫画としての王道をひた走っています。少年たちにも、大人にも読んでもらいたい漫画です。渡辺先生は漫画家としての実力も確かなのですがオマケの1ページを見ただけで相当の自転車好きであることも明らかです。だからこそこんなに熱いんだと思う。


熱さにほだされて長くなってしまった…綺麗に他人の興味を煽るような文を書くのは難しいなー。
元々渡辺先生ファンということを差し引いても出逢えてさえいればきっと夢中になってました。ネットでもかなり好評のようだし渡辺先生ブレイクの日は近い!心の底からオススメです。一人でも多くの方に読んでいただきたいです。そしてペダルが気になった方はチャンピオンも読もう!!