元祖無印『まじもじるるも』のテレビアニメ放送中!という時期に合わせて、『まじもじるるも 放課後の魔法中学生』単行本第2巻が発売になりました。
1巻の発売まではだいぶ待たされたんですが…アニメ放送期間内に1・2巻を合わせるためだったのでしょうね。
相変わらず表紙はるるもですが、今回も中心となるのはルシカ・スラガ・モモヒメの3人の地上任務の日々。そしてついに「あの男」も登場しますよ!


あの男とは…そう、『まじもじるるも』の主人公こと柴木耕太。かつて命を落とし、『魔界編』ではるるも達と共に様々な苦難を乗り越え、晴れて現世に復活した…というあのシリアスな日々が嘘のようにすっかり今では平穏な大学生活を送っているようです。そして、るるもと結ばれた今もやはり女子に対する情熱は失われていません。良くも悪くも成長していない感じ。なんというか、ほっとします。
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そんな耕太もルシカにとっては「るるもさんのカレシ」ですが、耕太にとってルシカはかつて姿を借りていた人形のモデル=以前の自分の姿、なんですよね。そんな複雑?な関係のふたりの出逢いはちょっぴり切ない「恋」未満のエピソード。いつも能天気なルシカが見せる表情の揺らぎがこの時ばかりは乙女のそれでキュンとします。


個人的に2巻収録で大好きなのはスラガの使い魔・クリアーヌのエピソードです。
剣の達人で任務に命をかけている大真面目な性格だけど、生活能力はまるで低くてどこかしら抜けているスラガには、魔界に置いてきた使い魔の黒猫がいます。その名はクリアーヌ。普通の使い魔らしい仕事よりも、料理や掃除といった家事全般を得意とする気弱な子ネコのクリアーヌを、スラガは危険な目が待っているかもしれない地上勤務には連れて行けないと一人魔界に残してきていたのです。
ある日、自身が得意とする戦闘があるわけでもない「呪文字集め」という特殊な地上勤務がうまくいかず悩むスラガの前にどうみてもまだ子どもの自称「料理人」が現れます。その正体は、自分の手料理をひとくちでも主人のスラガに食べて欲しいという一心で魔界から人の姿に変身して追ってきたクリアーヌでした。
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任務に対しては意識が高く、警戒心も高いけれどやはり肝心なところでニブいスラガは、それが変身したクリアーヌの姿であるとは気づかず、料理にも手をつけようとしません。限られた時間しか滞在出来ない中、あの手この手でスラガにごはんを届けようとするクリアーヌのいじらしいこと…。スラガがその想いに気付く瞬間、そしてクリアーヌの願いが叶う瞬間はとても美しく流れるような描線で描かれていて、その後の2人が交わす言葉も愛情あふれていて素晴らしいので、未読の方にも是非コミックスでお楽しみいただきたいです!


それともうひとつのお気に入りエピソードはルシカの使い魔・JJが人間の姿でバイトをする話です。
器用で運動神経がよく美少女なJJは勤めはじめたカフェですぐに「カンバン娘」と呼ばれるほどの活躍を見せますが、元々そこで働いていた先輩の淡子さんはそんなJJにやっかみ心を出して少々いじわるをしてしまいます…。しかし、そんないじわるにも気が付かず軽々と仕事をこなしてしまうJJに、さらにスペックの違いを見せつけられてしまう結果に。
ネコの姿に戻った帰り道、JJは独り落ち込む淡子先輩にばったり出逢います。当然それが後輩の本当の姿だとわかるわけもない淡子先輩はJJに向かって独り言のように今日の出来事を呟きはじめます。
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見た目は不美人、あまり器用でもない上に、仕事をすぐに覚えてしまう新人に嫉妬していじわるをしてしまった自分への自己嫌悪。それでも可愛いものが好きでいつか自分のお店を持ちたいと頑張っている淡子先輩の気持ちを知り、JJはネコの姿のままそっと励まして立ち去って行くのでした。
その後、淡子先輩はやっぱりなかなか素直にはなれないけれど、JJとも少しだけ仲良くなれて、一見何も考えていないように見えたお店の店長も淡子先輩の頑張りをきちんと見て仕事を評価してくれているところが描かれます。
可愛い女の子が頑張るのも勿論なんですけど、見た目が華やかでない女の子の心の内をこうやって丁寧に描いて温かく表現してくれる優しさは実に渡辺先生らしいと感じます。先生の女の子愛すごい。


本編終盤では、アニメ放送時期に合わせてルシカたちが無印『まじもじるるも』の頃の時間にタイムスリップしてしまうという衝撃の展開が。るるもたちのかつての日常が見られるのも嬉しいですが、個人的にはルシカ・スラガ・モモヒメたちが主人公の物語として読んでいるので複雑なところでもありますね…。アニメ放送は今月いっぱいまでですが、願わくばもう少し渡辺先生が描く『魔法中学生』の世界を楽しんでいたいです。