合宿ノルマの1000kmの最中に激突する1年生VS2年生。

追い越し禁止のボードまでの熾烈をきわめるレースはそれ即ちインターハイメンバー選出を意味する闘いでもあり、ゴールに近づくにつれてそれぞれの強い想いのぶつかり合いが激しさを増していきます。


自分の書くものは評論でもなんでもない「感想」なので正直に書きますが、わたしは2年生に感情移入してしまってこの展開は複雑で苦しくて仕方ありませんでした。

手嶋・青八木コンビは主人公側を(いやな言い方になりますが)「引き立たせる」だけの存在に終わっていないんです。平凡な存在であった2人が力を合わせて成長して、他人には出来ない2人だけの走法、「同調直列走法(シンクロストレートツイン)」を身につけ…この2人が主人公側として描かれても違和感のないほどの背景とキャラ立ち。レース中の描写の割かれ方を見ても主人公(坂道)及び1年生側集中ではなくてほぼ平等。

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それだけインターハイを目指すそれぞれの気持ちに優劣はなく、結果は結果として描かれますがここでの敗者が劣っているとはされていなかったように思います。それぞれが全力で挑むレースにも必ず勝敗は訪れるという現実の残酷さを痛感します。そう感じるのはわたしが個人的に思い入れてしまっているということもあるかもしれませんが、そもそもゴール後の場面に至っては、追い抜いた後の1年生よりも追い抜かれた2年生がメインなんです。

モンスタールーキーな坂道の成長度も去ることながら、サブキャラの魅力と想いの強さまで本気で描かれていることが『弱虫ペダル』の面白さを形成する要因であると断言できます。またこういった想いを背負って行くからこそ坂道はさらに成長出来るのです。


というのも、「追いかける時の方が格段に速い」という特性も含めて、坂道は他人から受け取るパワーに強く影響されています。

1000km走破に向けて、とにかく坂道は一人で壁を乗り越えようとするわけですがトラブルに対応しきれず2年生との闘いで見せた勢いが嘘のように戸惑い弱気な気持ちに囚われてしまいます。そんな坂道の目前に姿を現したのは…。

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おそろしいほどの強さを見せる初心者の坂道ですが、「人」の力による影響が大きいという点はもっと注目されて欲しいと思っています。前にも似たような事を書いたとは思いますが、中学時代友達が作れず、高校生になって同じ趣味の友達を作ることが目標だった坂道にとっては仲間との絆というものは非常に重いもの。坂道自身は身についている習性か「自分の力でやらなきゃ」という思いにかられますがそこはそれ、「背中押されなきゃ前に進めないタイプもいるっショ」ということだと思うんですよ。またきっとそうやって、互いに背中を押していくことで成長出来たのが手嶋・青八木コンビなのではないでしょうか。