とうとう発売になりました!これは久し振りに何度も読み返してしまう単行本。
帯画像。
「可愛くて切なくて、ちょっぴりニアデス!?」というのが公式のキャッチコピーです。
元の読み切り版を0話とし、連載版の第5話までを収録しています。
大まかな物語を説明しますと、主人公柴木耕太(通称/シバ)は女好きでどうしようもないエロバカ、そして何かとついていない高校生。読み切り版ではシバとるるもの出逢い、連載版ではその半年後に再び地上へとやってきたるるもとシバの再開とその後の日々が描かれています。
るるもとシバの出逢い。それはシバがたまたま手にしてしまった魔法の書物で半ば強引に周囲から押されながらも魔女召喚の術を使ってしまったことから始まります。半信半疑ながらも「かわいい彼女」を得ることを願うつもりだったシバは、つい周囲の声に惑わされ「女子のパンツ」という某ウーロンのような願いを言ってしまうことに。
果たして「女子のパンツ」を与えられたシバですが、その魔女召喚の術の代償は「残りの自分の命」でした。よって自らの呼び出した魔女…るるもに2日後の死を宣告されます。
絶望するシバはそのパンツがるるも自身のものだと知り(しかもその時点で目の前のるるもは「はいてない」状態だと知り)一度はテンションを上げますが、結局目の前のるるも(のスカート)をどうすることも出来ず落ち着きを取り戻し、るるもにふと話しかけます。
そこで一見無感情、無表情なるるもの過去が明らかになります。かつて他の魔女に騙されて60年もの間、牢獄へと閉じ込められていたるるも。笑うのが苦手で、周囲から好かれず、そして騙されて禁則を破りただ60年、じっとしていたるるも。
そして実は、「魔女が人間に持ち物を譲る」という禁則を破り、再度牢獄へと連れて行かれる身であるということ。
それを聞いたシバはるるもにパンツを返そうとします。
しかしるるもはこう言って拒みます。
「私に刑が執行されればおまえとの契約は解除される」
・・・・るるもは、自分の禁固刑130年と引き換えにシバの命を守ろうと。
・・・・シバは、自分の命を守るよりも再度拘束されるるるもを開放しようと。
お互いに頑なに、出逢ったばかりのはずの相手を庇おうとします。
そしてどうしてそれを受け取らないと叫ぶシバにるるもはこう答えます。
「人前でパンツをはくのははずかしい」
「もん」
・・・・・・・この表情、この答え!
それまで何に対しても動じないような無表情のるるもを、キャラを崩すわけでなくしかし大きく動かしたこのコマの威力は絶大です。シバじゃなくたってときめくにきまってる!
結局シバは目をつむりながらるるもにパンツを返し、るるもの叶えた願いも不完全だったということでシバの命も助けられます。そこまでが読み切り版の物語です。
一見違う二人ですが、周囲にそそのかされ・取り返しの付かないことにされるついてなさや心の根っこで自分よりも人を優先してしまう優しさという点では似たもの同士とも言えるシバとるるも。渡辺先生らしい人間の暖かさがこの1話だけでも伝わってきます。
続く連載版では、シバの元に届いた「チケット」によってしかるるもは魔法が使えなくなっています。
るるもがシバの命を奪わずに帰ったことが魔王に見つかり、魔女の資格を剥奪され修行魔に格下げされたというるるも。シバがその666枚綴りのチケットを使い切ることで、修行が終わるのだとるるもは告げました。
これに対し自責の念を感じるシバと、これは自分自身の問題だというるるも。
そのるるもの真剣なまなざしに、自分を責めることを止める変わりにチケットをどんどん使うことを誓います。
…しかし、何でも出来るその魔法のチケットは、実はシバ自身の命であるとるるもの使い魔・チロ(黒猫で関西弁)に宣告されます。
そしてそのことはるるもには知らされていないことも。
るるもの修行を手伝いたい、しかし自分の命は勿論投げ棄てられるものではない。とてつもないジレンマに襲われながらも修行が終わるまで魔界へは帰れなくなったというるるもとの奇妙な生活が始まりました。
こう書くと重い物語がバックグラウンドにあるのですが、内容自体は基本的にギャグです。基本的には女好きでバカでしょうもないことばかりで、でも情が厚かったりするシバが酷い目にあったりしながらも、るるもに救われます。それは、時に魔法以外のことでも。基本的には両想いにしか見えない二人ですが、シバ自身は見境のない女好きのままなので恋愛に発展しないまま。しかもるるもは便宜上シバの妹としての生活を始めるため、尚更その壁が厚くなります。もどかしい!
基本設定はよくパターンですが、漫画力が元々非常に高レベルな渡辺先生。適度なメリハリのあるギャグとシリアス部分、そしてるるもの可愛さでぐいぐい読ませてくれます。兎に角渡辺先生はキャラの描き分けと表情が大変巧いのです。シバの勢いのある表情も、微かなるるもの表情の動きも楽しめて退屈させません。
今後、るるもの修行そしてシバの命はどうなるのか。二人の仲に発展はあるのか。いろいろと楽しみはありますが、個人的にはサブキャラにももっと活躍して欲しいです。現在はほぼるるもとシバが中心ですが、渡辺先生作品の良さのひとつに、魅力あるサブキャラ陣というものも含まれると思いますので。既に頭角を表しすぎているシバの病み母の他に風紀委員の強子さん(異常にでかい)が気になるお年頃です。
こんなに続きを楽しみに出来る連載作品をありがとうと言いたい!
今月のシリウスはるるも表紙だし、楽しみだー幸せだ!