連載一周年を迎え絶好調な「弱虫ペダル」。ついに単行本も5巻です。

5巻の表紙は巻島先輩!!内容からしても自然な成り行きですが、この表紙はいままでとは違った感じで異彩を放っていて、目につくような気がします。渡辺先生ご自身は「キモい表紙」と称されていらっしゃいましたがわたしはこの表紙大好きです。巻島先輩、カッコ良すぎっショ!


ウェルカムレースが終わり、本格的に練習、そして合宿へと突入。いままで明らかにされていなかった先輩たちのスタイルも描かれています。

中でも巻島先輩は、坂道同様「登り」を最も得意とした生粋のクライマー。一年生同士のときとはまた違った刺激が坂道にも、また他の先輩たちにより今泉や鳴子にも与えられます。同系統のスタイルの先輩と共に走ることにより課題、自分に足りないものを直視せざるを得ない一年生たち。さらに後日、実際のレースでの三年生の走りを目の当たりにすることによってさらにその意識は熱く高まります。この部の先輩たちは自分たちもまだ学生の身だというのに後輩たちの気持ちを突き動かす指導がうまい。おそらくその指導力自体も代々受け継がれてきた総北高校自転車部の強さそのものの一つなのでしょう。


クライマーという点では一致する坂道と巻島先輩ですが、キャラクターとしては真逆。雑談をしようとしてもうまくコミニュケーションはとれず、ぎこちない二人が自転車によって、「登り」によって通じ合う姿は気持ちが良いものです。純粋無垢な坂道は巻島先輩のスタイルを受け止め、素直にその言葉を噛み締め、また巻島先輩もそんな坂道の真っ直ぐな視線に応えます。
pedal5
後に坂道の好敵手になるであろうキャラクター、「真波山岳」も初登場。「坂道」に「山岳」か…。近年の少年漫画には余り見られない(気がする)こういうベタなネーミングセンス、わたしは好きです。

山岳もまた、今まで出てきた誰とも違うタイプのキャラクターで、天然型サワヤカ王子っぽい少年なのですが自転車が好きで、坂が好き…「坂を登っているとき笑う」という坂道との共通点を持っています。巻島先輩といい、山岳といいまったく他に共通点がなさそうなキャラクターなのに自転車とそれに対しての信念だけで触れあえる。今まで友達と楽しさを分かち合うという経験がなかった坂道が、人との交流を喜びに変えて自転車を益々好きになっている気がします。


熱い自転車レース漫画としては勿論のこと、それぞれのキャラクターや関係もどんどん面白くなっています。その魅せ方や登場、その個性が明かされるタイミングも抜群に面白い。これで「スポ根はあまり得意じゃない」(SQ掲載のインタビューより)と仰るのだからなあ、渡辺先生凄すぎる。