いよいよウエルカムレース編クライマックスです。

自身にとっての天敵である登り坂の局面を迎え、失速する鳴子。一方で「一緒に走る」ことを目標に、それだけを何よりの糧に辿り着いた坂道は戸惑います。そんな坂道に対して鳴子は――


鳴子の言葉で、坂道は未だ掴みきれていなかった「レース」というものを漸く理解したのかもしれません。そしてそんな坂道は、こっちが泣きたくなるくらいバカみたいに素直で、純粋でした。その時鳴子の言葉から吸収したものは、それだけではなかったのですから。


「どんな小さなレースの些細な勝敗であってもオレは絶対に負けない」

かつて敗北を喫した宿敵・御堂筋へのリベンジを誓い、飽くまでストイックにオールラウンダーを目指している今泉。ついに山岳賞を賭けて、坂道との一騎打ちに。今泉の想い、「負けるわけにはいかない」気持ちも痛いほど伝わってきます。

しかし坂道の走りに全員が惹き付けられていく。

理屈はありませんでした。無茶だらけで、知識の無さ故に常識破りな坂道の走りには戦況を見つめる先輩たちも、そして追われている状況である今泉の心をも突き動かします。

初見の先輩たちの心を縛りつけ、競争相手の魂を揺さぶる坂道の登りが如何に凄まじいものであったかは、言葉で語るだけ野暮のような気がするので、是非未見の方はコミックスでご覧ください。

遠く追いかけてくる鳴子の握りこぶしがさらに読み手を熱くさせる。

鳴子から技術を教わり、心を受け継ぎ、そして「全力」というものが何であるかを学んだ坂道が、汗も血も、そして最後の最後に己のアイデンティティすらも搾り出した瞬間は輝いていました。これから彼自身が歩んでいくロードレースの道の中でも忘れえぬ瞬間となったことでしょう。


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坂道のモンスタールーキーぶりに目を奪われてしまう4巻ですが、今泉・鳴子のライバル関係も静かに燃え上がりつつあります。

ふたりが好対照な存在である顕著な例が、「1位」というものの捉えかたでしょう。

「1位は派手、目立つ」から好きだと常に口にしている鳴子に対し、「1位は一番静か」であるとする今泉。

主人公である坂道とはまた別のところでもこういった描写があるところもとても面白い。とても熱い。

徐々に明らかになる先輩たちの能力、凄まじいクライムを魅せた一方で矢張り素人である坂道にぶち当たる課題の数々など、ウエルカムレース終了後も益々目が離せません。